障がい者雇用率が段階的引き上げの方針!2024年度から義務化対象となる「常用雇用40人以上」の考え方

民間企業における障がい者雇用率は、現状「2.3%」となっており、43.5人の常用雇用労働者数に対して障がい者1人以上を雇用する義務があります。この点、2023年1月18日開催の労働政策審議会障がい者雇用分科会において、障がい者法定雇用率の段階的な引き上げに関わる具体的な数字が示されました。今号では、障がい者の法定雇用義務を考える上での基準となる、「常用雇用労働者数」について解説しましょう。

障がい者法定雇用率は2024年度から「2.5%」、さらに2026年度以降は「2.7%」へ

同資料によれば、現状「2.3%」の障がい者法定雇用率は、2023年度から「2.7%」とするとされています。ただし、民間企業において雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、2023年度においては2.3%で据え置き、2024年度から2.5%、2026年度から2.7%と段階的に引き上げる方針が示されています

これらの障がい者法定雇用率から、義務化の対象企業がどのように広がっていくかを具体的に考えてみると、以下の通りとなります。

  • 2023年度 常用雇用労働者数43.5人以上の企業
  • 2024年度 常用雇用労働者数40人以上の企業
  • 2026年度 常用雇用労働者数37.5人以上の企業

これを踏まえ、今後新たに対象となる企業においては、障がい者の雇い入れに向けて準備を進めていくことになります。

対象企業の基準となる「常用雇用労働者」の考え方

障がい者雇用促進法上の「常用雇用労働者」とは、雇用契約の形式如何を問わず、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者であって、次のように1年を超えて雇用される者(見込みを含む)をいいます。1週間の所定労働時間が20時間未満の方については、障害者雇用率制度上の常用雇用労働者の範囲には含まれません。

① 雇用期間の定めのない労働者
② 1年を超える雇用期間を定めて雇用されている者
③ 一定期間(1ヶ月、6ヶ月等)を定めて雇用される者であり、かつ、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者、または雇入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者(1年以下の期間を定めて雇用される場合であっても、更新の可能性がある限り、該当する。)
④ 日々雇用される者であって、雇用契約が日々更新されている者であり、かつ、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者または雇入れの時から1年を越えて引き続き雇用されると見込まれる者

20時間以上30時間未満の短時間労働者は「0.5人」カウント

ただし、週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者に関しては、常用雇用労働者数の算定上、1人あたり「0.5人」カウントとなります。そしてもちろん、前述の通り、週所定労働時間20時間未満の労働者については算入しません
つまり、前述①~④に該当する労働者が40人以上であったとしても、短時間労働者の多い企業においては2024年度からの障がい者法定雇用義務化の対象とならないケースもあります。

具体例で考えてみると、分かりやすいでしょう。

  • 全従業員数 60人
    うち、週所定労働時間30時間以上       30人 → 30人カウント
    週所定労働時間20時間以上30時間未満     18人 →  9人カウント(18 ×0.5)
    週所定労働時間20時間未満          12人 →  0人カウント(算入せず)

このケースでは、障がい者雇用促進法上の常用雇用労働者数は「39人」であり、2024年度から義務化対象となる「40人」以上規模未満となります。
念のため、法定雇用障がい者数算定の計算式(※)に当てはめて考えてみると・・・

 ※法定雇用障がい者数=(週30時間以上勤務の労働者数+週20時間以上30時間未満勤務の労働者数×0.5)×障がい者法定雇用率(2024年度から2.5%)
このケースでは、(30+18×0.5)×2.5%=0.975
小数点以下の端数は切り捨てとなるので「0人」であることが分かります。

特殊なケースに該当する労働者の考え方

また、出向中や休職中等、特殊なケースに該当する労働者に関しては、以下の通りの取扱いとなります。該当者のいる現場においては留意しましょう。

  • 「出向中」の労働者
    原則として、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける事業主の労働者として取り扱います。なお、いずれの事業主の労働者として取り扱うかについては、雇用保険の取扱を行っている事業主の労働者として取り扱って差し支えありません。
  • 「休業中」の労働者(育児休業中を含む。)
    現実かつ具体的な労務の提供がなく、そのため給与の支払いを受けていない場合もありますが、事業主との労働契約関係は維持されているので、常用労働者に含まれます。
  • 外国にある支社、支店、出張所等に勤務している労働者
    日本国内の事業所から派遣されている場合に限り、その事業主の雇用する労働者とします。したがって、現地で採用している労働者は含みません。
  • 生命保険会社の外務員等
    雇用保険の被保険者として取り扱われているかどうかによって判断してください。
  • いわゆる登録型の派遣労働者
    契約期間の多少の日数の隔たりがあっても、同一派遣元事業主と雇用契約を更新又は再契約して引き続き雇用されることが常態となっている場合には、常用労働者に含まれる場合があります。具体的な基準は、以下の通りです。
    ① 雇用されている期間が年間328日を超えていること
    ② 雇用契約の終了から次の雇用契約の締結までの間隔が、おおむね3日以下であること
    ③ 雇用契約期間中に離職や解雇がないこと
    ④ 1週間の所定労働時間が20時間以上であること

障がい者法定雇用率の引き上げに向け、「常用雇用労働者」を正しく捉えましょう

障がい者雇用促進法上の「常用雇用労働者数」は、今号で解説したように「自社が障がい者の法定雇用義務を負うかどうか」の判断の際にはもちろんですが、対象企業に該当した際に雇入れるべき障がい者数の算定にも大いに影響する数字です。今後、段階的に引き上げとなる障がい者法定雇用率への適切な対応に向け、まずは「常用雇用労働者」を正しく理解しておきましょう。

参考:厚生労働省「第123回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料)

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