3社の事例で振り返る「2015年度の不払い残業代は100億円」-厚生労働省発表より-

厚生労働省より公表された、2015年度の1年間で、残業代の不払いが100万円を超える企業は1348社にのぼるという調査結果でした。監督指導により支払われた残業代の総額は、およそ100億円だったといいます。この調査では、賃金不払い残業解消のための取組事例も併せて公表されています。データ編に続いて今回の事例編では、事例集から一部をご紹介します。
 【関連記事】厚生労働省、2015年度の不払残業代は100億円と発表 〜データで振り返る編〜

事例1:製造業A社の場合

<是正指導前の状況>

A社では、始業・終業時刻の入力はICカードで、労働時間は入退門記録によって管理されていました。しかし、多くの労働者が終業時刻と退門時刻に違いがあり、最長で12時間もの乖離があったといいます。
乖離の理由について、「自己研修」や「本人都合による業務外の出社」などと説明されていましたが、メールの送受信記録から、虚偽の理由が申告されていることが判明しました。

<労働基準監督署の指導内容>

適切な残業代が支払われていないことについての是正勧告が行われました。また、労働時間について労働者から聴き取りを行うなど、まずは実態調査を行うこと。その上で、不足額を適切に支払うことや、労働時間の把握、時間外労働を削減するよう指導されました。

<A社が実施した対策>

労働時間確認書を提出させるなど、労働者を対象に実態調査を行いました。その結果、賃金不払残業が認められ、14か月間の割増賃金(約380人分、約2万7,800時間分)を支払いました。
さらに、
①始業・終業時刻と入退門時刻に30分以上の乖離があった場合、詳細な理由を申請し、 上司の承認を得る。
②休日出勤を行う場合は事前に申請し、休日の入退門による時間管理を実施する。
③人事責任者は労働者との面談を実施し、自己申告に誤りがないか、現場の実態を把握する。
などの改善策が講じられました。

事例2:金融業B社の場合

<是正指導前の状況>

B社では、労働者が手書きで記入する「申告書」により、始業・終業時刻を把握して賃金計算を行っていました。しかし、労働基準監督署による夜間の立入検査(夜間臨検)が行われた結果、複数の店舗で、自己申告した終業時刻後にも労働者本人が就労している実態が確認されました。
またB社では、「ボランティア活動」と称して店舗内外や近隣の公共施設の「清掃活動」を行っていましたが、労働時間に該当する疑いも認められました。

<労働基準監督署の指導内容>

「申告書」に記載された始業・終業時刻が適正であるか、実態調査を行うこと。適正でない場合には、不足額を支払うこと。また「清掃活動」について、参加が義務づけられている場合は労働時間として扱い、 適正な賃金を支払うよう指導しました。

<B社が実施した対策>

パソコンのログなどを調べた結果、賃金不払い残業が確認されました。不払となっていた2年間の割増賃金(約770人分、約1万5,000時間分)を支払いました。
また、
①手書きの「申告書」を廃止し、静脈認証システムによる出退勤管理システムを導入。静脈認証による退勤時刻の登録後は、各自のパソコン操作ができなくなるシステムに変更。
②社内監査時の監査項目に、労働時間の管理状況を追加した。
③社員研修時などの機会を捉え、労働時間が適正に申告されているかのヒアリングを実施する。
④「清掃活動」に従事した場合には、手当を支給する。
などの改善策が講じられました。

事例3:協同組合C社の場合

<是正指導前の状況>

C社では、「出勤簿」と労働者が事前申請を行う「時間外勤務申請書」に基づき、労働時間を把握していました。しかしパソコンのログオフ記録やメールの送受信履歴から、時間外勤務が正しく申請されていない疑いが指摘されました。

<労働基準監督署の指導内容>

割増賃金を適切に支払っていないことについて、是正勧告が行われました。また、労働時間を適正に把握すること、労働時間についても実態調査を行い、不足額を支払うことについて指導しました。

<C社が実施した対策>

C社では労働者から聞き取り調査を行い、その結果、賃金不払残業が認められました。不払となっていた15か月間の割増賃金(約830名分、約7万1,000時間分)を支払いました。
また、
①自己申告制による時間管理を廃止し、タイムカードを導入する。
②企業トップ自ら労働者にヒアリングし、賃金不払残業が生じた原因を突き止め、撲滅に向けた取り組みを説明。
③総務部による定期的な職場巡視を実施し、チェック体制を構築する。
などの改善策が講じられました。
以上、是正指導が行われた3社の指導前の状況から、改善までの事例でした。業種は異なりますが、是正前の勤怠管理の甘さや、管理されていても表面上だけであるという事例がほとんどでした。
問題は改善策を打ち出した後。社内全体で共通認識を持って、今後も継続していくことが大切です。

まとめ

事例編では個別企業の具体的な対応までご紹介いたしました。事例2のB社の改善策のように、社内監査を導入しているのであれば、社員の勤怠管理もチェック項目に加えることは1つの有効な手段であると言えます。企業側から見れば、だらだらと働く社員を減らすことにもつながるのです。
ここでご紹介した企業はほんの一部です。今回のような内容を公表することで、少しでも賃金不払残業が改善されていくことを願います。
 
不払い残業代の温床になるのは、勤怠管理をしていないことからはじまります。勤怠管理がまだタイムカードや手書きという会社は無料のクラウド勤怠管理システムIEYASUをすぐにご利用下さい。

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