異次元の少子化対策が盛り込まれた「こども未来戦略方針」案が公開!企業は育児期の労働者をどう支援すべき?

打刻ファーストの別記事にて解説した「三位一体の労働改革の指針」に引き続き、今後の労務管理に大きな影響を及ぼし得る方針案が、政府より公開されました。今号では、2023年6月1日に開催されたこども未来戦略会議で示された「こども未来戦略方針」案から、企業がおさえておくべきポイントを確認しましょう。

「少子化対策」と「人事労務管理」との関係性とは?

日本における少子化は、加速の一途を辿っています。2022年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)は1.26となり、2005年と並び過去最低を記録したとのこと。今後、若年人口が急激に減少する2030年代を迎えるまでに状況が改善されなければ、もはや人口減少を食い止めることは不可能と言っても過言ではなく、深刻さを増しているようです。政府は少子化を食い止めるべく、あらゆる議論を尽くし、今後の取り組みの方向性を「こども未来戦略方針」案にまとめました。

こども・子育て政策の課題に挙げられた「子育てと両立しにくい職場環境」

「こども未来戦略方針」案では、日本における少子化傾向を深刻化させる課題として以下3点を挙げています。

〇 若い世代が結婚・子育ての将来の展望が描けない
〇 子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境がある
〇 子育ての経済的・精神的負担感や子育て世帯の不公平感が存在する

これらのうち、企業が着目すべきは「子育てと両立しにくい職場環境」という課題です。少子化対策と働き方の改善は密接に関わり合っていることを踏まえ、今後、現場においては政府の方針に従い、取り組みを進めていく必要があります。今回公開された方針案において、既存制度の改正や新たな制度創設に関わる予定が示されていますので、現段階では概要を理解しておきましょう。

「共働き・共育ての推進」に向けた企業対応の方針

「こども未来戦略方針」案より、人事労務管理に関連して企業がおさえるべきポイントを抜粋します

◎ 男性育休の取得促進

  • 男性の育児休業取得率の目標引き上げ
    2025 年 公務員 85%(1週間以上の取得率)、民間 50%
    2030 年 公務員 85%(2週間以上の取得率)、民間 85%
  • 2025 年3月末で失効する次世代育成支援対策推進法を改正し、その期限を延長した上で、一般事業主行動計画について、
    → 数値目標の設定や、PDCAサイクルの確立を法律上の仕組みとして位置付ける
    → 男性の育児休業取得を含めた育児参加や育児休業からの円滑な職場復帰支援、育児のための時間帯や勤務地への配慮等に関する行動が盛り込まれるようにする
  • 育児・介護休業法における育児休業取得率の開示制度の拡充
  • 産後パパ育休(最大28日間)及び女性の産休後の育休(ただし28日間を上限とする)の取得時における育児休業給付金の給付率引き上げ(2025年度からの実施が目標)
  • 育児休業を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置を大幅強化
  • 業務を代替する周囲の社員への応援手当の支給に関する助成の拡充や代替期間の長さに応じた支給額の増額の検討
  • 「くるみん認定」の取得など、各企業の育児休業の取得状況等に応じた加算等の検討、及び実施インセンティブの強化
  • 育児休業給付を支える財政基盤の強化

◎ 育児期を通じた柔軟な働き方の推進

  • 育児期の男女がともに希望に応じてキャリア形成との両立を可能とする仕組みの構築及び好事例の紹介等の取り組み
  • 子育て期の有効な働き方の一つとして、テレワークを事業主の努力義務の対象に追加
  • 「親と子のための選べる働き方制度(仮称)」)の創設
    ※3歳以降小学校就学前までの子を育てる労働者について、事業主が職場の労働者のニーズを把握しつつ複数の労働時間制度を選択して措置し、その中から労働者が選択できる制度
  • 所定外労働の制限の対象年齢引き上げ ※現行上は3歳まで
  • 「育児時短就業給付(仮称)」)の創設(2025年度からの実施が目標)
    ※2歳未満の子を育てる労働者について、時短勤務を選択したことに伴う賃金の低下を補い、時短勤務の活用を促すための給付
  • 「子の看護休暇」について、対象となる子の年齢の引上げのほか、子の行事参加や、感染症に伴う学級閉鎖等にも活用できるよう休暇取得事由の範囲の見直し
  • 勤務間インターバル制度の導入やストレスチェック制度の活用など、労働者の健康確保のために事業主の配慮を促す仕組みの検討

◎ 多様な働き方と子育ての両立支援

  • 子育て期における仕事と育児の両立支援を進め、多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットを構築する観点から、雇用保険の適用拡大(2028年度までの実施が目標)
  • 自営業やフリーランス等の育児期間中の経済的な給付に相当する支援措置として、国民年金の第1号被保険者について育児期間に係る保険料免除措置の創設(2026 年度までの実施が目標)

人事労務管理に関わる取り組みは多岐に渡る

このように、少子化対策に挙げられた人事労務管理に関わる取り組みは多岐に渡り、企業実務に多大な影響が及ぼされることが予想されます。方針の中には、すでに具体的な実施時期が明記されている取り組みも散見され、続報に注目が集まるところです。各施策の詳細に関しては、公表され次第、順次、打刻ファーストにてご紹介してまいります。現場の皆さまにおかれましては、引き続き、最新情報をご確認ください。

参考:内閣官房「こども未来戦略会議(第5回)議事次第

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