「年5日の有給消化」が事業主の義務に!?中小企業における「時間単位年休」のススメ

未だ難航する政府主導の働き方改革を尻目に、企業においては少しずつ、就労環境の改善に向けた歩みが進められています。今号では、最近増えつつある企業の「休み方改革」をテーマに、休暇制度の実例とその必要性を解説することにしましょう。

従業員に「年5日の有給休暇を消化させること」は、事業主の義務となる見込み

ひと口に「働き方改革」といっても、具体的な取組みについてはあらゆる方法が想定されます。その中でもなぜあえて「休暇」に注目すべきかといえば、今後、従業員に対する「年5日の有休消化」が事業主の義務となる見込みだからです。本件については、すでに数年前から発案されている内容であり、あとは正式決定・施行を待つばかりの状態となっています。
昨今の働き方改革に関わる議論に付随し、昨年公開されている「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」には、有給休暇について下記の通り明記されています。

使用者は、年次有給休暇の日数が十日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち五日については、年次有給休暇の付与後、一年以内の期間に時季を定めることにより与えなければならないものとすること。

各労働者の年次有給休暇の取得状況を確実に把握するため、使用者は、年次有給休暇の管理簿を作成しなければならないものとすることを厚生労働省令で定めることとする。

参照 : 労働政策審議会「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」7ページ

「休暇制度」というと、どうしても大企業における取組みと捉えられがちです。しかしながら、今後は中小企業においても従業員の休暇取得を積極的に奨励する姿勢が求められます。「ウチはただでさえ人手不足だし、従業員に休まれては困る」というお声もあるかと思いますが、法案成立に先立ち、今のうちから実現可能な方法を検討しておくのが得策です。

進まぬ有給休暇の取得は、「時間単位利用」を可能にすることで改善を狙う

2018年の春季労使交渉においては、「有給休暇の時間単位取得」の制度化に向けた方針を明らかにする大企業が目立っています。パナソニックでは、出産・育児など家庭の事情を理由にした有給休暇を1時間単位で取得できるよう、現在労使交渉が行われています。NECでも、労組の要求を受け、介護や学校行事などのための特別休暇を1時間単位で取れるよう、既に調整段階に入っているとのことです。

参考:日本経済新聞「パナソニック、1時間単位で有休

働き方改革の一環として、大企業においては、会社独自の有給休暇制度を設ける例も多いです。しかし、中小企業で大企業同様の休暇制度を創設するのは現実的に考えて困難です。とは言え、
法定の有給休暇の消化率を上げる目的で「時間単位付与」を認めることについては、十分に検討の余地があるのではないでしょうか?

「有給休暇の時間単位付与」は労使協定でルールを定める

現状、有給休暇の取得は1日単位、もしくは半日単位で行われているケースが大半でしょう。しかしながら、進まぬ有給消化の状況を改善するために時間単位で付与することが、2010年4月施行の改正労働基準法によって可能となりました。

運用上のポイントは、下記の通りです。

■過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を締結すれば、年に5日を限度として、時間単位(1時間未満の単位は不可)で年次有給休暇を与えることができます

■労使協定で定めるべき事項は以下の通りです
①時間単位年休の対象労働者の範囲
②時間単位年休の日数
③時間単位年休1日の時間数
④1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数

■時間単位年休1時間分の賃金額は、下記のいずれかをその日の所定労働時間数で割った額とします
①平均賃金
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③標準報酬日額
※①~③のうちどれにするかは「日単位による取得」の場合と同様にし、就業規則に定めること

その他、有給休暇の時間単位付与に関するルールや注意点は、下記よりご確認いただけます。あらかじめ必要なルールを定め、適正に制度化した上で、周知徹底するよう心がけましょう。

参考:厚生労働省「年次有給休暇の時間単位付与

意外と便利な「時間単位年休」

事業主様の中には「1~2時間くらい休めるようにしたからって、実際に取得する人なんているの?」とお考えの方も少なくないでしょう。たしかに、どうせ有給休暇を取得させるのであれば1日しっかり休んでもらう方が有益である、という見方もあるかもしれません。
ところが、日々仕事と家庭の両立に奮闘する従業員であれば、1~2時間の有給取得によってぐんとワーク・ライフ・バランスが実現しやすくなることは明らかです。例えば、15時頃から行われる保護者会や学級イベントに参加できるようになる、放課後に子どもを病院に連れていくことができる、急な発熱など保育園からのお迎え依頼に対応しやすくなる等、時間単位年休の活用例はいくつも挙げられます。
仕事と家庭が両立しやすいことは、従業員に永くいきいきと活躍してもらう上では必須条件ですから、「ちょっとしたときの休みやすさ」が企業における人材定着につながることは言うまでもないでしょう。

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