夏休みも終わり2学期がスタートしたばかりの兵庫県神戸市の小学校において発覚した、教師のいじめ問題が話題となっています。IEYASUユーザー様の中には学校等の教育機関も少なくありませんが、この報道に衝撃を受けた方も多いと思います。
また、一般企業においても例外なく、職場のいじめ問題は問題視されています。御社のいじめ対策は万全でしょうか?職場で起きている以上、「いじめは個人間の問題」とは言い切れませんから、適切な対応が求められます。
職場いじめに関わる相談件数は増加傾向にあり
職場のいじめ問題については、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談の中でも特に多く、しかも過去10年間で唯一、一貫して増加の一途をたどる相談事項となっています。
出典:厚生労働省「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況を公表します ~「いじめ・嫌がらせ」に関する民事上の個別労働紛争の相談件数が過去最高~」
職場いじめの企業への影響
職場に複数の人が集う以上、そこには必ず人間関係がついて回ります。「労働者間のトラブルは、仕事とはかけ離れた個人の問題だ」との考え方もありますが、職場でいじめや嫌がらせが横行することで企業が受ける影響は決して小さなものではありません。後述する東京都産業労働局『職場の「いじめ」 発見と予防のために』では、職場いじめによる企業の影響として下記の事項を挙げています。
① 職場のモラール低下・生産性低下など
② 人材的な損失
③ 損害賠償責任
④ 社会的な信用・イメージの低下
職場における労働者間のいじめ問題は、企業として、決して無視できる問題ではありません。
職場いじめに関わる使用者責任 判例では「損害賠償命令」
職場いじめの防止策を講じなかったことで、会社側は使用者責任を問われることがあります。
《事件》護衛艦たちかぜ〔海上自衛隊員暴行・恐喝〕事件
争点:
いじめ自殺の予見可能性と先輩自衛官らの指導監督責任が争われた事案(労働者勝訴)
事案概要:
(1) 海上自衛官として護衛艦の乗員を務めていた者の遺族ら(Xら)が、同人(A)の自殺は、先輩自衛官による暴行・恐喝が原因であり、上司職員には安全配慮義務違反があったとして、国(Y1)及び先輩自衛官(Y2)に対し損害賠償等を求め提訴したもの。
(2) 横浜地裁は、暴行・恐喝及び、上司の指導監督義務違反を認定したものの、自殺についての予見可能性を否定して、死亡によって発生した損害を認めず、請求の一部のみを認容したため、Xらが控訴したところ、東京高裁は、自殺を予見することが可能であったとして、原審判決を変更し、死亡によって発生した損害も認めた。
出典:全基連「判例検索_ ID09024損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件」
事件詳細は上記よりご確認いただけます。
このように、会社が社内のいじめを把握しながらも放置した場合、「安全配慮義務の債務不履行」として民法415条により損害賠償責任を負う可能性が高いといえます。会社としては早急に対応し、事態の悪化防止に努めなければなりません。
企業に求められる職場いじめ対策を確認
会社側は職場のいじめ問題への対応として、どんなことに取り組めば良いのでしょうか?この点については、東京都産業労働局が公開する『職場の「いじめ」 発見と予防のために』の中で具体的な対応手順が解説されています。詳細は、下記よりご確認いただけます。
出典:東京都産業労働局『職場の「いじめ」 発見と予防のために』
人員に限りのある小規模企業においては、相談窓口の設置や相談体制の構築・連携等対応に困る部分もあるでしょうが、社会保険労務士やカウンセラー等の外部窓口も積極的に活用しながら無理なく体制を整えていきましょう。