2016年12月、厚生労働省は2015年度(2014年4月から2015年3月まで)の1年間で、残業代の不払いが100万円を超える企業は1348社にのぼるという調査結果を発表しました。
対象労働者数は9万2712人で、監督指導により支払われた残業代の総額は、およそ100億円だったといいます。
今回はこの発表を受けて、前編では不払残業代の多い業種やこの調査の意義について、後編では実際に発表された事例をご紹介します。
目次
もっとも不払いが多い業種は?
不払残業代の多かった企業には、どんな業種が該当しているのでしょうか?是正指導された企業の数や、労働者数などから割り出してみましょう。
<企業社数>
ワースト1位:製造業 332社(全体の24.6%)
ワースト2位:商業 267社(全体の19.8%)
ワースト3位:その他 146企業(全体の10.8%)
<対象労働者数>
ワースト1位:製造業 2万5834人(全体の27.9%)
ワースト2位:保健衛生業 1万8839人(全体の20.3%)
ワースト3位:金融・広告業1万1636人(同12.6%)
<支払額別>
ワースト1位:製造業 23億7042万円(全体の23.7%)
ワースト2位:保健衛生業 20億210万円(同20.0%)
ワースト3位:金融・広告業 12億7490万円(同12.8%)
製造業の労働環境の悪さが目立っていますね。前回とほとんど変わらない順位に。これらの業種は毎回常連になってしまっています。
1企業あたりの平均額は前回よりも低い結果に
ここでは、1企業ごとにスポットを当ててみましょう。今回の是正指導により支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり741万円、労働者1人当たり11万円でした。
前回(2014年)の調査では、1企業当たり1,072万円、労働者1人当たり7万円でしたので、1企業当たりの平均額は下がりましたが、1人当たりの金額は増えています。ひとりひとりにかかる負担は増していると言えます。
<1企業ごとの最高支払額は?>
ワースト1位:1億3,739万円(金融業)
ワースト2位:1億1,368万円(協同組合)
ワースト3位:9,009万円(電気機械器具製造業)
ちなみに前回のデータでは、
ワースト1位:14億1,328万円(電気機械器具製造業)
ワースト2位:9億4,430万円(金融業)
ワースト3位:6億3,321万円(理美容業)
という結果ですので、前回の支払額を大幅に下回りました。「かなり減ったなー」なんて感心してはいけません。1つの企業だけで不払額が億単位であるということは、嘆かわしい結果なのです。
サービス残業撲滅のために生まれた調査
ところでこの賃金不払残業調査、いつからどんな目的で始まったものなのでしょうか?
<調査はいつから始まったのか?>
厚生労働省による賃金不払残業の調査は、2002年から始まりました。
2001年、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」という策定を発表。以来、是正指導の結果不払い総額が100万円以上だった企業を取りまとめて、毎年公表しています。
ここのところ減少傾向にありましたが、今回の調査結果はここ10年間で最低水準となってしまいました。
<サービス残業という名の由々しき実態>
「賃金不払残業」とは、労働者が時間外労働をサービスするという意味の、いわゆる「サービス残業」ですよね。厚生労働省がなぜ賃金不払残業と名付けたかというと、「サービス」という言葉を使用することがふさわしくないと判断したからです。
言うまでもなく、サービス残業をさせることは違法行為です。労働基準法では、時間外労働をさせた場合、賃金の1.25倍以上の割増賃金を支払うことが義務付けられているのです。これに違反した場合、刑罰を科されることもあるくらい、重大な違法行為と言えます。
<賃金不払残業にあてはまる労働者はどうすればいい?>
もしも長時間労働や、企業から残業代を支払ってもらえないという場合、労働者は労働局や労働基準監督署に相談することになります。
その相談内容に基づき、労働基準監督署は企業が労働基準法などに反していないか、立ち入り調査を行います。そこで法令違反が認められた場合には、企業に対して是正指導が行われることになるのです。
不当な働き方を強いられている場合には、勇気を出して労働局や労働基準監督署に相談することが、解決へ導く足がかりとなります。
まとめ
労働力の質を保つためにも、適正な賃金の支払いは大前提として行われるべきであり、時間外労働そのものを減らす努力も必要です。明るみに出ていない不払残業はもっと多いのではないかとも思えます。
労働者側も、泣き寝入りが当たり前だと考えず、適正な賃金が支払われる職場環境を意識することが大切なのではないでしょうか。
後編では、厚生労働省より公表された、賃金不払残業解消のための取り組み事例をご紹介します。
勤怠時間を把握しなくては!と思った即断即決型のあなたへ
無料のクラウド勤怠管理システムIEYASUをご利用下さい。