50人以上規模の事業場に設置義務のある衛生委員会、一定の要件を満たせば「メール開催」も可能に

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、毎月開催しなければならない衛生委員会。この開催については対面の他、映像・音声によりリアルタイムで意見交換が可能な形での実施が推奨されていますが、2020年8月27日発出の通達にて一定の要件を満たした場合は「電子メールによる開催」についても認められることとなりました。
感染症対策や働き方改革の一環として、新たな形での衛生委員会開催を導入されてみてはいかがでしょうか?

衛生委員会、安全委員会、安全衛生委員会とは?

対面以外での衛生委員会の開催ルールを解説する前に、まずは衛生委員会について復習しておきましょう。
衛生委員会とは、労働者の健康障害防止や健康保持増進に関わる重要事項や取り組みについて、労使が調査審議を行う場です。労働者数50人以上規模の事業場では、業種を問わず、毎月1回以上開催する義務があります。衛生委員会で話し合われた内容は、掲示や書面、イントラネット等で労働者に周知しなければなりません。

衛生委員会の構成員

衛生委員会は、以下の委員によって開催されます。

■会社側
・委員長(議長):統括安全衛生管理者又は事業の実務を統括する者もしくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
・衛生管理者
・産業医
・当該事業場の労働衛生業務の経験者:人事担当者等

■労働者側
・労働組合の職員や人事部門以外の部署で職場の意見を反映できる立場の者

業種や従業員数によっては、衛生委員会と併せて「安全委員会」の開催も必要に

衛生委員会の他、安全委員会を設けなければならない事業場もあります。衛生委員会と安全委員会の両方を設置すべき事業場では、両者を併せて「安全衛生委員会」として開催するのが一般的です。

■衛生委員会
50人以上規模の全業種

■安全委員会
50人以上規模の林業、鉱業、建設業、製造業のうち木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業及び輸送用機械器具製造業、運送業のうち道路貨物運送業及び港湾運送業、自動車整備業、機械修理業並びに清掃業
100人以上規模の運送業(上記業種を除く。)、製造業(物の加工を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業

衛生委員会や安全衛生委員会の設置義務があるにもかかわらず、対応できていない事業場は多々見受けられます。改めて設置義務の要件を確認の上、各現場において適切に対応できるようにしましょう。

衛生委員会等をオンラインやメールで開催する際の留意点

さて、冒頭でも触れましたが、昨今のデジタル技術の進展を背景に、衛生委員会等は対面での会議形式の他、オンラインやメールでの開催が幅広く認められることとなりました。ただし、情報通信機器を用いた開催に際しては、以下の留意事項に配慮する必要があります。

■安全委員会等の開催に用いる情報通信機器について、次のアからウまでの要件を全て満たすこと
ア 安全委員会等を構成する委員(以下「委員」という。)が容易に利用できること
イ 映像、音声等の送受信が常時安定しており、委員相互の意見交換等を円滑に実施することが可能なもので
あること
ウ 取り扱う個人情報の外部への情報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止の措置が講じられていること

■安全委員会等の運営について、次のア又はイのいずれかの要件を満たすこと
ア 対面により安全委員会等を開催する場合と同様に、情報通信機器を用いた安全委員会等において、委員相互の円滑な意見交換等が即時に行われ、必要な事項についての調査審議が尽くされていること
なお、音声通信による開催やチャット機能を用いた意見交換等による開催については、調査審議に必要な資料が確認でき、委員相互の円滑な意見交換等及び必要な事項についての十分な調査審議が可能であること

イ 情報通信機器を用いた安全委員会等はアによって開催することを原則とするが、委員相互の円滑な意見交換等及び必要な事項についての十分な調査審議が可能となるよう、開催期間、各委員への資料の共有方法及び意見の表明方法、委員相互で異なる意見が提出された場合の調整方法、調査審議の結果を踏まえて事業者に対して述べる意見の調整方法等について次の(ア)から(エ)までに掲げる事項に留意の上、予め安全委員会等で定められている場合は、電子メール等を活用した即時性のない方法により開催することとして差し支えないこと
(ア)資料の送付等から委員が意見を検討するための十分な期間を設けること
(イ)委員からの質問や意見が速やかに他の委員に共有され、委員間で意見の交換等を円滑に行うことができること。その際、十分な調査審議が可能となるよう、委員全員が質問や意見の内容を含む議論の経緯を確認できるようにすること
(ウ)委員からの意見表明等がない場合、当該委員に対し、資料の確認状況及び意見提出の意思を確認すること
(エ)電子メール等により多数の委員から異なる意見が提出された場合等には委員相互の意見の調整が煩雑となることから、各委員から提出された意見の調整に必要な連絡等を行う担当者を予め定める等、調査審議に支障を来すことがないようにすること

出典:山梨労働局「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第17条、第18条及び第19条の規定に基づく安全委員会等の開催について

いずれの方法で衛生委員会等を開催するにせよ、委員があらかじめ議題について十分に検討した上で、意見交換、適切な方法で委員間での調査審議、意見の調整が行われる様に配慮しなければなりません。また、電磁的記録により議事の記録・保存をする場合には、「労働基準局所管法令の規定に基づく書類について、労働基準監督官等の臨検時等、保存文書の閲覧、提出等が必要とされる場合に、直ちに必要事項が明らかにされ、かつ、写しを提出し得るシステムとなっていることが必要であること」とされている点にも注意しましょう。

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