2021年度の地域別最低賃金改定については、先日、「全国一律28円の引き上げ」目安が示されたところです。各都道府県最低賃金の最終決定はまだ先となりますが、今号では、最低賃金引き上げに伴い事業場内の賃金を見直す際に活用可能な「業務改善助成金」を解説しましょう。
参考記事:『2021年度地域別最低賃金が大幅引き上げへ!全国一律で「+28円」、引き上げ率「3.1%」』
最低賃金大幅引き上げに向け、各都道府県では準備着々
ところで、地域別最低賃金は果たして本当に「全国一律で+28円」となるのでしょうか?この点、最終決定は各都道府県での調査審議を経て、正式に労働局長により決定されますが、東京都はすでに以下の通り「東京都最低賃金審議会の意見に関する公示」を示しています。
- 適用する地域
東京都の区域 - 適用する使用者
前号の地域内で事業を営む使用者 - 適用する労働者
前号の使用者に使用される労働者 - 前号の労働者に係る最低賃金額
1時間1,041円 - この最低賃金において賃金に算入しないもの
精皆勤手当、通勤手当及び家族手当 - 効力発生の日
令和3年10月1日
参考:東京労働局「東京都最低賃金審議会の意見に関する公示」
2021年10月以降、東京都の最低賃金は、中央最低賃金審議会が示した目安の通り、前年度28円引き上げの「1,041円」となりそうです。
賃金引き上げに活用したい「業務改善助成金」
最低賃金引き上げに伴い、自社の従業員の賃金の見直しを行う現場も少なくないと思います。今秋以降、最低賃金を下回ってしまう可能性のある企業においては、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引き上げや、これに伴う事業場全体の賃金改定が必要となるケースもあるでしょう。
事業場内の賃金引き上げに向けた取り組みのひとつに「生産性向上」がありますが、これを実現するために設備投資を検討する際に検討したいのが「業務改善助成金」の活用です。
「業務改善助成金」とは?
業務改善助成金は、生産性向上のための設備投資等を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。
「事業場内最低賃金と地域別最低賃金との差額が30円以内であること」「事業場規模100人以下」のいずれの要件も満たす事業場で申請できます。
「業務改善助成金」の各コース、助成率
業務改善助成金は、事業場内最低賃金の引き上げ額に応じて20円、30円、60円、90円の申請コースの設定があります。助成率は事業場内最低賃金が900円未満か以上かによって異なり、さらにコース区分ごと、対象労働者数に応じて助成上限が設定されています。
詳細は下図の通りです。
助成率は生産性要件を満たす場合に引き上げられます。ここでいう「生産性」とは、企業の決算書類から算出した、労働者1人当たりの付加価値を指します。助成金の支給申請時の直近の決算書類に基づく生産性と、その3年度前の決算書類に基づく生産性を比較し、伸び率が一定水準を超えている場合等に、加算して支給されます。
出典:厚生労働省「[2]業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援」
業務改善助成金の対象となる設備投資等の内容
業務改善助成金は、以下の要件を満たす場合に支給されます。
業務改善助成金の支給対象となる設備投資等としては以下が挙げられますが、実際の取り組みの際には厚生労働省「[2]業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援」にある業種別具体事例が参考になります。
- POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
- リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
- 顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
- 専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上
その他、業務改善助成金の詳細に関しては、交付要綱等をご確認ください。
助成金の支給申請というと、どうしてもハードル高く感じられるものです。しかしながら、コロナ禍での最低賃金大幅引き上げへの対応に際して、活用可能な支援は積極的に活かしていく姿勢が肝心です。2021年度業務改善助成金の受付はすでにスタートしており、申請締切は2022年1月31日となります。予算内での実施となるため、早めに着手してまいりましょう!