ハラスメント規制法が2022年4月から中小企業も対象となり、これを機に相談窓口を新たに設置した企業も多かったかと思います。しかし、その相談窓口が「絵に描いたお餅」になっていませんか?実は、相談窓口は、上手に活用するとトラブルがあったときに非常に有効なのです。そこで、相談窓口をどのように活用すべきかご紹介いたします。
目次
ハラスメント規制法
2019年5月29日「女性活躍・ハラスメント規制法」が成立し、ハラスメントを防止するために企業に下記のことが義務付けられました。
- 方針等の明確化及びその周知・啓発
- 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取り扱いをすることを禁止
相談窓口は、ハラスメント相談だけにしない
相談窓口は、社員が困った時、悩んだ時などに相談する場所です、困った時や悩んだ時は、何もハラスメントだけとは限りません。実は、企業を退職した理由で一番多いのは、人間関係なのです。上司とうまがあわない、同僚とうまくやっていけない等、人間関係の悩みは様々です。そこで、相談窓口をハラスメントだけにしてしまうと、ハラスメント以外は相談ができないのかと相談をあきらめてしまう社員も出てくるかと思います。相談窓口の名称については、ハラスメント相談窓口でもいいのですが、周知する場合には「働く上で悩んでいることがあれば、何でもいいですよ」という姿勢が必要です。
一般的に社員がまず初めに相談するのは、直属の上司ですが、上司が悩みの種である場合は、誰に相談すればよいでしょうか?実はここが重要で、誰にも相談できずに退職してしまうケースが多いのです。そこで、相談窓口があれば、相談してみようかとなります。小さな悩みを早めに解決することで、モチベーションも上がり、働きやすい職場になっていくでしょう。
相談窓口担当者は、信頼できる人にする
相談窓口担当者を誰にするかは、窓口がうまく機能するかどうかの大きなポイントです。現状は、人事の経験を積んだ方に担当を充てているケースが多いと聞いています。しかし、これは一番最悪な担当者です。人事の人には話を聞かれたくないと考えるのが普通でしょう。
担当者として一番ふさわしいのは、全社員から信頼されている人です。あらゆる人から信頼されている人は、どこにもいるものです。「あの人なら信頼できる!」という人が肝要です。人というのは、信頼できる人にしか相談をしないものです。そこで、管理職かどうかに関わらず、担当者の基準は、「多くの社員から信頼されている人」です。その場合、男女1名ずつが理想で、相談対応する時も必ず男女2人で話を聞きます。2人なので間違いなく話を聞くことができ、また男女で異なる捉え方をすることができます。
相談窓口の周知は徹底的に
「誰も来ない相談窓口」の話をよく聞きます。せっかく作っても誰も来なければ意味がありません。「誰も相談に来ない=何も問題がない」ではなく、相談窓口があることを知らなかったり、担当者が嫌だったり、どんな相談なら対応してもらえるのかわからないからです。
相談窓口のポスターを作り、どんな小さな相談でもできること、プライバシーは保護されることなどをうたい、担当者は写真掲載をするとなおよいでしょう。名前を知らなくても写真を見て、あの人が担当者だとわかるようにするのです。
また、相談窓口への申し込みは、電話ではなく、担当者に携帯を持たせてメールにすると申し込みがしやすくなります。申し込みを人事の電話にして、誰も申し込んでくれないという企業が多いのも事実なのです。反対に申し込みを担当者のメールにして、大成功した会社もあります。
トラブルがあったときに相談窓口が有効な理由
何かトラブルが起こり調停や裁判になった場合、相談窓口があるということは、企業にとって有利となります。「相談窓口があるのに来なかった。相談してくれればこんな大きなトラブルになる前に解決できたのに」と主張できるのです。しかし、相手が相談窓口があったことを知らなかったり、担当者が人事の人なので嫌だった、こんな問題には対応してくれると思わなかった等になれば、相談窓口のメリットはありません。反対に、うまく機能しなかった相談窓口について企業側の責任を問われるでしょう。
まとめ_今から相談窓口を見直してみませんか?
相談窓口は、うまく活用すれば非常に有益です。トラブルになりそうな事案を早めに解決することによって、働きやすい職場になります。どんな相談でも可能にすると一時的には相談が増えるかもしれません。しかしそれは、今まで問題を放置しておいた証拠です。しばらくすると問題が徐々に少なくなり、本当に「相談がない=問題がない」ということになっていくかと思います。今から相談窓口を少し見直してみませんか?