例えば、職場に不審者が侵入して今にも従業員が襲われそうな状況にさらされたとしたら、御社ではどのように対応する決まりになっているでしょうか?職場によっては従業員の防犯マニュアルが策定されているところもありますが、緊急時の対応についてはあまり考えられていないケースも少なくありません。今一度、職場の防犯対策について見直しましょう。
埼玉県では、ネットカフェ従業員に防犯教育を講じることが努力義務に
埼玉県では、2021年6月にさいたま市大宮区、2022年6月に川越市のインターネットカフェで従業員が人質になる立てこもり事件が発生したことを受け、ネットカフェ事業者に対して条例で従業員への安全教育実施を努力義務とする見通しです。「県防犯のまちづくり推進条例」の改正案では、「犯罪の防止に配慮した店舗等の整備」に努めるよう求める対象として新たに「個室のあるネットカフェや漫画喫茶」を追加し、防犯責任者の設置や従業員に対する防犯指導の実施が求めることとします。2023年4月より施行予定です。
参考:埼玉県「埼玉県防犯のまちづくり推進条例の一部を改正する条例」
考えよう、職場に応じた防犯対策
ネットカフェや漫画喫茶、銀行、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等、不特定多数の客が出入りできて、なおかつ金銭や品物が置いてある、構造的に立てこもりに好都合である等の店舗では、万が一の際にどのような対策を講じれば良いのかを比較的イメージしやすいかもしれません。また、業界として防犯マニュアルを策定・公開しているケースもありますから、参考にしながら自社のマニュアルを検討することができます。
また、インターネット上では、自治体や警察が店舗向け防犯マニュアルを公開しているケースもありますので、参考にしてみましょう。
参考:島根県警察「犯罪の防止に配慮した店舗などの構造、設備等に関する指針」
一般的なオフィスでも、防犯対策は必須
一方で、通常あまり来客のない、ごく一般的なオフィスの場合はどうでしょうか?「知らない人が来ることもあまりないし、多額の金銭が置いてあるわけでもないのでそこまで身構える必要はないのでは?」と思われるかもしれませんが、油断は禁物です。
夜間や休日に閑散とするオフィス街は、盗みや立てこもりには非常に好都合です。また、オフィスといってもテナントビルの場合、侵入が容易な場合も多いという点がネックとなります。
一般事業所において、特に警戒すべきは「侵入窃盗」です。事業所に金銭を置いていない場合、狙われるのは「情報」です。会社の製品等に関わる機密情報や顧客情報、従業員情報等はひとたび流出すると多大な影響がもたらされ、企業側も甚大な被害を受けることになります。また、パソコン等の機器が狙われることもあるでしょう。警察庁「住まいる防犯110番」によると、2020年度の侵入窃盗発生場所別認知件数調査では、「一般事務所」での発生が全体の11.7%にのぼるとのことで、決して小さな数字とは言えません。
参考:警察庁「住まいる防犯110番」
どうする?オフィスの防犯対策
一般的な事業所の防犯対策として必要なことは、職場の構造や周辺環境、来客頻度や通常の人員体制等によって異なるため、一概に「こう定めるべき」とまとめることは困難です。ただし、共通して言えるのは、防犯設備の整備・導入等のハード面での防犯対策はもちろん、従業員に対応マニュアルを周知徹底することや巡視の実施、地元警察との連携といったソフト面としての防犯対策が確立されていることが重要であるということです。防犯責任者を中心としてハード面とソフト面それぞれにおける対策を整備し、全従業員が共通の認識をもって万が一の際の対応にあたれるよう、準備を進めましょう!