義務化されたマタニティハラスメント対策_大切な社員が妊婦になった時にすべき5つのコト

昨年9~10月に厚生労働省が実施した調査では、妊娠や出産、育児をした女性のうちマタハラを受けた人の割合は、派遣社員48.7%。正社員21.8%、契約社員13.3%、パート5.8%となっており、経験したマタハラで最も多かったのが「『迷惑』『辞めたら?』など権利を主張しづらくする発言」でした。

今回の改正では、以前から禁止されている事業主が行う妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱い(解雇や減給、契約を更新しない等)に加え、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策を事業主が講ずることを義務化しています。

具体的にマタニティハラスメントに関する内容と5つの対策をご紹介します。

どういったことが対象となるのか?

1.制度等の利用への 嫌がらせ型

「制度等の利用への嫌がらせ型」というのは、妊娠中通常の業務が困難になったりした場合に、妊婦が制度に対する申し出をしたことに対しての嫌がらせです。
以下の制度又は措置の利用に関する言動により就業環境が害されるものであるとしています。

(1)母性健康管理措置(※ 健康管理:産婦人科への通院や受診)
(2)坑内就業・危険有害 業務
(3)産前休業
(4)軽易業務転換 (※体力を使わない仕事への転換など)
(5)時間外・休日・深夜業 の制限
(6)育児時間関係

嫌がらせの内容としては、以下のような場合に該当します。
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・制度利用による「解雇」「降格」などの不当な扱いをする。
・制度を取り下げるように上司や同僚が言う。
・制度利用者に対して制度利用後も継続的な嫌がらせをする。
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 具体的には、育児休業を取りたいと申し出た労働者に対し、上司が「それなら辞めなよ」などと言う事や、育児休業から復帰して短時間勤務をしている労働者に対し「なんであなただけ短時間で帰るのよ」などと同僚が言う事が制度等利用への嫌がらせに該当します。厚生労働省均等室の資料によると、前述の上司の言葉は一発でハラスメント該当、後述の同僚の言葉は繰り返し言われることによりハラスメントに該当すると例示されています。

2.状態への嫌がらせ型

「妊娠」「出産」した事実や、それに伴う症状(つわり、運動能力の低下など)に対して行われる嫌がらせのことを言います。以下の制度又は措置の利用に関する言動により就業環境が害されるものであるとしています。

(1)妊娠、出産
(2)坑内就業・危険有害 業務
(3)産後休業
(4)妊娠、出産に起因する 症状関係

嫌がらせの内容としては、以下のような場合に該当します。

・「妊娠」「出産」した事実や、それに伴う症状を理由として「解雇」「降格」や不利益な取り扱いを示唆する。
・女性労働者の能力低下を促すような嫌がらせを繰り返す。

 具体的には、妊娠している労働者に対し、「いつ休むかわからないから重要な仕事を任せられない」などと上司や同僚が繰り返し言う事が状態への嫌がらせに該当します。

事業主として義務付けられたマタニティハラスメント防止対策

1.ハラスメントを許さないと言う事業主の方針の明確化と労働者への周知・啓発

 いくら事業主が「ハラスメントはダメ!」と言っても、どのような言動がハラスメント行為に該当するのかわからない労働者(管理職含め)も多いはずです。ハラスメントとは何か、嫌がらせを受けた人はどう思うか等を労働者に周知・啓発する必要があります。そこで、ハラスメント研修を行う、ハラスメント防止リーフレットを作成し配布する等といった対策が効果的です。
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2.ハラスメント相談窓口を設ける

既にセクハラ防止対策で相談窓口を設けている事業所も多いと思いますが、マタハラについても相談窓口は必要です。各ハラスメントの相談窓口を一本化し設置することをお勧めします。
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3.ハラスメントの相談後の迅速かつ適切な対応

ハラスメントの相談があった場合、相談窓口のご担当者は迅速な対応が求められます。事実関係を調査し、もしハラスメントの事実があれば、そのような嫌がらせの行為者に対して事案に応じた懲戒処分も必要になるかもしれません(もちろん就業規則にも懲戒根拠が必要となります)。したがって、懲戒規定にマタハラをした場合の処分を記載をしたり、社内通報規定に追記したりする必要があります。パワハラ・セクハラの規定を追加する場合の内容としては、厚生労働省が出している指針に沿う内容とパワハラ・セクハラの文体に合わせて記載するとよいでしょう。
 また、プライバシーにも配慮して、再発防止対策も練る必要があります。そして、ハラスメントにあった労働者が二次被害に会わないように配慮することも必要となります。なお、事実関係の調査に協力してくれたことを理由として不利益取扱いをしてはならないことも重要です。
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4.どのような制度があり、利用できるのか周知

現在妊娠中の方、これから妊娠する可能性のある方にも、妊娠・出産・育児に関してどのような休業制度が利用できるか、と言うことを周知しておく必要があります。そして、“イクメン”という言葉があるように、これからは男性も育児に積極的に参加していく時代です。これからお父さんになる男性社員にも是非周知していただきたいと思います。
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5.休業をとる労働者への啓発活動

職場でトラブルになるのはコミュニケーション不足が一番多い原因かもしれません。「制度があるんだから休んでいいはず!」「それだと、こっちは困るんだよ!」と両者が言い合う職場では、職場内がギクシャクしてしまいます。復帰を待っている上司や同僚は、協力して休業者をバックアップする必要があるでしょう。また、休業する方も、みんなの協力があるおかげで安心して休業できる、分が帰ってくるのを待っているサポーターが沢山いる、という意識を持ってもらえるように事業主は啓発していく必要があります。

まとめ_幸せな妊婦は世界の宝

企業は、マタハラ・パタハラなどの防止措置を講じることはもちろん、職場の上司や同僚がそういった行為をとることに対しても、防止の義務を負います。また、対象を正社員のみならず、派遣労働者にも拡大しなければなりません。企業の責任がより重くなるとともに、「マタハラ・パタハラなどの防止」について、従業員の理解をさらに促進することが重要となります。

法改正があるからセクハラとマタハラだけ対策しておけばいいや、ではこれからは不十分だと思います。育児・介護休業法では、マタハラに限らず介護休業の取得者に対してもハラスメント対策を講じるようにと改正されています。

【関連記事】 【人事部必見!!最新法改正】平成29年1月から育児・介護休業法が変わる!~気になる改正ポイント~)

マタハラによって貴重な社員を失うことにならないよう、経営層は一層対策を練る必要があります。この機会に、ハラスメントに関する規程や条文があるか自社の規程類を見直してみてはいかがでしょうか?

※当記事は社労士法人 人事部サポートSR社が運営する人事部メディアからの提供記事です。

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