2024年10月からの社会保険適用拡大|対象となる「従業員数50 人超」の考え方とは?

2016年以降、段階的に進められている社会保険適用拡大ですが、2024年10月からは「従業員数50人超」の企業で働く短時間労働者が要件をすべて満たしている場合、新たに社会保険の適用が義務化されます。今号では、対象企業の要件となる「従業員数50人超」の定義について理解を深めましょう。

2024年10月以降、新たに社会保険適用拡大対象となる企業要件は「現在の厚生年金保険適用対象者」で判断

社会保険適用拡大の企業要件における「従業員数」は、単純に「雇用するすべての人数」と考えるわけではありません。具体的には「現在の厚生年金保険の適用対象者」が所定の人数(2024年10月からは50人)を超えるかどうかで判断します

「現在の厚生年金保険の適用対象者」とは?

現在の厚生年金保険の適用対象者数は、具体的に以下A、Bの総数となります。

出典:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト

一般的な目安としては、Aが「週40時間、月20日勤務」、Bが「週30時間、月15日勤務」となり、この基準を満たす70歳未満の従業員が厚生年金保険の適用対象者となります。例えば、70歳以上で健康保険のみ加入している従業員や、社会保険適用拡大によって新たに被保険者となる従業員の数は含まれず、あくまで「現在、厚生年金保険に加入している従業員」の数が加味されることになります。

法人の場合、「法人番号が同一の全企業」における対象従業員数を合算

使用される被保険者の総数が常時50人を超えるか否かの判定は、企業ごとに、以下のいずれかの考え方で判定します。
〇 法人事業所
同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時 50 人を超えるか否かによって判定
〇 個人事業所
適用事業所ごとに使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時 50人を超えるか否かによって判定

従業員数は「直前1年間の状況」で判断

「被保険者の総数が常時50人を超える」とは、いつの時点で判断することになるのでしょうか?この点、Q&Aでは「同一の法人番号を有する全ての適用事業所(個人事業所の場合は、適用事業所ごと)に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が、直近12ヶ月のうち、6ヶ月以上、50人を超えることが見込まれる場合」に対象となり得る旨が記載されています。つまり、2024年10月1日から適用拡大の対象となるかどうかは「2023年10月~2024年9月」の厚生年金保険被保険者の状況で判断します。

2024年10月1日以降、特定適用事業所に該当する適用事業所における手続

社会保険適用拡大の対象要件を満たす事業所を「特定適用事業所」といい、原則的な手続きでは「特定適用事業所該当届」を提出した上で、対象となる短時間労働者の被保険者資格取得手続きを行うことになります。
ただし、2024年10月から2025年8月までの各月のうち、使用される厚生年金保険の被保険者の総数が6ヶ月以上50人を超えたことが確認できる場合は、日本年金機構において対象の適用事業所を特定適用事業所に該当したものとして扱い、事業所に対して「特定適用事業所該当通知書」を送付するため、特定適用事業所該当届の届出はしなくても良いことになります。ただし、被保険者資格取得届については、新たに被保険者資格を取得する短時間労働者について、各適用事業所がその者に係る当該届を2025年10月7日までに事務センター等へ届け出る必要があります。

特定適用事業所に該当しなくなった場合の手続き

施行日以前に「特定適用事業所該当通知書」等が送付された場合であっても、施行日以前に特定適用事業所の要件を満たさないこととなった場合は、「特定適用事業所該当取消申出書」によって、特定適用事業所に該当したことを取り消すことが可能です。
当初特定適用事業所に該当した場合で、従業員要件を満たさなくなったケースでも、引き続き特定適用事業所であるものとして取り扱われます。ただし、使用される被保険者の3/4以上の同意を得たことを証する書類を添えて、事務センター等へ特定適用事業所不該当届を届け出ることで、対象の適用事業所は特定適用事業所に該当しなくなったものとして扱われることとなります。
ちなみに、特定適用事業所不該当届は、厚生年金保険の被保険者の総数が50人以下となった日以後であれば、要件を満たさなくなった時点ですぐに提出可能となります。つまり、該当届のケースのように、「実際に50人以下となった月が直近1年のうち6ヶ月以上となること」を待つ必要はありません。

参考:厚生労働省「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の更なる適用拡大に係る事務の取扱いに関するQ&A集の送付について

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