労働・社会保険関連の改正法施行が多く予定される2022年ですが、2022年1月1日施行の「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」により、新年早々、健康保険関連で3つの改正がありました。実務上、そう多く取り扱う内容ではないかもしれませんが、事業主様・ご担当者様であれば漏れなく把握しておきましょう。
① 傷病手当金の支給期間通算化
傷病手当金とは、健康保険被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合の生活保障のための手当金です。私傷病により、連続する3日間を含む4日以上仕事に就くことができず、その間の給与支払いがなかったことを要件として支給されます。業務外の事由による傷病であれば幅広く対象となりますが、最近では従業員の新型コロナウイルス感染時に申請事務を扱ったご担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか?
傷病手当金が支給される期間は、これまで「支給開始日から暦日数で1年6ヵ月」とされていましたが、2022年1月1日より「支給を開始した日から支給を受けた日を通算して1年6ヵ月」に変更となりました。2022年1月1日以前に支給を開始した傷病手当金に関しては、2021年12月31日までに1年6ヵ月の支給期間が満了しない場合、つまり「支給開始が2020年7月2日以降」の傷病手当金について改正法の適用を受けることになります。支給開始が2020年7月1日以前の場合は従来通り、支給開始日から暦日数で1年6ヵ月の支給期間となります。
参考:協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
② 本人の申し出による任意継続被保険者の資格喪失が可能に
退職等で健康保険被保険者の資格を喪失した場合、資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があることを要件に、本人の希望により継続して被保険者となることができます。任意継続被保険者として加入できる期間は2年間で、この間は本人の申し出による資格喪失ができませんでした。この点、2022年1月1日より、任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を加入する協会けんぽ都道府県支部に申し出た場合、その申出が受理された日の属する月の翌月1日にその資格を喪失できるようになりました。2022年1月中の申し出に係る資格喪失は、2022年2月1日となります。
任意継続被保険者については、以下よりご確認いただけます。
参考:協会けんぽ「会社を退職するとき」
③ 出産育児一時金の支給額の内訳変更
健康保険の被保険者やその被扶養者が出産すると、保険者ヘの申請により出産育児一時金の支給を受けられます。出産育児一時金の額は、2021年12月31日以前の出産については「40.4万円」、産科医療補償制度に加入している医療機関等で出産した場合にはこれに掛金「1.6万円」が加算された計42万円となっていました。この点、2022年1月1日以降の出産については「40.8万円」、産科医療補償制度の掛金「1.2万円」の計42万円となりました。出産育児一時金と産科医療補償制度の掛金の合計額は42万円から変更はありませんが、産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合、妊娠週数22週未満で出産された場合の出産育児一時金は40.8万円に引き上げとなっています。
※本項目は厳密にいえば「出産育児一時金の支給額引き上げ」ですが、現状、医療機関等の大半が産科医療補償制度に加入していることに鑑みて、見出しとして「内訳変更」とさせていただきました。
- 産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週以降に出産した場合:1児につき42万円
- 産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合:1児につき40.8万円
(※令和3年12月31日以前の出産の場合は40.4万円) - 産科医療補償制度に加入の医療機関等で、妊娠週数22週未満で出産した場合:1児につき40.8万円
(※令和3年12月31日以前の出産の場合は40.4万円)
参考:協会けんぽ「子どもが生まれたとき」
一つひとつ確認し、適切に対応しましょう
2022年には様々な法改正が予定されていますが、一つひとつ確認し、必要な時に適切に対応できるようにしておきましょう。