働き方改革を背景に注目される、職場におけるAIの活用。
少子高齢化の進展に伴う労働人口減少への対応が急務となる中、AI導入・活用による生産性向上を実現することが、現場の労働力不足や労働時間の長時間化等の課題解消につながるものと見込まれています。
一方で、実態としてAIに対する知識不足から積極的な導入がはばかられる、有効活用できていない等の事例は決して珍しいものではありません。
今号では、職場におけるAI導入・活用のポイントについて、政府資料を元に解説することにしましょう。
参考:労働政策審議会(労働政策基本部会)「労働政策審議会労働政策基本部会 報告書 ~働く人が AI 等の新技術を主体的に活かし、豊かな将来を実現するために~」
求められるのは、「適材適所なAI導入」
ひと口に「AI」といってもその種類は実に多様です。
AIに関わるノウハウが蓄積されておらず、さらに導入後のビジネスモデルも明確でない企業では、見切り発車でAI導入に乗り出したとしても、せっかくの投資が有効に活かされない可能性が高いと言えます。
職場におけるAIの導入・活用を進める上では、まず自社の課題を的確に把握し、その分野で開発が進むAIに関わる知識を深めた上で、適切なものを選定できるようにするのが得策です。
以下は、AI導入の具体事例です。
・事務職:RPA により、事務従事者の作業量を削減し、時期的な繁忙の平準化の他、単純反復作業からの解放、人為的なミスの削減も実現
・介護職:介護ロボットにより、サービス内容の改善を図りつつ、労働者の身体的・精神的な負担を軽減し、体力面での制約が大きい高齢者も介護分野で一層活躍することが可能
さらに、自動運転者の設計・製造については現在開発が進められているところですが、自動運転技術により、ヒューマンエラーによる交通事故を減少させるとともに、ドライバーの負荷の低減など労働環境を改善することが期待されています。
AI の活用による労働関連課題への対応は、着実に進みつつあることが分かります。
人間の仕事がAIに取って代わられるわけではない
さて、AIの導入に伴い懸念されることと言えば、「人間がAIに取って代わられるのではないか」という脅威です。
確かに、AIを積極的に活用することで、従来の業務については見直しや再設計が必要となるでしょう。
その時点で仕事を失うことになる労働者も、少なからず生じるものと予想されます。
ここで重要になってくるのは、「従業員教育」です。
今後AIが担うこととなる業務に従事していた人材について、いかに新たな可能性を見出し、付加価値を提供できる存在として育て上げることができるかが重要になるでしょう。
具体的には、「AIとの協業」を前提として、人間側がAIを使いこなす能力、さらには人間らしい又は人間にしかできない業務に求められるスキルを高めていくこと等が挙げられます。
つまり、AI時代の到来に伴って重要になってくるのは、企業の「経営・人事戦略」です。
そういった意味で、現場においては今後より一層、トップの経営手腕が問われることになりそうです。
AI導入に伴い、現場で対応すべき課題とは
働く現場で AI 等が適切に活用されるための課題について、労働政策審議会労働政策基本部会の報告書では、下記の通りまとめられています。
AI導入を具体的に考える上で重要な視点となりますので、ぜひご確認ください。
✓ 労働者のプライバシーの保護や情報セキュリティの確保
✓ AI による判断に関する企業の責任・倫理
✓ 円滑な労働移動の実現や新しい働き方への対応
✓ AI 等がもたらす時代の変化を見据えた政労使のコミュニケーションの重要性
各項目の詳細については、報告書よりご確認いただけます。
参考:労働政策審議会(労働政策基本部会)「労働政策審議会労働政策基本部会 報告書 ~働く人が AI 等の新技術を主体的に活かし、豊かな将来を実現するために~」
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AI導入は、特に人手不足による影響を受けやすい中小企業や地方企業において、働き方改革実現のカギを握ります。
まずは知識を深め、御社における活用の可能性を考えてみましょう。