労務トラブルの元「割増賃金」をしっかり理解できていますか?

割増賃金(いわゆる残業代)は、一定の場合にきちんと支払わなければならないものですが、会社側でも曖昧な理解のままで対応して、本来払うべき割増賃金がきちんと支払えていないケースもあると思います。割増賃金の未払いは、従業員とのトラブルの原因になり、トラブルが悪化すれば、未払い請求など会社の規模によっては経営を圧迫する要因にもなります。

会社としてこうした問題にきちんと向き合うために、今回から数回にわたり、割増賃金の基本について解説していきます。まずは基本をしっかり押さえ、将来のトラブルを未然に防ぐために役立ててもらえればと思います。

割増賃金の支払義務

会社は、従業員に残業や休日出勤をさせた場合に、割増賃金を支払わなくてはなりません。残業には、「法定内残業」と「法定外残業」とがあります。法定労働時間内に収まるものが「法定内残業」、法定労働時間を超えるものが「法定外残業」(以下は、『(法定)時間外労働』と呼びます)です。

また、休日には「法定休日」と「法定外休日」とがあり、労働基準法(以下、労基法)で義務付けられた1週1日ないし4週4日の休日を「法定休日」、それ以外の休日を「法定外休日」となります。「法定休日」の労働が「休日労働」になります。

会社が、従業員に(法定)時間外労働や休日労働をさせる場合、36協定を労働基準監督署長に届出し、かつ一定の割増賃金を支払わなくてはならないのです。

割増賃金の種類

ここでは、具体的な事例をもとに、割増賃金について整理してみます。

  • 一日の所定労働時間が5時間(9:00~17:30就業)、土日休み(法定休日は日曜日)の場合を想定

① 法定内残業時間に対する賃金の支払い

所定労働時間(図の黄色部分)を超え、法定労働時間(週40時間、1日8時間)に収まる時間(図の青色部分)は法定内残業にあたるので、割増こそ必要ありませんが(※)、この時間に相当する賃金の支払が必要です。

法定内労働に対する割増賃金: 法定内残業時間 × 1時間あたりの単価(円)

※就業規則等で割増賃金を支払うとしている場合もあります

② 時間外労働時間に対する割増賃金

法定労働時間(週40時間、1日8時間)を超える時間(図の赤色部分)には、通常の賃金の25%以上の割増賃金の支払が必要です(※)。

時間外労働に対する割増賃金: (法定)時間外労働時間 × 1時間あたりの単価(円) × 1.25

※一ヶ月の時間外労働が60時間を超えた場合は、超えた部分について50%以上の割増が必要です(平成31年4月1日からは、中小企業にも適用になります!

③ 休日労働に対する割増賃金

法定休日(労基法が定める週1日or4週4日の休日)の労働(図の緑色部分)には、通常の賃金の35%以上の割増賃金の支払が必要です。

休日労働に対する割増賃金: 休日労働時間(※) × 1時間あたりの単価(円) × 1.35 

※法定休日以外の休日(法定外休日:この例では土曜日)の労働は、「休日労働」にはあたりませんが、(法定)時間外労働に該当する場合は、②の時間外労働に対する割増賃金の支払が必要です

④ 深夜労働に対する割増賃金

深夜時間(22:00~翌日5:00の時間帯)の労働(図の紺色部分)には、通常の賃金の25%以上の割増賃金の支払が必要です。

深夜労働に対する割増賃金: 深夜労働時間 × 1時間あたりの単価(円) × 0.25

 割増が重複する場合

時間外労働や深夜労働が重なることで、割増賃金が重複することがあります。

図でいえば、火曜日は時間外労働が深夜時間に及んでいて、重なる時間帯(22:00~24:00)には、50%(時間外労働25%+深夜労働25%)以上の割増賃金の支払が必要になります。

休日労働は時間外労働とは別の概念で、法定休日の労働時間が8時間を超えても割増率は35%のままですが、休日労働が深夜に及んだ場合には、割増率は60%(休日労働35%、深夜労働25%)以上となります。

以下で、割増率を整理しておきます。

※一ヶ月の時間外労働が60時間超の場合、超えた部分は50%以上の割増が必要です

以上の割増率について押さえた上で、本来支払うべき割増賃金が正しく支払われているかをチェックしてみましょう。

割増賃金を計算する上では、他にも上記の計算式に出てきた「1時間あたりの単価」を出す上でのいくつかの考え方(単価算出の基礎となる賃金に含めない賃金を除外する、賃金月額(日額)を割る所定労働時間数の導き方など)を押さえる必要がありますし、残業時間の端数処理の方法についても知っておく必要があります。そのあたりは次回以降にあらためて触れていきます。

正しい理解で割増賃金を支払っていくために、割増賃金についての知識をしっかり身につけ、さらに足元の時間管理もしっかりやらなきゃ!と今すぐ思った即断即決型のあなたへ

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社労士法人 人事部サポートSR

全員が企業人事部経験者の人事コンサルティングファーム 豊富な実績と経験から「労務顧問」「給与計算」「社会保険手続き」「助成金申請代行」をはじめ日本の課題である「長時間労働の是正」や「残業代削減」など仕組みを構築し、労働基準法に則った対応は専門家にしかできない領域のためお任せください。