働き方改革の中で推進される副業・兼業は、ひと昔前まではご法度でしたが、ウィズコロナ時代の働き方としても注目され、今では一般的な働き方として定着しつつあるかと思います。
副業・兼業を導入に際し、注意しなければならないのが、労働時間管理と割増賃金についてです。今号では、副業・兼業の労働時間管理や残業時間の考え方を解説していきます。
目次
副業・兼業の場合、割増賃金はどの会社が払う?
労働基準法第38条第1項及び通達から後から雇用契約を締結した会社が割増賃金を支払うべきと考えられています。
契約の締結は問題ありませんが、他の事業場での勤務実態を労働者の申告により把握し、業務に支障をきたさないこと、健康管理に努めること、休日の確保と勤務時間を短くする等の過重労働防止策を講ずることが重要になります。
副業・兼業の場合における労働時間管理等についてルールを明確化
「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日)の中で、複数の事業所で働く方の保護等の観点や副業・兼業を普及促進させる観点から、労働時間管理及び健康管理の在り方等について、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会、及び安全衛生分科会において、副業・兼業における労働時間管理・健康管理について検討を行ってきました。9月1日に発表された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和2年9月1日改定版)において、副業・兼業の場合における労働時間管理及び健康管理についてルールが明確化されています。
厚生労働省:「副業・兼業の促進に関するガイドライン <概要>」
労働者が事業主を異にする複数の事業場で労働する場合には、労働基準法第38条第1項に基づき、労働時間を通算して管理することが必要であることとされており、通達(昭和23年10月14日 基収2117号)によって法定時間外に使用した事業主が法第37条に基づき、割増賃金を支払わなければならないとされています。ガイドラインではこれに加えて残業時間の上限規制を踏まえたうえでの「管理モデル」を示しています。
また、使用者、労働者ともに
- 安全配慮義務
- 秘密保持義務
- 競業避止義務
- 誠実義務
に留意する必要があるとも示されています。
労務管理が現状とマッチしているか見直し、再構築する機会です。
兼業や副業が促進されていますが、雇い入れた人がどの程度の時間、他社で働いているのか実態を事前に把握することは容易ではないでしょう。入社時に「扶養控除申告書」の提出がない場合や「二以上事業所選択届」を届出するなど、入社時点で副業しているか否かの判断材料はあります。入社書類として「副業の申告」の提出を求めると管理がしやすくなるかもしれません。とはいえ、あくまでも本人の申告が実態把握のベースとなりますので、実情と乖離する可能性は少なからずあるでしょう。
健康診断やストレスチェックの結果などの確認はもちろんのことですが、日常の健康状態や勤務状況などは現場で共に働く上長に常日頃から確認し、状況に変化があった際に即時に対応できる体制にしておく必要があります。
今後、働き方の多様性は加速・複雑化していくことが予想されます。現在の労務管理体制が、そのような多様性に耐えうるかどうかを検証し、人事制度や就業規則などの見直しも図る時期がきていることを認識しましょう。
困ったら専門家に相談することを検討
労務関係や助成金のことで、困ったことや具体的に聞きたいことがあれば社会保険労務士に相談してみるのも一つの方法です。
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