派遣労働者の同一労働同一賃金対応に伴い、労使協定方式の適用を開始した派遣元では、有効期限に応じて労使協定の更新が必要となります。2020年4月1日を始期とする労使協定で、有効期限を1年ないし2年とした派遣元では、2022年3月末日までに忘れずに更新しましょう。
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派遣労働者の同一労働同一賃金「労使協定方式」とは?
2020年4月より、派遣労働者の不合理な待遇差をなくすことを目的に、派遣元事業者には「派遣先均等・均衡方式」又は「労使協定方式」のいずれかによる公正な待遇確保が義務付けられました。これに伴い、現状、派遣元のおよそ9割が労使協定方式を選択し、派遣労働者の同一労働同一賃金に対応しています。
「労使協定方式」では、派遣労働者の賃金について、地域・職種別に厚生労働省が定める一般賃金と同等以上とする旨の労使協定を派遣元で締結し、これを基準に派遣労働者の待遇を決定することとされています。労使協定では、基本給、賞与、手当、退職金等の賃金と、賃金以外の待遇(福利厚生、教育訓練)について定めます。
関連記事:『【同一労働同一賃金】労使協定方式を採用する場合の労使協定イメージが公開に|2020年派遣法改正』
派遣労使協定の更新に際し、見直すべきポイントは?
冒頭でも触れましたが、労使協定方式を選択した派遣元においては、労使協定の有効期限に応じて定期に更新が必要となります。労使協定の更新に際して、すべての派遣元で対応すべき事項は以下の通りです。
一般賃金水準は毎年変動
派遣労働者の賃金の検討の基準となる「地域指数」「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」は、毎年夏頃に厚生労働省より公開されます。2022年度の一般労働者の賃金水準については、すでに2021年8月6日に公開されています。「基準値」及び「基準値に能力・経験調整指数を乗じた値」「地域指数」について、前回締結した労使協定の数字から変更が生じていますので、2022年4月から適用される数字に修正しましょう。また、通勤手当相当額については2021年度「74円」だったものが2022年度は「71円」に下がる点にも注意します。
2022年度の一般労働者の賃金水準を元に、等級に応じた対象従業員の基本給、賞与及び手当の額を決定していきましょう。
参考:厚生労働省「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和4年度適用)」
「賃金構造基本統計調査」と「職業安定業務統計」のどちらを基準とすべき?
派遣労働者の賃金は、公開された局長通知の額を基準として定められますが、この局長通知には「賃金構造基本統計調査に基づく職種別賃金」と「職業安定業務統計に基づく職種別賃金」の2種類があります。どちらを基準とするかはすでに最初に労使協定を締結する際に検討されたかと思いますが、結論としてはどちらを採用しても問題ありません。賃金構造基本統計調査と職業安定業務統計では職種分類が異なるので、派遣労働者が従事する職種に応じてより適切なものを採用されるのが良いでしょう。ただし、印象としては、職業安定業務統計を採用する派遣元が多いように感じます。
「教育訓練」「福利厚生」に関わる情報を確認
労使協定方式を採用した派遣元に対して、派遣先は以下について情報提供を行い、協定対象派遣労働者にも実施、もしくは利用を許可しなければなりません。
- 業務遂行に必要な「教育訓練」
- 福利厚生のうち「給食施設」「休憩室」「更衣室」
これらの情報は通常、労働者派遣契約締結時に提供されますが、必要に応じて、派遣先に最新の内容を確認しておくと安心です。
関連記事:『【同一労働同一賃金】派遣労働者の福利厚生と教育訓練、労使協定方式でも「派遣先均等・均衡」が必要な項目とは?』
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