同一労働同一賃金ガイドライン見直し案を確認!近年の最高裁判決を踏まえた追記をチェック

2022年4月1日の同一労働同一賃金施行から5年が経過し、働き方改革関連法における5年後見直し規定に従い、ガイドラインの見直しが進められています。このたび公表された見直し案では、近年の最高裁判決を踏まえ、退職手当を始めとする各種手当・福利厚生の見直し、ガイドラインの基本的な考え方の明確化等が盛り込まれています。今号では、各種手当・福利厚生に関わる追記事項を確認しましょう。

同一労働同一賃金ガイドライン見直し案から、退職手当など6項目の手当・福利厚生に係る規定を把握

現場における同一労働同一賃金への対応では、「各手当の適用を具体的にどうするか」が問題になりがちです。こうした実情を踏まえ、このたびのガイドライン見直しでは退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、夏季冬季休暇、褒賞に係る条文が新設される予定です。各項目について、条文の概要を解説します。

新設される予定の条文

<退職手当>※メトロコマース事件最高裁判決を踏まえた追記

  • 退職手当は、労務の対価の後払い、功労報償等の様々な性質及び目的が含まれるものです。
  • 短時間・有期雇用労働者に対し、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的があるにもかかわらず、以下の取扱いをしている場合には、当該退職手当の相違は不合理と認められる可能性があります。
    *通常労働者との間で違いに応じた均衡のとれた内容の退職手当を支給しないかつ
    *その見合いとして、労使交渉を経て、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当しない他の短時間・有期雇用労働者に比べ基本給を高く支給している等の事情もない

<無事故手当>※ハマキョウレックス事件最高裁判決を踏まえた追記

  • 通常の労働者と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の無事故手当を支給しなければなりません。

<家族手当>※日本郵便(大阪)事件最高裁判決を踏まえた追記

  • 労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければなりません。
  • 配偶者の収入要件があるいわゆる「配偶者手当」については、特に女性の短時間労働者の就業調整の要因となっているとの指摘を踏まえ、各事業主において、労使の話合いによって、働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれます。見直しの際には、以下の資料が参考になります。

参考:厚生労働省「企業の配偶者手当の在り方の検討

<住宅手当>※ハマキョウレックス事件最高裁判決等を踏まえた追記

  • 住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについて、通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給しなければなりません。
  • なお、こうした取扱いの妥当性は名目上ではなく、「実態」によって判断されます。
    × 問題となる例
    A社においては、転居を伴う配置の変更が見込まれることを理由として、通常の労働者であるXに対し、住宅手当を支給しており、当該変更が見込まれないことを理由として、有期雇用労働者であるYには住宅手当を支給していないが、A社では実態として通常の労働者に対しても、転居を伴う配置の変更を命じていない。
  • 住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無にかかわらず支給されるものについても、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはなりません。
    例えば、従業員に対する福利厚生及び生活保障の趣旨で支給されるものである場合、使用者はこの趣旨に照らして、労働者の生活に関する諸事情を考慮した上で支給の有無や内容を検討する必要があります。

<夏季冬季休暇>※日本郵便(佐賀)事件最高裁判決を踏まえた追記

  • 短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与しなければなりません。
    × 問題となる例
    A社においては、繁忙期に限定された短期間の勤務ではない有期雇用労働者であるXに対し、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与していない。

<褒賞>※メトロコマース事件高裁判決を踏まえた追記

  • 褒賞であって、一定の期間勤続した労働者に付与するものについて、通常の労働者と同一の期間勤続した短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の褒賞を付与しなければならない。

近年の最高裁判決のポイントは、以下よりご確認いただけます。
参考:厚生労働省「第23回労働政策審議会 職業安定分科会 雇用環境・均等分科会 同一労働同一賃金部会_資料3 論点(案)に関する追加資料

新たに示された同一労働同一賃金案を踏まえ、専門家と共に「不合理な待遇差」の見直しを

同一労働同一賃金の考え方については、施行から5年が経過し、企業においてだいぶ浸透してきたものと思われます。同一労働同一賃金に関わる基本的な考え方はガイドラインによってずいぶん具体的にされていますが、一方で、実務上は個別具体的な事例に関わる判断が求められるために、担当者が頭を悩ませる場面は少なくありません。今回ご紹介した案を元に、今後新たな同一労働同一賃金ガイドラインが公開され、現場ではまた一歩進んだ対応が求められることになるでしょう。労務管理の専門家である社会保険労務士にご相談いただきながら、改めて社内の「不合理な待遇差」を確認・是正してまいりましょう。

参考:厚生労働省「第27回労働政策審議会 職業安定分科会 雇用環境・均等分科会 同一労働同一賃金部会_資料3 同一労働同一賃金ガイドライン 見直し(案)

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