医療従事者や高齢者を中心に行われていた新型コロナウイルスワクチンの接種ですが、7月を迎え、一般接種の実施に向けた体制整備がぐんと進んだ感がありますね。先日、私の手元にもついに接種券が届き、これでいつでも接種できる状況になりました。
今後、各職場では、いよいよ本格的に従業員からワクチン接種に関わる相談を受ける機会が増えてくるものと思われます。社内における対応準備は万全でしょうか?
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東京都は、ワクチン接種奨励に向けた職場環境整備に取り組む企業に専門家を派遣
東京都では、新型コロナウイルスワクチンの接種及びそれに伴う事由を理由とした特別休暇制度等の整備に取り組む企業に、都が専門家(社会保険労務士)を派遣し、助言を行う制度を開始しました。中小企業等は、ワクチン接種時に活用できる特別休暇の創設、働き方の見直し等、それぞれの現場に則した対応の実現に向けた支援を無料で受けることができます。
申請にあたっては、申請書と取組計画の提出が求められます。「取組計画」というと、雇用関係助成金の申請時に求められるような細かな計画が連想されるかもしれません。ところが、フォーマットを確認する限り、「現状の課題」や「今後の方向性」を明らかにするのみとなっており、作成に苦戦しそうな印象はありません。以下より応募資格や方法、派遣の流れ等をご確認いただき、要件に合うようであればぜひご活用ください。
参考:TOKYOはたらくネット「新型コロナウイルスワクチン接種等雇用環境整備支援事業」
職場におけるワクチン接種の強制や不利益的取扱い等は厳禁です
企業においては、感染拡大の心配のない、安心・安全な職場環境を実現すべく、ワクチン接種推奨の立場をとるケースがほとんどかと思います。一方で、新型コロナワクチンの接種はあくまで個人の自由意思に基づくものでなければなりませんから、会社が従業員に対してワクチン接種を強制したり、未接種であることを理由に不利益的取扱いをしたりすることはできません。
日弁連に寄せられる相談には、ワクチン未接種者への不適切対応事例多数
日本弁護士連合会では、2021年5月14~15日の2日間、「新型コロナウイルスワクチン予防接種に係る人権・差別問題ホットライン」を開設し、その実施結果を公開しました。
公開された概要まとめによると、2日のうちに208件もの相談が寄せられ、職場におけるワクチンの強制、不利益的取扱い(又はそのおそれ)の実態が明らかになったとのこと。
以下は、相談として寄せられた、職場における不適切対応の一例です。
- 「ワクチンを打ってコロナに罹患した場合には7割の給与を補償するが、受けずにコロナに罹患した場合には自己責任」と言われる
- ワクチン接種しなかったところ,受付業務(対人業務)から後方業務に移された
- 職場から「ワクチン接種は義務的」「打ちたくないのであれば,ここでは働けない(事実上クビ)」と言われている
参考:日本弁護士連合会「新型コロナウイルスワクチン予防接種に係る人権・差別問題ホットライン(2021年5月14日・15日)実施結果概要」
職場接種の実施では「情報管理」の徹底を
前項に挙げたようなワクチン接種の強制や不利益的取扱いが厳禁であることは当然ですが、直接的な言動がなくとも、接種をしたくない従業員に対して「同調圧力」がかからぬ様、職場においては十分配慮する必要があります。
そもそも職場で従業員のワクチン接種の有無を公にすることはプライバシー侵害つながるため、対応には最新の注意を払わなければなりません。特に、職場接種を進める企業においては、各人への接種希望の有無の確認を含め、情報管理を徹底しましょう。従業員各人のプライバシーを守ることが、職場における同調圧力、強制や不利益的取扱いの回避につながるのではないでしょうか。
これからワクチン接種推奨に向けた体制整備に取り組む職場においては、都の専門家派遣を受け、情報管理への対応も含めて適切な社内対応を検討していくのが得策です。もちろん、都の制度を活用せず、個別に社会保険労務士にご相談いただくことも可能です。