
退職した社員から突然未払い残業代を請求される、ということは無ければ一番良いのですが、もしこのような請求があった場合、請求内容を確認するため、賃金台帳や出勤簿、在職当時の業務記録を確認しなければなりません。
会社はこのような請求に対応するためにも、必要書類を保存しておく必要がありますが、いつまで書類を保存する義務があるのか、また、保存期間の起算日はいつなのかということを解説していきます。
目次
民法改正により、賃金請求権の消滅時効期間が延長
令和2年4月の民法改正により、賃金請求権の消滅時効期間が5年(当分の間3年)に延長されました。
これに伴い、労働基準法第109条、記録の保存期間も令和2年4月以降、現行の3年から5年(経過措置の間3年)に延長されています。
書類の保存期間の起算日は?
労働基準法施行規則第56条(記録の保存)によれば、賃金台帳は「最後の記入をした日」、賃金その他労働関係に関する重要な書類は「その完結の日」が起算日となります。
ここでいう「その他労働関係に関する重要な書類」とは出勤簿、タイムカード等の記録、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類(使用者自ら始業・終業時間を記録したもの、残業命令書及びその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書)、退職関係書類等を指します。
なお、賃金請求権の消滅時効の起算点については、変更はありません。改正後の労働基準法第115条では、賃金請求権の消滅時効の起算点は「これを行使することができる時」であることが明確化され、従来と同じく、「賃金支払期日が起算点」となります。
新しい賃金請求権の消滅時効と保存期間の起算日は、いつから適用される?
改正法の施行期日(令和2年4月1日)以後に支払期日が到来する賃金支払い日から適用されます。このうち、新たに期間が延長されるのは、改正法の施行期日(令和2年4月1日)以後に支払い期日が到来する賃金請求権になります。
出典:厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」
労働基準監督署の調査で要求される帳簿や書類の保管場所等をリスト化しておきましょう
一般的に臨検で要求される帳簿・書類は以下になります。
- 会社組織図
- 労働者名簿
- 就業規則
- 雇用契約書(労働条件通知書)
- 賃金台帳
- 出勤簿
- 時間外・休日労働に関する協定届
- 変形労働時間制など企業で必要となる労使協定
- 変形労働時間のシフト表
- 有休管理簿
- 健康診断個人票
- 安全衛生管理者に関わる資料
- 安全・衛生委員会に関わる資料
- 産業医の選任状況に関する資料
これらが、どのような形式でどこに保管されているか一目でわかるようにしておくといいでしょう。退職者に関する書類は個人別なのか年別なのか保管方法を決めておくと急な調査にも対応しやすくなります。
今回のような退職者からの請求で事業所全体の実態を確認することになる場合もあります。未払いがないことが一番ですが、今後は時効が5年に延長されますので、少なくとも直近5年間については、書類の対応はすぐにできるように保管ルールを決めておきましょう。
困ったら専門家に相談することを検討
労務関係や助成金のことで、困ったことや具体的に聞きたいことがあれば社会保険労務士に相談してみるのも一つの方法です。
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※本稿に関連する記事が2020年7月2日のSR人事メディアにアップされています。
関連:SR人事メディア「未払い残業代の精算は何年遡る必要があるか?」
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