11月も中旬を迎えれば、そろそろ年末の気配が感じられる頃ですね。2025年に予定される労務関連の法改正対応といえば、改正育児・介護休業の施行によるものが真っ先に思い浮かびますが、障がい者雇用の除外率設定業種に該当する現場においては除外率引き下げへのご対応が不可欠となります。漏れなくご確認ください。
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一定規模以上の企業には、障がい者雇用義務があります!
障がい者雇用促進法では、障がい者の職業の安定を目的として法定雇用率を設定し、全ての事業主に対して法定雇用率以上の割合での障がい者雇用義務を課しています。民間企業における障がい者法定雇用率は、現状「2.5%」となっており、2026年7月に「2.7%」への引き上げが予定されています。
対象事業主は「毎年6月1日時点での障害者雇用状況のハローワークへの報告」「障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」の選任(努力義務)」への対応が求められます。障がい者雇用義務を履行しない事業主は、ハローワークによる雇用率達成指導の対象として、「雇入れ計画」の作成と着実な実施勧告を受けることとなります。
参考:厚生労働省「障害者雇用のルール」
障がい者雇用の除外率とは?
しかしながら、あらゆる企業活動の中には、機械的に一律の障がい者法定雇用率を適用することになじまない性質の職務もあります。建設業・医療業・道路貨物運送業等の、障がい者の就業が一般的に困難であると認められる業種については、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除する制度を設け、障がい者の雇用義務が軽減されています。
障がい者雇用の除外率制度は、完全廃止に向けた経過措置期間中
もっとも、障がい者雇用の除外率制度は、2002年法改正により、2004年4月に廃止されています。廃止の背景には「ノーマライゼーション」、つまり、障がい者を社会的弱者に位置づけるのではなく、障がいのない人と同じように社会で暮らしていけるようにしていこうという考えがあるようです。ただし、改正法の施行によって直ちに廃止というわけではなく、当面の間は特例措置として、業種ごとに設定された除外率が段階的に引き下げられている状況です。
2025年4月以降適用される、障がい者雇用除外率
2025年4月は、2010年7月以来、実に15年ぶりの除外率引き下げが予定されています。具体的には、除外率設定業種ごとにそれぞれ10ポイント引き下げられます。各業種の障がい者雇用除外率を一覧で確認しましょう。
出典:厚生労働省リーフレット「障がい者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」
障がい者雇用除外率の具体的な計算方法
例えば、建設業(除外率10%)・従業員数300人の場合、障がい者雇用率は以下の通りとなります。
300人×0.1=30人 ⇒実従業員数から除外できる人数は「30人」
(300人-30人)×0.025※現在の障がい者法定雇用率2.5%=6.75人≒6人 ⇒この会社で雇用義務のある障がい者の人数は「6人」
仮に、この会社が障がい者雇用除外率の対象外業種だった場合の雇用義務人数も、算出しておきます。
300人×0.025=7.5人 ⇒この会社で雇用義務のある障がい者の人数は「7人」
よって、従業員数300人の会社の場合、除外率10%により1名の障がい者雇用義務が免除されるということになります。
2025年4月より、障がい者雇用除外率の対象外となる業種があります
現状、障がい者雇用除外率が10%に満たない以下の業種については、除外率制度の対象外となります。
・非鉄金属製造業(非鉄金属第一次製錬精製業を除く。)
・倉庫業
・船舶製造・修理業、船用機関製造業
・航空運輸業
・国内電気通信業(電気通信回線設備を設置して行うものに限る。)
・窯業原料用鉱物鉱業(耐火物・陶磁器・ガラス・セメント原料用に限る。)
・その他の鉱業
・採石業、砂・砂利・玉石採取業
・水運業
深刻化する働き手不足への対応に、障がい者雇用を含めた採用戦略の検討を
昨今の障がい者法定雇用率の引き上げ、さらに除外率廃止の流れにより、今後、障がい者雇用率制度の対象となる現場は確実に増えていきます。「法定雇用率への対応」というと、法的な義務からやむを得ず・・・といった印象がついて回りますが、障がい者雇用はあくまで人材確保の一手段です。ひと口に「障がい者」といっても各人の特性や能力は実に様々であり、業種によっては障がい特性を強みとした即戦力採用が実現する事例もあります。働き手不足がますます深刻化する中、多様な障がい者人材の受け入れは、単なる法的義務への対応のみならず、採用戦略上有益な観点となる可能性があることを忘れてはなりません。
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