ゼロから始める労務管理!複雑な「割増賃金計算」の基本をマスター

給与計算事務で間違いが起こりがちな、「割増賃金の算出」。最近では、クラウドによる給与計算システムを活用する会社が増えており、給与計算に係る負担感はずいぶん軽減されつつあります。しかしながら、定休日の設定がない、時間帯によって時給が異なる場合等、割増賃金を法定通りのルールに従い算出できていないケースが見受けられるため注意が必要です。システムを活用する場合でも、正確な知識を有するご担当者様による最終確認を欠かすことはできません。

割増賃金の基本「時間外」「休日」「深夜」

割増賃金の原則は、以下3種類の要件に対してそれぞれに正しい割増賃金率を適用することです。

「時間外」に関わる支払条件に関わる具体的な考え方

「時間外」について、「1日8時間超」の要件は比較的分かりやすいですが、「週40時間超」については盲点になりやすく、実務上も未払賃金の温床となりやすいポイントです

所定労働時間が7時間以下で週6日勤務の場合には、必ず確認するようにしましょう。

2023年4月より、中小企業でも「月60時間超の残業」の割増賃金率が「50%」に

時間外労働に係る割増賃金率は原則として「25%」ですが、現状、大企業では「月60時間超」部分について「50%」を適用しています。この点、2023年4月1日以降は中小企業でも大企業同様の対応を求められるようになります。この機会に、長時間労働対策について前向きに検討されておくことをお勧めします。

「休日」+「時間外」の割増賃金率適用はなし

労基法上の法定休日(※)「休日」の割増賃金率については「35%」とされていますが、実務上、「休日に法定労働時間を超えて労働した場合、「休日」+「時間外」で割増賃金率は60%となるのでしょうか?」というご質問を受けることがあります。
この点については、下図の通り、「休日」+「時間外」の適用はありません

ただし、22時以降は「深夜」に係る割増率の加算が生じます。ちなみに、この「深夜」に係る割増率は「時間外」にも加算されます

※参考記事:『ゼロから始める労務管理!労基法上の「休日の定義」と「法定休日と所定休日の違い」について

時間帯ごとに時給が異なる場合は「時間外労働が発生した時の時給」が基準となる

飲食店等では、特定の時間帯や土日等について、通常よりも時給を高く設定する例は珍しくありません。時間ごとに異なる時給を設定するケースで、時間外や休日労働が発生した場合、「時間外労働が発生した時の時給」を元に割増賃金を算出します。

参考:東京労働局「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編

固定残業代を採用するなら「みなし残業時間数」の明示が必要

時間外労働が恒常的に発生する場合、「固定残業代を支給して、月々の細かな割増賃金算出をしなくて済む様にしたい」とのご相談を受けることが多くあります。

固定残業代を設定する場合、まずは「支給する残業代が何時間相当のものなのか」を明らかにしなければなりません。もちろん、みなし残業時間数に応じて支給される固定残業代が、法定の給与計算で算出する額を下回ることは許されません

設定した固定残業代は、基本給と分けて労働者に通知します。その際、固定残業代が何時間相当の残業に対するものなのかを明記することも併せて明記しなければなりません。

また、固定残業代は、仮に残業が月に1時間も発生しなかったからといって支給しないとすることはできません。一方で、あらかじめ設定したみなし残業時間数を超える残業に対しては、固定残業代とは別に賃金を支払う必要があります

御社の給与計算を見直しませんか?

給与計算は毎月限られた期間内に完了させる必要があるため、一度誤った算定ルールを適用してしまうと、その後じっくり見直されることのないまま毎月間違った給与計算が行われがちです。そうなると、会社の意図しないところで、どんどん未払賃金が積み重ねられていくことになりかねません。

給与計算は最初のルール設定が肝心であることはもちろんですが、設定した算定ルールが正しいものかどうか、法改正に対応できているかを定期的に見直す作業も大切です。給与計算事務に少しでもご不安があれば、社会保険労務士までご相談ください。

正しい給与計算の基本は、適正な勤怠管理にあり!クラウド勤怠管理システム「IEYASU」を活用すれば、日々の労働時間把握を漏れなく行えるため、安心です^^

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