残業時間60時間を超えた分は50%割増になること知ってる?

平成31年4月1日から、中小企業(※1)における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予が廃止されます。平成22年の労働基準法改正で1ヶ月あたり60時間を超える時間外労働に対して5割の割増率で計算した割増賃金を支払うことが決定されましたが、中小企業は当面の間割り増し率の適用が猶予されていました。(労働基準法138条)平成26年8月ごろから猶予を見直しが検討されていましたが、平成31年の4月1日から割増賃金率の適用猶予の廃止が決定しました。いま中小企業の経営者が知っておくべきことをお伝えします。

60時間を超える残業をなくすために

改めて決定事項を整理したいと思います。そもそも平成22年の労働基準法改正にて以下が決定しました。

【平成22年 労働基準法改正】1ヶ月あたり60時間を超える時間外労働に対して50%の割増賃金を支払うこと

しかしながら、中小企業においては当面本件に関して猶予されておりました。つまり60時間を超えた分に対して50%の割増賃金を払っている会社は
少なかったのではないかと思います。

それが今回の決定により、平成31年4月からは【猶予期間】が終了し、中小企業においてもこの割増賃金の支払いが要求されることになります。
つまり「平成31年までに(あと2年間の間に)残業時間を60時間以内に抑えなさい」というメッセージと受け取って良いのではないかと思います。

今後はより残業時間に対する行政指導の強化が推進される

「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」の答申にて平成28年の4月から、健康確保のために時間外労働に対する指導が強化されると記載されています。 時間外労働に関する行政官庁の助言指導に当たり、「労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない」とされており、ますます社員の労働時間について配慮しなければならない状況となってきています。また、36協定の特別条項の限度時間が「月100時間」に達した場合に行う労働基準法の立入調査が「月80時間」まで引き下げられることも決まっています。

36協定の特別条項時間の上限が検討されている

政府は働き方改革実現会議にて、現在は事実上上限がない36協定の特別条項の上限時間を平均60時間とする方向で検討しています。繁忙期は月100時間、2か月で月平均80時間など、例外的な措置も含めて協議されている最中であり、明確なことは言えませんが、昨今の過労死問題や長時間労働問題などの事件をきっかけとして、過重労働問題に対する問題意識が政府、国民ともに高まっています。平成29.2.14時点での働き方改革実現会議において、長時間労働是正に向け、残業時間の上限を年720時間、月平均60時間とする事務局案を提示しました。繁忙期の時間外労働の上限を100時間まで認める案を検討してきましたが、労働側から長すぎるとの批判があり、今回は盛り込まれておりません。3月末までに実行計画をまとめる予定であるため、動きがあればまた追記します。また、残業時間の上限を月平均60時間、年720時間とすることを経営側が受け入れるという方針です。
【参考記事】労働基準法改正まであと2年!「残業時間100時間」が上限規制に?

労働基準法改正の方向性

【原則】
(1)36協定により、週40時間を超えて労働可能となる時間外労働時間の限度を月45時間、年360時間とする
※上限は法律に明記し、上限を上回る時間外労働をさせた場合には、次の特例の場合を除いて罰則を課す
【特例】
(2)臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない年間の時間外労働時間を1年720時間(月平均60時間)とする。
(3)(2)の1年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限上回ることのできない上限を設ける。
(4)月45時間を超えて時間外労働をさせる場合について、労働側のチェックを可能とするため、臨時的に特別な事情がある場合と労使が合意した労使協定を義務付ける。

<参考記事> 36協定とは?徹底的に解説しております(人事メディアへ)

まとめ

平成31年4月1日から中小企業において月60時間以上の残業時間の割り増し賃金率が引き上げられることで、残業時間を減らす余裕のない企業や労務を後回しにしている企業は残業代を支払わないこと・サービス残業をさせてしまうといった対応をしてしまいがちです。このとき、労働基準監督署の立入調査を受け未払い賃金の支払いを命じられることや、ハローワークにて求人受付を拒否されること等リスクは残業代を支払った総額より大きくなるでしょう。先手を打って対策をしリスクが現実となる前に法改正でも揺らがない体制の構築をするタイミングがきているのではないでしょうか。

※中小企業とは
資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については5000万円,卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主、及びその常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人,卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主をいう。

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