【雇用保険法改正】2020年3月成立の改正雇用保険法等!実務担当者がおさえておくべきポイントとは?

「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が2020年3月末日に可決され、雇用保険法等の複数の労働関係法令が改正されました。新型コロナウイルスへの対応に追われ、すっかり見落としている企業ご担当者様も少なくないようですが、さっそく2020年4月から施行されている改正項目もあります。一つひとつ、確認してまいりましょう。

雇用保険法等の一部改正項目の概要を確認

このたびの法改正の趣旨、及び具体的に変わるポイントについては、下記よりご確認いただけます。
改正事項が多岐に渡ることに加え、それぞれの施行日が異なる点で対応に難しさが感じられるかもしれませんが、
さしあたって実務上、企業でおさえておくべき点は赤丸を付けた3項目となります。

出典:厚生労働省「第201回国会(令和2年常会)提出法律案_雇用保険法等の一部を改正する法律案(令和2年2月4日提出)_概要

65歳から70歳までの高年齢就業確保措置

現状、65歳までの就労希望者に講じている「定年延長」「定年廃止」「継続雇用制度の導入」の雇用確保措置について、2021年4月からは70歳までの雇用・就業機会の確保に向けた取り組みが、努力義務として企業に課せられます。

【関連記事】打刻ファースト「企業に義務付けられる70歳雇用延長|労災防止に「健康や体力の状況の把握」を【2021年4月高年齢者雇用安定法改正案】

複数就業者に対する労災保険給付に係る、給付基礎日額の算定や給付の対象範囲の拡充

兼業・副業解禁に伴い、かねてより議論されてきた複数就業者の労災保険給付について、本格的にルールが整備されていきます。施行について、表中では「公布後6か月を超えない範囲で政令で定める日から施行」とされていますが、この点については「第87回 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会(2020年6月1日開催)」にて「令和2年(2020年)9月1日」とされました。今後の動向に注目が集まります。

【関連記事】打刻ファースト「『本業&副業の総労働時間』で労災認定へ|ますます重要視される各社の勤怠管理|労働者災害補償保険法改正案提出予定

離職票の「支払基礎日数」の見直し

失業等給付の支給を受けるためには、離職日以前2年間に、「被保険者期間」が通算して12ヵ月以上(特定受給資格者または特定理由離職者は、離職の日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上)あることが必要です。
この「被保険者期間」の算定について、2020年8月より下記の通り変更されます。

出典:鳥取労働局「失業等給付の受給資格を得るために必要な「被保険者期間」の算定方法が変わります

今後、2020年8月1日以降の離職者に係る「離職証明書」を作成する際は、離職票「⑨欄」と「⑪欄」に記載する賃金支払基礎日数が10日以下の期間について、当該期間における賃金支払の基礎となった労働時間数を「⑬欄」にすることになります。

出典:ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き_離職_記入例:雇用保険被保険者離職票-2

以上、いずれの項目も重要ではありますが、赤丸を付けた3つのポイントについてはしっかりおさえておきましょう。

雇用保険業務取扱要領の改正項目、失業等給付に係る「給付制限期間」の短縮も併せて確認

ここに挙げた法改正項目からは抜け落ちていますが、失業等給付に係る「給付制限期間」の短縮もまた、実務ご担当者であれば知っておきたいポイントです。失業等給付に係る給付制限期間については、雇用保険法上すでに「1ヵ月以上3ヵ月以内」と定められているため、法改正の必要はありません。ただし、実務上の取扱いが変更されますので、業務取扱要領の改正項目に該当します。

すでにご存じの方がほとんどかと思いますが、雇用保険の失業等給付は、自己都合退職の場合、一定期間後からでないと受けることはできません(給付制限期間)。この給付制限期間については、現状「3ヵ月」とされていますが、2020年10月1日以降の離職については原則「2ヵ月」に短縮されます。
ただし、

  • 「2ヵ月」に短縮されるのは「5年間のうち、2回目の離職」までであること
  • 自己の責めに帰すべき重大な理由で退職する場合の給付制限期間は、これまでどおり「3ヵ月」であること

に注意する必要があります。もっとも、離職後の失業等給付に際しての取扱いの変更のため、企業における雇用保険関連実務に影響を与えるものではありませんが、ご担当者様であれば従業員から質問を受けた時には正しく対応できるようにしておくと安心です。

出典:鳥取労働局「失業等給付に係る「給付制限期間」が2か月に短縮されます。(令和2年10月1日から適用)

新型コロナウイルスに働き方改革と、現場で対応するべき労務関連事務は多岐に渡ります。これに加えて、今後、続々と施行されていく雇用保険法等の改正事項については、早期にポイントを把握し、適切な時期に適切な対応ができるよう準備を進めましょう!

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