2024年以降、くるみん認定基準が改正へ。「男性労働者の育児休業等取得率」の引き上げ等を中心に5項目で

日本における少子高齢化は、深刻化の一途を辿っています。このまま状況が改善されなければ、2030年には日本の人口のおよそ3割が65歳以上となり、人口減少がさらに加速する見込みです。いわゆる「2030年問題」への解決策として、政府は「異次元の少子化対策」を打ち出し対策を講じているところですが、これに伴い、「子育て認定企業」の証である「くるみん」認定制度において「男性労働者の育児休業等取得率」を含む認定基準の引き上げ改正が検討されています。さっそく概要を確認しましょう。

男性育休取得率に係る政府目標引き上げ方針を踏まえ、くるみん認定制度の基準も改正へ

「異次元の少子化対策」の元、これから若年人口が急激に減少する2030年にかけて、日本における少子化対策は抜本的に強化されます。各施策の詳細については2023年12月11日開催の第8回こども未来戦略会議にて公開された「こども未来戦略」案よりご確認いただけますが、特筆すべきは「男性の育児休業取得率政府目標の大幅引き上げ」です。資料によると、民間企業の直近の男性育休取得率17.13%に対し、2025年までに50%、2030年までに85%の目標が掲げられました。

参考:内閣官房「「こども未来戦略」案
関連記事:『異次元の少子化対策が盛り込まれた「こども未来戦略方針」案が公開!企業は育児期の労働者をどう支援すべき?

こうした政府の目標値の引き上げ、及び、「男女とも仕事と子育てを両立できる職場」を目指すという観点から、くるみん認定基準における「男性育休取得率」の引き上げが、各制度で以下の通り検討されています。

男性労働者の育児休業等取得率

・ トライくるみん:7%以上から 10%以上に引上げ
・ くるみん:10%以上から 30%以上に引上げ
・ プラチナくるみん:30%以上から 50%以上に引上げ

男性労働者の育児休業等・育児目的休暇取得率

・ トライくるみん:15%以上から 20%以上に引上げ
・ くるみん:20%以上から 50%以上に引上げ
・ プラチナくるみん:50%以上から 70%以上に引上げ

有期雇用労働者の育休取得率や、フルタイマーの時間外・休日労働時間数に関わる基準見直しも

「男性の育児休業取得率」以外の認定基準にも、以下4項目で見直しが検討されています。

女性労働者の育児休業等取得率

・ 育児休業制度の対象となる有期雇用労働者の育児休業等取得率を75%以上とすること

フルタイム労働者の時間外労働等の状況

・ 「フルタイムの労働者等の法定時間外・法定休日労働時間」に関して、現状「平均が各月 45 時間未満であること」となっている要件について、くるみん・プラチナくるみんについては、次の①と②のいずれかを満たしていることとすること
① フルタイムの労働者等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月 30時間未満であること
② フルタイムの労働者等のうち 25~39 歳の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月 45 時間未満であること

所定外労働の削減のための措置などの目標

・ 以下①~③について、現状、「トライくるみん・くるみんはいずれかの措置について、成果に関する具体的な目標を定めて実施していること」、「プラチナくるみんは全ての措置を実施しており、かつ、
①又は②のいずれかについて定量的な目標を定めて実施し、その目標を達成したこと」の要件について、
① 所定外労働の削減のための措置
② 年次有給休暇の取得促進のための措置
③ 短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他働き方の見直しに資す多様な労働条件整備のための措置
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「④ 男性の育児休業取得期間の延伸のための措置」を追加し、
「① 所定外労働の削減のための措置」は削除し、
プラチナくるみんの場合は「②又は④のいずれかについて定量的な目標を定めて実施し、その目標を達成したこと」とすること

能力向上又はキャリア形成の支援のための取組に係る計画

・ プラチナくるみんにおける「育児休業等をし、又は育児を行う女性労働者が就業を継続し、活躍できるような能力の向上又はキャリア形成の支援のための取組にかかる計画を策定し、実施していること」の要件を、
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「育児休業等をし、又は育児を行う男女労働者が仕事と育児を両立させながら意欲・能力を発揮して活躍
できるような能力の向上又はキャリア形成の支援のための取組にかかる計画を策定し、実施していること」とすること

参考:厚生労働省「仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について(案)

育休取得率向上に向けた取り組みを

政府が打ち出す異次元の少子化対策は、国だけでなく、企業側にも積極的な取り組みを求めるものです。とりわけ、「仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について(案)」に盛り込まれた内容に関しては、現場で十分に理解を深め、適切な対応を講じることが求められます。各企業における「男性の育休取得率」は、別記事で解説している2024年新設「両立支援等助成金 育休中等業務代替支援コース(仮称)」の加算措置にも関わる等、他制度利用の際にも問われる可能性のある数字です。くるみん認定の申請有無に関わらず、男性育休取得率の向上に努めることは、これからの時代を牽引する企業に求められる基本姿勢となるでしょう。現場においては少しずつでも着実に、できることに目を向けられるのが理想です。

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