労基署の調査が入ると何が起きるのか?【未払い残業要注意】

未払い残業代に関するリスクとして、多くの経営者の方が懸念をしていることの1つは、労基署による立ち入り調査ではないでしょうか?

労基署の立ち入り調査がどのような経緯で行われるのかということと、実際に立ち入り調査があった場合に何が起こるのかということを、実務上の観点も踏まえながら本稿では解説をさせて頂きたいと思います。

労基署の立ち入り調査はどのように始まるのか

まず、労基署の調査委はどのように始まるのかということですが、大きく分けて2つのパターンがあります

第1は定期調査です。労基署が無作為または一定の基準に基づいてピックアップした会社に調査を行うというものです。
第2は労働者の申告による調査(以下「申告調査」という)です。残業代の未払いはもちろんのこと、不当解雇やパワハラなどで会社に是正を求めたい旨の申告が労働者からあり、労基署が必要と認めたときは調査が行われます。

申告調査のほうが、具体的な事件を前提にしていますので、一般的に調査は厳しくなる傾向にあります。

労基署の調査は突然やって来る?

労基署の調査はテレビドラマのように労働基準監督官(以下「監督官」という)が突然ドカドカっと会社に押しかけてくるのかというと、それはケースバイケースです。

定期調査の場合は、通常はあらかじめ日時の指定があります。監督官が会社に来るのではなく、会社の担当者が指示された資料を持って労働基準監督署に出向く形になるパターンもあります。
申告調査の場合は、あらかじめ日時が指定されることも皆無では無いですが、少なからずの場合、証拠隠滅を防ぐなどの目的で監督官が突然会社にやって来ることになります。

監督官は会社に到着すると、残業代の未払いが問題になっている場合は、賃金台帳やタイムカードの提出を求めます。パソコンのログの開示を求められることもあります。監督官が直接労働者に質問をする聞き取り調査も行われます。こうした記録や調査から、未払い残業代の有無を割り出していくのです。

立ち入り調査で発行されるのは「是正勧告書」と「指導書」

労基署の立ち入り調査により、直ちに逮捕や書類送検がされたり刑事罰を受けたりするということは少なく、よほど悪質な場合や、繰り返し調査を受けても改善が見られないというような場合に限られます。

多くの場合は、「是正勧告書」と「指導書」の一方または双方が発行されることになります。

「是正勧告書」は、調査の結果、明らかな法違反が見つかった場合に発行されます。「指導書」は、法違反があったとまでは断言できないが、その可能性がある場合や、法違反ではないが不適切な労務管理が行われていた場合に発行されます。

未払い残業代の事案においては、未払い残業が確実に発生しているならば是正勧告書、未払い残業の発生の疑いがあるといいことならば指導書が発行されることになります。
未払い残業代の時効は2年ですが、悪質性が高い場合でなければ、丸2年さかのぼっての未払い残業代の精算を是正勧告書や指導書で求められる可能性は低いです。実務上は、一般的には2か月分から6か月分程度のさかのぼり精算求められることが多いようです。

是正勧告書や指導書に対する会社の対応

是正勧告書や指導書が発行される際、監督官から「〇月○日までに是正報告書を提出して下さい」と、是正勧告書や指導書に対し、会社がどのような改善を行ったのかの報告書の提出を指示されます

これを無視した場合(とくに是正勧告書)は、再指導や警告を挟んだ上でになりますが、最終的には書類送検や逮捕につながっていきますので、通常、会社は監督官の指示に沿って是正報告書を提出します。

未払い残業代の場合は、「社内調査や労働者へのヒアリングを行って未払い残業時間数と残業代の額を算出し、○月○日に不足額を支払いました」というような過去の残業代の精算結果および、「今後は残業を許可制とし、許可なく定時後に会社に残っている者には管理職が帰宅を命じることにしました」というような再発防止策の報告が求められます。

このような報告を行って監督官の納得を得られれば、労基署の調査対応は終了ということになります。

民事裁判は別物!調査が終わっても安心できない

ただし、労基署の調査対応が終わっても完全に安心とは言えません。
労基署の是正勧告書で未払い残業代の精算の指示が2ヶ月だったとしても、前述したように未払い残業代の時効は2年ですから、労基署に相談した労働者が弁護士にも相談をしていた場合は、別途民事裁判や労働審判で残りの2年10ヶ月分の未払い残業代の支払を求められることになりますので注意が必要です。

立ち入り調査で焦らないために必要なのは『適切な勤怠管理』

このように、いったん未払い残業代の問題が発生すると、労基署の対応や未払い金の精算などで会社には大きな負担が生じてしまいます。就業規則や勤怠管理の仕組みを整え、未払い残業を発生させないように適正な労務管理を行っていきたいですね。

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