新型コロナウイルス感染症の影響に鑑み、従業員を休業させて給与が下がった場合、休業開始月の翌月から社会保険料の改定ができる措置が講じられています。現在の特例改定は、2020年4月~7月までの間に休業により報酬等が急減した場合、その翌月の2020年5月~8月分の保険料に適用されるものですが、このたび対象期間が延長されて2020年12月休業まで適用となりました。概要を確認しましょう。
参考:打刻ファースト「【新型コロナウイルス】休業による収入減の場合、休業開始翌月から標準報酬月額の変更ができる「特例改定」が創設!算定等への影響は?」
目次
「標準報酬月額の特例改定」とは?
今回期間延長が決定された「標準報酬月額の特例改定」とは、新型コロナウイルス感染症の影響による休業で給与額が2等級以上下がった従業員について、事業主からの届出により、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、通常の随時改定(4か月目に改定)によらず、特例により翌月から改定を可能としたものです。
この特例改定は、冒頭の通り「2020年4月~7月の間の休業に対し、その翌月の2020年5月~8月分の保険料に適用する」というものでしたが、このたび新たに2種類の特例が設けられました。
① 2020年8月から12月までの間に新たに休業により報酬が著しく下がった方の特例
こちらは従来、7月までの休業に対してその翌月(8月)からの保険料改定とされていたものがそのまま延長され、2020年8月~12月の休業分について2020年9月~2021年1月の保険料に適用されるイメージです。
対象となる要件は以下の通りで、急減月の翌月から標準報酬月額及び保険料が改定されます。
ア.新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、2020年8月から12月までの間に、報酬が著しく下がった月が生じた方
イ.著しく報酬が下がった月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方(固定的賃金の変動がない場合も対象となります)
ウ.本特例措置による改定内容に本人が書面により同意している
② 2020年4月または5月に休業により著しく報酬が下がり特例改定を受けている方の特例
こちらは、4月または5月に給与が著しく下がったことを受け、従来の特例改定を利用して5月または6月から標準報酬月額が引き下げとなった場合に適用されます。このとき、特例改定で下がった保険料の適用を受けるのは8月分までとなり、毎年4月~6月に支払われた給与を基準とした算定基礎(定時決定)が優先されることになります。この場合、3月労働分(4月支払)の給与が高額だったケース等で、実際の収入に対して9月以降の標準報酬月額及び保険料が高額になる可能性が生じてしまいます。もしくは、8月の給与がより一層低額となるケースにも問題が発生します。
このような場合を想定し、算定基礎に関わらず、実際の給与額に応じた標準報酬月額を迅速に算出できる様、下記に該当する方を対象として、8月支払分の給与を基礎として算定した標準報酬月額により定時決定の保険者算定が可能となる制度が設けられました。
ア.新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、2020年4月または5月に報酬が著しく下がり、5月または6月に特例改定を受けた方
イ.8月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、9月の定時決定で決定された標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方
ウ.本特例改定による改定内容に本人が書面により同意している
以上、出典:日本年金機構「【事業主の皆さまへ】新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合における標準報酬月額の特例改定の延長等のご案内」
特例改定後、休業が回復して給与額が通常に戻った場合の取扱い
標準報酬月額の特例改定適用後、休業期間を終えたことに伴い給与も通常通りとなった場合の手続きについては、「いつの段階で特例改定が講じられたか」によって異なりますので注意が必要です。
○ 従来の特例措置の場合(2020年4月~7月の休業について適用)
休業が回復した月から継続した3か月間の報酬による標準報酬月額が2等級以上上昇する場合、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、月額変更届を届出(従来の随時変更の手続き)
○ 特例措置の延長の場合(今号で解説した①②)
休業が回復した月に受けた報酬の総額を基にした標準報酬月額が、特例改定により決定した標準報酬月額と比較して2等級以上上がった場合、その翌月から標準報酬月額改定とするために月額変更届を届出(1か月の報酬のみで手続き)
標準報酬月額の特例改定はこのたびさらに延長措置が講じられ、ますます複雑化しています。対象者の絞り込みや手続きに関して等のご質問は、社会保険労務士までお気軽にお問い合わせください!