正しく対応できていますか?所定労働時間が日によって異なる労働者が有休を取得した場合の給与計算

ひと昔前までは、「有休って何となく取得しづらい」というお声を耳にすることが多かったのですが、近年の働き方改革を追い風に、状況がずいぶん変化してきているように感じられます。特に実感するのが、パート・アルバイトとして働く方の有休消化が進んでいることで、弊事務所へのお問い合わせが増加傾向にあります。
今号では、よくあるご質問のひとつである「所定労働時間が日によって異なる労働者の有休取得日の給与計算」を解説しましょう。

有給休暇日の賃金計算方法 3つのパターン

有給休暇を取得した際の賃金の計算方法は、労基法上、以下のうちいずれかとなります。

① 平均賃金
② 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③ 労使協定に基づく健康保険法上の標準報酬日額相当額をその日の所定労働時間数で割った額

① 平均賃金

原則として平均賃金は、事由の発生した日以前3ヶ月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(就労日数ではなく、暦日数)で除した金額です。ここでいう「事由の発生した日以前3ヶ月」とは、算定事由の発生した日(つまり有休取得日)は含まず、その前日からさかのぼって3ヶ月となります。賃金締切がある場合、締切日ごとに、通勤手当、皆勤手当、時間外手当など諸手当を含み、かつ、税金や社会保険料などを控除する前の賃金の総額により計算します。

例えば、「月末締め、翌月10日払い」の場合で、12月25日に有給を取得したい方の場合、原則的な平均賃金の計算式は以下の通りです。
(9月、10月、11月の労働分の賃金総額)÷(30日+31日+30日)

ただし、賃金が時間額や日額で決められており労働日数が少ない場合、暦日数を用いることで不当に少額となります。この場合、過去3ヶ月の賃金総額を実労働日数で除した額の6割に当たる額と比較し、高額となる方の額を適用します。(これを「最低保障額」といいます)
(9月、10月、11月の労働分の賃金総額)÷(8日+10日+12日)×0.6

② 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

所定労働時間とは、雇用契約書等に定められた労働時間のことです。こちらの方法で有休取得時の賃金日額を計算する場合、その日に通常どおり働いた場合の賃金がそのまま有休取得時にも適用されます。

例えば、時給制の労働者で所定労働時間が月曜~水曜日は8時間、土曜日は3時間の場合、月~水に有休を取得すると8時間分、土曜日に有休取得すると3時間分の時給を支払えば良いことになります。給与計算上、最もシンプルな方法です。

③ 労使協定に基づく健康保険法上の標準報酬日額相当額

労働者が健康保険被保険者であれば、標準報酬日額相当額を基準に、有休取得時の賃金を計算できます。標準報酬日額相当額とは、被保険者の等級に該当する標準報酬月額を30で割った数字のことです

東京都で2022年3月分から適用の健康保険・厚生年金保険 保険料額表によると、報酬月額12万5000円の場合、標準報酬月額は12万6000円ですから、これを30で割った「4,200円」が標準報酬日額相当額となり、有休取得時の賃金として考えることができます。
この場合、前述①②よりも額が少額となる可能性が高いため、③の方法を採用する際には労使協定の締結が必要です。

有休取得時の給与計算については、就業規則に定めが必要

有休取得時の給与計算について、会社は①~③のいずれかの方法を選択できますが、その方法は就業規則(給与規程)に定めておかなければなりません。日によって所定労働時間が異なる労働者の有給休暇取得に関しては、その事例が発生して初めて「どうしよう」と悩まれるケースを散見します。就業規則や給与規程にも、その定めがないことは少なくありません。賃金計算に関わる事項は就業規則の絶対的記載事項に該当しますので、正しく整備しておきましょう!

参考:厚生労働省「年次有給休暇のポイント

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