年度末の退職に伴い、会社側が行うべき手続きを総復習!

年度末である3月は、一年の間でも、従業員からの退職希望が特に多く出される時期です。従業員の退職に伴い、会社は必要な手続きに確実に対応しなければなりません。今号では、年度末3月31日退職を想定して、会社側にはいつ、どのような手続きが必要になるかを解説します。

年度末の退職に向けた各種手続きの流れ

3月31日付の退職に伴い、会社が行うべき手続きについて、まずはざっくりと全体の流れを確認しておきましょう。

○ 退職1ヵ月前を目安に行っておくこと
・従業員から退職届の受理、最終出勤日の確認
・退職金支給準備
・退職に伴う必要事項の説明
・業務の引継ぎに関わるスケジュール調整

○ 最終出勤日の前日までに行っておくこと
・退職時誓約書の締結
・業務の引継ぎ状況の確認、確実な実施

○ 最終出勤日に行うこと
・従業員から返却を受ける物の受け取り
・従業員に渡すべきものの引き渡し

○ 退職日の翌日から5日以内に行うこと
・「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届」の提出

○ 退職日の翌々日から10日以内に行うこと
・「雇用保険被保険者資格喪失届」、「雇用保険被保険者離職証明書」の提出

○ 退職日から1ヵ月以内を目安に行うこと
・退職手続きの完了に伴う各種書類の送付

○ 退職日の翌月10日までに行うこと
・住民税関連の手続き

退職の申し出~最終出勤日までの期間は「1ヵ月」とは限りません

現状、従業員からの退職の申し出については、就業規則等で「退職の1ヵ月前までに」としている会社がほとんどかと思います。そのため、上記の流れでは従業員からの退職の申し出が退職日の1ヵ月前までにあったことを前提としていますが、申し出の時期によってはさらにタイトなスケジュールとなることも想定されます。

雇用契約の解約に関わる、民法上の規定を理解しておきましょう

というのも民法では、期間の定めのない雇用契約について「解約の申し入れ後、2週間(但し、月給制の場合は、当該賃金計算期間の前半の申し入れ)」で終了するとされています。また、退職は労働者の一方的な意思表示により効力が発生するため、必ずしも会社の同意がなければ退職できないというものではないのです。例年、年度末での退職が多く生じる現場では、2月中に従業員との面談を実施する等して、あらかじめ年度末での退職の意向があるかどうかを確認しておくと安心です。

退職日と最終出勤日は異なります

また、在職中に有休消化が進まなかった従業員であれば、退職日前にまとめて有休を消化するケースがほとんどです。つまり、「退職日は3月31日でも、出勤は3月中旬まで」ということは珍しくありません。この場合、前述の手続きのうち、退職までに行っておくことについて、従業員の最終出勤日に合わせて対応する必要が生じます。

なお、退職日前の有休消化希望を会社側が一方的に拒否することは、労働基準法違反に該当する可能性があります。退職日前の有休消化によって業務に支障が生じそうな場合、退職までのスケジュールについては労使間で十分に協議し、やむを得ない場合には有休の買い上げも視野に入れて対応するのが得策です。

退職に伴い、従業員に説明しておくべきこととは?

退職1ヵ月前を目安に行っておくこととして、「退職に伴う必要事項の説明」を挙げました。具体的に説明すべき項目には、以下が想定されます。

✓ 退職証明書や離職票の発行の希望の有無
退職証明書や離職票は、退職する従業員の求めに応じて会社が発行すべき書類です。
離職票は、ご存じの通り、退職後に失業給付を受ける際の手続きで必要となる書類です。既に再就職先が決まっている方であれば不要とするケースもありますが、59歳以上の従業員の退職では本人の求めの有無に関わらず必ず発行しなければなりません

また、退職証明書は、文字通り、退職の事実を証明する書類です。退職後に国民健康保険・国民年金の手続きを行う際に提示が求められたり、再就職先から提出が求められたりします。フォーマットは自由ですが、「雇用された期間」「従事していた業務の種類」「事業における地位」「賃金」「退職の事由」等を記載します。

✓ 住民税の徴収方法に関わる確認
住民税については、現状、会社が源泉徴収して納付する「特別徴収」を採用しているケースがほとんどかと思いますが、会社は、退職に伴い徴収方法を変更するための届け出をしなければなりません。

具体的には、退職後すぐに再就職先で勤務が開始する場合には再就職先で特別徴収を継続できるよう、会社が発行する「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を新たな職場に提出するよう従業員に伝えます。一方、退職後すぐに就職しない場合、3月末日退職であれば退職する会社で一括徴収するのが原則です。ただし、退職月の賃金から一括徴収できない場合には、従業員が各自で納める「普通徴収」に切り替えとなるため、会社が発行する「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を、退職後に従業員自身が市区町村に提出するよう伝えます。

✓ 健康保険の任意継続に関わる説明
健康保険には「任意継続制度」があり、退職に伴い被保険者資格を喪失した後も、要件を満たす被保険者であれば、一定期間個人で継続して健康保険に加入し続けることができます。継続して2ヵ月以上の被保険者期間がある被保険者であれば対象となりますので、制度の内容や本人が行うべき手続き、保険料負担に関わる説明を行っておきましょう。特に、保険料に関しては、これまで会社と折半していたものが全額退職者の負担となる点に注意が必要です

参考:協会けんぽ「健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について

退職に伴い、従業員から回収するものと会社が渡すもの

退職に伴い、従業員から回収すべきものをあらかじめ確認しておき、漏れなく回収できるようにしておきましょう。一般的には、退職届や健康保険証、社員証、制服、業務用携帯・パソコン等が想定されますが、これらの他にも貸与していた物品があれば回収します。また、退職に際し秘密保持や競合避止に関わる誓約を取り交わす場合の誓約書、退職金を支給する場合の申告書にも忘れずに対応してもらいましょう

参考:国税庁「退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)

また、会社側が渡すものとしては、雇用保険被保険者証、年金手帳(会社保管していた場合)、退職証明書、住民税関連書類等があります。また、退職日以降となりますが、離職票、健康保険被保険者資格喪失確認通知、退職月の給与明細、源泉徴収票等の送付を遅滞なく行います

その他、退職関連の労働・社会保険手続きについては、社会保険労務士への代行ご依頼が便利です。業務上繁忙期を迎える現場も多いと思いますが、従業員から受けた年度末の退職申し出に向けて、適正な対応を心がけてまいりましょう!

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