新設が予定される男性版「産休制度」とは?男性の育休等取得は義務化されるって本当?

現在、政府が男性版産休制度の新設に向けて準備を進めていることをご存知でしょうか?本来、産前産後の母体保護のために創設された産休ですが、これを男性も取得可能となるという点に違和感を抱く方も多いかもしれません。男性版産休制度とは一体どのようなものなのか、労働政策審議会の分科会資料から概要を確認しましょう。

男性版産休制度は、分科会で議論された男性の育児休業取得促進策のひとつ

2020年12月14日開催の分科会では、男性の育児休業取得促進策として主に以下の4施策に関わる議論が交わされました。

✔ 子の出生直後の休業の取得を促進する枠組み
✔ 妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対する個別の働きかけ及び環境整備
✔ 育児休業の分割取得
✔ 育児休業取得率の公表の促進

男性版産休制度は「子の出生直後の休業の取得を促進する枠組み」であり、はっきりと「産休」というキーワードで解説されているわけではありません。女性の産後休暇期間に、男性に対しても現行の育児休業以上に柔軟で取得しやすい休暇制度が新設されようとしていることから、報道等で「男性版産休制度」というキーワードが用いられています。

なぜ、育休とは別の休暇制度が設けられるのか?

ところで、現行制度においても、パートナーの出産に伴い男性は育児休業を取得してサポートすることができ、政府としても男性の育休取得を奨励しているところです。なぜ今回、育休とは別に「産休制度」と称される新制度の創設が予定されるのかといえば、現行の育休制度の穴を埋めるためです。現在の育児休業制度では、原則として休業開始の1ヵ月前までの取得申請が必要となっています。この場合、仮に出産時期が早まった際、男性には「子どもが生まれてもすぐに休暇を取得できない」といった問題が生じることがあります。男性の育休取得時期が子の出生後8週以内に集中していることに鑑みれば、こうしたタイムラグは望ましいものではないですね。

新設が予定される男性版産休制度の概要(2020年12月時点)

新たに創設される、子の出生直後の男性の休業制度について、現時点で想定される概要を確認しましょう。こちらに記載しているのは2020年12月時点の内容であるため、ご覧いただく時期に応じて、必ず最新の情報をチェックしてください。

  • 対象期間、取得可能日数等
    現行制度での育休取得状況や女性の産後休業に鑑み、「子の出生後8週」の間に年次有給休暇の年間最長付与日数(20日間)を参考に、「4週間」取得可能とする
  • 要件・手続き
    対象労働者は現行の育児休業と同様とし、原則「2週間前」までに取得申請することとする方向

その他、男性版産休制度の詳細や、このたび議論されている男性の育児休業取得促進策については、下記よりご確認いただけます。

参考:厚生労働省「第34回労働政策審議会雇用環境・均等分科会_【資料1】男性の育児休業取得促進策等について

男性版産休制度や育児休業の分割取得等の施策を組み合わせると、これまでよりも柔軟に仕事と子育ての両立を図れるようになるイメージです。

出典:厚生労働省「第34回労働政策審議会雇用環境・均等分科会_【参考資料】男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集

育児休業とは異なる「休業中の就労」の取扱い

男性版産休制度について、分科会資料によると、現行の育児休業制度では原則禁止とする「休業中の就労」について以下の記述があります。

出生後8週間以内は、女性の産後休業期間中であり、労働者本人以外にも育児をすることができる者が存在する場合もあるため、現行の育児休業では認められていない、あらかじめ予定した就労を認めることとしてはどうか。

就労を認めることで、個人的には、休業の本来の趣旨からかけ離れてしまう危険性があると感じます。例えば、「実績作りに形だけ休業を取得させて、実態としては在宅勤務を強いられる」等、問題事例の発生が懸念されます。もっとも、現段階では制度詳細は不明であり、休業中の就労に関しても未だ「案」の段階ですが、今後の動向に注目が集まるポイントといえましょう。

男性の育休等取得が義務化される?

最近では、大手企業を中心に、男性の育休取得義務化・奨励が活発化しています。こうした流れを受けてか、個人的には「男性の育休等の取得は義務化されるのか?」といった中小企業からのご相談が増えているように感じます。この点、現場においては、まず「何を義務化するのか」を正しく認識することが必要です。

分科会資料で、企業に義務付けることと明記されているのは、以下の3点です。

✔ 新制度及び現行の育児休業を取得しやすい職場環境の整備
✔ 本人又は配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対し、個別に周知し、取得の働きかけを行うこと
✔ 育児休業の取得率又は育児休業及び育児目的休暇の取得率の公表(大企業のみ)

実際に育休等を取得するかどうかの判断は、あくまで労働者に委ねられていることであり、年次有給休暇の様に使用者が確実に付与しなければならないものではありません。ただし企業としては、男性労働者が育休等の取得を前向きに検討できるよう職場環境を整備する、対象者に必要な情報提供と取得奨励を行う必要があります。また、男性労働者から申請があった場合に、これを拒むことのないようにしましょう。

関連記事:『改正育児・介護休業法が成立!注目の「男性版産休制度」は2022年10月の施行予定

LINEで送る

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事