2025年1月より、「養育特例」手続き時の添付書類が省略されます

育児中の社会保険被保険者の標準報酬月額低下時に活用できる「養育期間標準報酬月額特例(養育特例)」について、2025年1月より添付書類の省略が予定されています。少し先の改正項目となりますが、さっそく概要を確認しましょう。

「養育期間標準報酬月額特例」とは?

「養育期間標準報酬月額特例」とは、子どもが3歳に達するまでの養育期間中に時短勤務等で標準報酬月額が低下した場合、保険料は標準報酬月額の低下に応じて引き下げつつも、年金受取時には養育開始以前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができるようにする仕組みです

「随時改定(月額変更届)」との違いと「養育期間標準報酬月額特例」の届出方法

通常、賃金の低下に伴い標準報酬月額を見直す際には、「随時改定(月額変更届)」の手続きを行います。随時改定(月額変更届)では、固定的賃金の変動月から3ヶ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合は随時改定の対象となり、この手続きによって変動月の4ヶ月目から標準報酬月額が変更されます。

関連:日本年金機構「随時改定(月額変更届)

一方で、育児休業が終了後、3歳未満の子を養育する被保険者について、以下の要件に該当する場合には「育児休業等終了時報酬月額変更届」の手続きを行います。

ア.これまでの標準報酬月額と改定後の標準報酬月額※との間に1等級以上の差が生じること
※標準報酬月額は、育児休業終了日の翌日が属する月以後3ヶ月分の報酬の平均額に基づき算出する
ただし、支払基礎日数が17日未満の月は除く
イ.育児休業終了日の翌日が属する月以後3ヶ月のうち、少なくとも1ヶ月における支払基礎日数が17日
(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上であること
※短時間就労者(パート)に係る支払基礎日数の取扱いについては、3ヶ月のいずれも17日未満の場合は、そのうち15日以上17日未満の月の報酬月額の平均によって算定する

 

育児休業等終了時報酬月額変更届によって引き下げられた標準報酬月額は、養育期間標準報酬月額特例の申し出をすることで、年金受給時には引き下げられなかったものとして受給額に反映することができます。「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」の届出要件は、以下の通りです。

  • 3歳未満の子どもを養育している厚生年金保険の被保険者、または被保険者であった者
  • 養育期間中の標準報酬月額が、養育開始月の前月の標準報酬月額を下回る場合

「育児休業等終了時報酬月額変更届」と「養育期間標準報酬月額特例申出書」の手続きにより、3歳未満の子の養育開始月から3歳到達日の翌日の月の前月までの間、「保険料減額」と「年金受給額の維持」に対応できます。

参考:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置

2025年1月からは、「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」の添付書類が省略へ

「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」の届出では、原則として「戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書」(原本)および「住民票の写し」(原本)の添付が求められます。ただし、養育特例の要件に該当した日に申出者と子が同居していることを確認するための「住民票の写し」(原本)に関しては、申出者と養育する子の個人番号がどちらも申出書に記載されている場合、添付不要となっています。
そして2025年1月からは、申出者と子との身分関係の証明について、事業主による確認を受けた場合には、「戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書」(原本)の添付が不要となる予定です

参考:厚生労働省「厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令の公布について(通知)

「無理のない両立支援」に目を向けましょう

職場と家庭の両立支援に関しては、大企業を中心に取り組みが進みつつありますが、かたや中小企業においては遅々として進まず・・・といった状況を散見します。現場でお話を伺うと、「ウチではそこまで対応できない」といったお声を耳にすることも少なくありませんが、そんな事業場にこそ、既存制度を最大限に活用する姿勢が肝心です。私個人の感覚にはなりますが、今号で解説した養育特例について、現場における浸透はまだまだ不十分であると感じられます。何かと複雑な社会保険関係諸手続きですが、使える制度はしっかり使い、御社の両立支援策に役立ててまいりましょう!

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