障がい者雇用率制度の対象となる障がい者は、現状、「週20時間以上」勤務する者に限定されています。ところが2024年4月1日以降、週10時間以上20時間未満勤務の障がい者についても、障がいの状態に応じて、実雇用率において算定できる改正法が施行されることになりました。同じく2024年度からいよいよ引き上げとなる障がい者法定雇用率を踏まえ、新たに雇用義務の対象となる障がい者の範囲を確認しましょう。
目次
2024年度より障がい者雇用率の算定に含められる「週10時間以上20時間未満勤務の短時間労働者」とは?
障がい者雇用促進法上、障がい者の職業的自立促進の趣旨から、一定規模以上の企業には「週所定労働時間20時間以上の労働者」について雇用義務が課せられています。その一方で、障がい者の中には、障がい特性により⾧時間の就労が困難で、週20時間以上の勤務を希望したくてもできない状況にある方の存在が問題視されていました。
週10時間以上20時間未満勤務の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者は「0.5人」カウントに
こうした背景を踏まえ、政府は、障がい者雇用率制度における雇用義務対象を拡大する方針で議論を重ねてきましたが、ついに2023年末の臨時国会にて可決しました。2024年度以降、週所定労働時間10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者について、事業主が雇用した場合、雇用率において「0.5人」として算定できるようになります。
本改正により、2024年4月1日以降、障がい者雇用率制度における算定方法は以下の通りとなり、下図の赤枠部分が新たに追加されることになります。
出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案の概要」
上図の※印は、原則として「0.5人」とみなされる週20時間以上30時間未満勤務の精神障がい者について、以下①②のいずれも満たす方を「1人」としてカウントする特例措置を表しています。
① 新規雇入れから3年以内の方、又は精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方
② 2023年3月31日までに、雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した方
現状、2022年度末までの予定ですが、省令改正により延長が予定されています。
身体障がい者、知的障がい者に係る「重度」の定義
ちなみに、週10時間以上20時間未満の短時間労働者を「0.5人」としてカウントできるのは、身体障がい者及び知的障がい者のうち障がいの程度が「重度」である方のみです。この場合の「重度」の定義は以下の通りで、前号で解説した週20時間以上30時間未満のダブルカウントのケースと同様となります。
- 身体障がい者のうち、等級が1級または2級に該当する方
- 知的障がい者のうち、等級がA(自治体によっては1度及び2度、もしくは等級Aに相当する判定書を受けている)に該当する方
なお、精神障がい者については、障がいの程度に関わらず、週10時間以上20時間未満の労働者を「0.5人」として算定します。
短時間労働者に対する実雇用率算定に伴い、特例給付金は廃止されます
2024年4月1日より、週10時間以上20時間未満の短時間労働者を障がい者実雇用率の算定対象に含めることを受け、週20時間未満の雇用障がい者数に応じて支給されていた特例給付金は廃止されます。
特例給付金制度は、法定雇用率の算定対象(週20時間以上)とならない、週10時間以上20時間未満で就労する障がい者の雇用を進める事業主に対し、従業員数に応じた支給額を上限の範囲内で支給するものです。
参考:厚生労働省「特例給付金の支給要件等について」
2023年度中に、障がい者雇用への準備を始めましょう
障がい者法定雇用率の段階的引き上げ方針を受け、これまで3号に渡り、障がい者雇用率制度の基本や改正点を解説してまいりました。2024年度以降、障がい者法定雇用の義務対象となる企業の範囲が拡大する予定ですので、早期に準備を進めてまいりましょう。
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