新規採用に際し、多くの企業で雇入れ当初の数ヵ月間を「試用期間」とする一方、現場においては「試用期間」の取扱いに頭を悩ませるケースも少なくないようです。新年度を目前に、今一度、「試用期間」に関わる理解を深め、適切な運用ができるようにしておきましょう。
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試用期間の一般的な目安は「3~6ヶ月」
いくつかの選考段階を経て採用に至った人材であっても、実際に十分な業務遂行能力や適性があるのか、まじめに働いてくれるのか等の判断には、現場での見極めが必要になります。そのために設けるのが、「試用期間」です。試用期間中は、雇用契約を解約(解雇)する権利を留保する「解約権留保付労働契約」であり、いわば採用前の試験的な雇用期間のこと。会社は、この試用期間内に、正式採用の可否を判断することができます。
試用期間は一般的に「3ヶ月~6ヶ月」とされていますが、試用期間の長さについては、法律に定められているわけではありません。しかしながら、労働者にとって試用期間は「本採用前の不安定な立場に置かれる期間」であることに鑑み、不当に長期に渡る場合には「公序良俗に反する」として、民法上無効になる可能性があります。よって、合理的な理由がない限り、6ヶ月を超える試用期間の設定は避けるべきです。
試用期間の延長は可能。ただし「就業規則への規定」「合理的理由」「期間の妥当性」を確認
通常、会社はあらかじめ定めた試用期間内に本採用の有無を判断しますが、やむを得ない事情がある場合には試用期間の延長を検討すべきケースもあるかもしれません。
試用期間の延長に際し、まず就業規則等に延長の可能性がある旨の規定があるかどうかを確認しましょう。延長される期間の上限に定めがあれば、これに従います。期間の上限ついて定めがない場合、試用期間が結果的に不当に長期に渡ることのないように最大限配慮しなければなりません。基本的には、「当初の試用期間と合算して6ヶ月」を目安にすれば問題ありませんが、すでに試用期間を6ヶ月に設定していた場合には延長すべき理由や期間の妥当性を十分に検討する必要があります。
試用期間を延長することについては、合理的な理由と労働者本人への説明が必要です。社会通念上、「理由なく試用期間を延長する」「期間の定めなく延長する」「何度も繰り返し延長する」等は認められません。
試用期間を延長する場合、なるべく早期に労働者に「延長がある旨」と「延長の理由」、「延長される期間」を伝え、同意を得るようにしましょう。
試用期間中、または試用期間満了で解雇する際の注意点
試用期間は、原則として長期雇用を前提として設定されるものです。ところが、試用期間中に勤務態度の不良や職場風紀を乱す言動があったり、重大な経歴詐称や能力不足が判明したり等、会社として本採用を見送る決断を下すこともあるでしょう。
試用期間中、または試用期間満了で解雇する際には、以下に留意して対応する必要があります。
✓ 本採用見送りに関わる理由を具体的かつ客観的に示す
✓ 解雇予告を行う
解雇予告については、「解雇の時期が試用期間開始から14日間であり正当な理由がある場合」に限り不要とされていますが、原則は労基法の定めに則り「30日前の予告もしくは30日分以上の平均賃金の支払い」が必要です。また、不当解雇と判断されないよう、解雇する前に、必ず会社として対応すべきことに着手しておかなければなりません。例えば、「能力不足」が原因であれば「指導や教育によって改善策を講じる」等、会社として教育する姿勢や実際の取り組みが求められます。
春先は、「試用期間」関連の労使トラブル急増!正しい制度運用を
企業においてはすでに一般的となっている「試用期間」の設定ですが、実務上、判断に迷うことも多いようです。誤った対応が思わぬ労使トラブルにつながる可能性がありますので、少しでも疑問を感じることがあれば都度確認し、誤りなく対応できるようにしましょう。