「自宅待機」は欠勤扱いで良い?|名目上「自宅待機」としても、会社都合なら休業手当の支払いが必要です

企業の労務管理状況を確認していると、2020年は3~6月頃の勤怠データに「在宅勤務」や「自宅待機」の文字がずらっと並び、新型コロナウイルス感染拡大の影響が色濃く反映されていることが分かります。コロナ禍ということで、前代未聞の苦境を迎えた企業も少なくないと思いますが、一方で、不適切な労務管理は例外なく問題視されます。今号では、各社の勤怠データ上、特に気になった「自宅待機」の取扱いについて解説します。

「自宅待機」は欠勤扱いで良い?

自宅待機についての考え方は現場によって様々ですが、勤怠管理上、労働関係法令に則った適切な処理が求められます。私が特に注視するのは、自宅待機を欠勤扱い(無給)として処理している事例です。

確かに、自宅待機は在宅勤務とは異なり、具体的な業務指示が出されるわけではありません。また、労基法上、労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指しますが、会社によっては「自宅待機中にどこで何をしていても自由だから、給与支払いの義務もない」としているところもあります。その結果、勤怠データ上「休日」「欠勤」として処理し、無給とする例も珍しくないようです。

自宅待機命令は、実質「休業命令」

ここで考えていただきたいのは、御社の自宅待機命令は実態として休業命令ではないかという点です。制度として自宅待機の体制を整えている会社でも、そもそも待機は臨時的な取り扱いであり、まとまった期間を想定しないことが一般的です。また、たとえ待機中に使用者からの拘束がなくても、従業員のモチベーション低下を防ぐ目的で待機手当が支払われているケースがほとんどのようです。そしてもちろん、待機中に業務が発生し、業務をさせれば在宅勤務扱いとなり、賃金が発生することになります。

今般のコロナ禍における自宅待機には、名目上「待機」としつつも実態として「休業」である事例が多く潜んでいます。名目はどうあれ、会社の都合で労働者を休ませた事実があれば、会社は労基法の定め通り、休業手当として「平均賃金の60%」を支払わなければなりません。

緊急事態宣言下に休業要請を受けた場合でも、無条件に休業手当の支払いが不要となるわけではありません

業種によっては、緊急事態宣言下に都道府県の休業要請を受け、これに伴い労働者に休業を命じた例もあるでしょう。この場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しない可能性が高いことから、労基法上の休業手当支払義務はないと考える使用者は少なくありません。
しかしながら、休業について使用者の不可抗力が認められるためには、以下2点に関わる十分な検討が必要です。

  1. その原因が事業の外部より発生したものであること
  2. 使用者が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできないこと

特に②については、在宅勤務や配置転換等で休業を回避できた場合には、やはり使用者には休業手当の支払義務が認められます。また、たとえ休業手当の支払義務がないとされた場合でも、コロナ禍において政府は「雇用調整助成金を活用した労働者への手当の支払い」を推奨しています。

新型コロナウイルス感染者の自宅待機(休業)の場合は例外

ただし、すべての自宅待機で休業手当の支払いが必要なわけではありません。例えば、新型コロナウイルスに感染した労働者で感染経路が業務外にある場合、コロナ感染の伴う自宅待機は都道府県知事が行う就業制限による休業であり「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないことから、休業手当の支払いは不要とされます。この場合、被用者保険に加入しており要件を満たすことで、各保険者から傷病手当金を受けることができます。

参考:協会けんぽ「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について

また、感染が業務に起因する場合には、労災保険給付の対象となります。2020年9月中旬時点で、新型コロナウイルス感染に伴う労災請求は1200件を超えており、厚生労働省はすでに600件超の審査を終えましたが、そのすべてが労災認定されたとのこと。一般的な労災申請への認定率が30%ほどにとどまることを考慮すると、まさに異例の状況と言えますね。

参考:厚生労働省「労働災害が発生したとき

依然として収束の兆しがみえない、新型コロナウイルス感染症。感染状況次第では、今後いつ休業命令が出されてもおかしくありません。現場においては、労務管理上曖昧になりがちな従業員の休業や自宅待機、在宅勤務に関わる制度設計を進めておけると安心です。

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