【雇用保険】「週20時間」未満のパートタイマーについて、被保険者要件の確認を

7月を迎え、労働保険年度更新がようやくひと段落し始める頃かと思います。2023年度の概算保険料額を算出してみて、やはり雇用保険料率引き上げの影響を実感された事業主様、ご担当者様も多かったのではないでしょうか。従業員規模の大きな会社では、雇用保険料だけでかなりの額となります。折を見て、従業員の被保険者資格を見直し、保険料の適正化を図ってまいりましょう

今一度確認すべき、雇用保険被保険者資格取得に係る要件

パートタイマーの労働・社会保険について、雇入れ時点では被保険者資格を満たしていたとしても、その後勤務する中で働き方が変わり、いつの間にか被保険者資格を満たさなくなっているケースは少なくありません。保険料適正化の観点から、各種保険制度の資格要件を正しく理解した上で、定期的に被保険者の勤務状況を確認し、労働契約の見直しや資格取得・喪失手続きに取り組む必要があります

原則的な雇用保険被保険者資格の取得要件

雇用保険に関しては、以下(1)(2)のいずれも満たし、さらに労働者が昼間学生ではない場合(ただし例外あり)に、被保険者資格を取得することとなります。

(1) 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。
具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。

  • 期間の定めがなく雇用される場合
  • 雇用期間が31日以上である場合
  • 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
  • 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合
    ※当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます

(2) 1週間の所定労働時間が 20時間以上であること。

要件確認は、原則として「契約内容」で行う

要件確認は、原則として労使間の労働契約の定めを元に行います。つまり、労働条件通知書や雇用契約書にある労働契約期間、週所定労働時間について、前述の要件を満たすかどうかを判断することになります。

労働契約の内容と実働状況に相違がある場合は、労使間で契約内容の見直しを

実働の状況が当初の労働契約とはかけ離れている場合、現状の実態に応じた取扱いが必要になります。例えば、契約上「週20時間労働」だったとしても、ここ数ヵ月間「週15時間労働」で定着している様な場合、被保険者資格喪失を検討することになります。このような場合でも、使用者側が一方的に資格喪失手続きを行うのではなく、必ず労使間で改めて所定労働時間の見直しを行った上で手続きを進めるようにします。

一時的・臨時的な所定労働時間の変更は、直ちに資格喪失としない

なお、所定労働時間の変更(減少)が必要になる場合でも、その変更が一時的・臨時的である場合には、直ちに資格喪失手続きを行う必要はありません。例えば、育児のために労働時間を短縮した場合には、子が小学校に就学するまでの一時的な期間であれば、被保険者資格喪失の扱いとはしません。こうした取扱いは、介護等でも同様です。また、労働者側が何らかの事情で労働時間減少を希望するような場合、その期間が6ヵ月以内であれば、被保険者資格は継続させる取扱いとします。

参考:東京労働局「従業員の1週間の所定労働時間が変更となり、被保険者として取り扱われない20時間未満となった場合の手続きについて

「週20時間」を越えたり越えなかったりするパートタイマーの雇用保険被保険者資格を見直そう

ここまでの前提を踏まえ、雇用保険被保険者要件である「週所定労働時間20時間」を越えたり越えなかったりする労働者の被保険者資格の適正化を図ってまいりましょう。

✓ 当初の労働契約で、所定労働時間はどのようになっているでしょうか?
✓ 実態として労働時間が週20時間を下回る場合、その状況は一時的・臨時的なものでしょうか?
✓ 契約上の所定労働時間と実態とで相違がある場合、労使双方の意向はどのようになっているでしょうか?

 

今後の労働契約内容について労働時間変動の背景を十分に考慮した上で労使間で協議し、新たに取り決めた労働契約内容と資格取得要件を照らし合わせて、雇用保険被保険者資格維持または喪失を検討します。判断に迷われる場合には、労働保険の専門家である社会保険労務士にご相談ください。

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