時季指定実施企業のおよそ半数が導入!有休取得率向上に寄与する「計画的付与制度」とは?

以前の記事では、2019年4月1日よりすべての企業に対して義務化された「年5日の年次有給休暇の確実な取得」について解説しました。現状、本制度への対応として有休取得促進を進める現場も多いかと思いますが、各人への呼びかけだけでは一向に前進せず、もう一歩踏み込んだ対策を講じたいというケースもあると思います。また、年間を通じて繁閑がはっきりしている場合、これに合わせて有休を取得してもらいたいということもあるでしょう。
進まぬ有休取得を促進すべく、検討したいのが「年次有給休暇の計画的付与制度」の導入です。

企業における「使用者による時季指定」実施率は49.2%、そのおよそ半数が「計画的付与制度」を導入

産労総合研究所が2021年5月に実施した「2021年度 労働時間、休日・休暇管理に関する調査」によると、「年5日の年次有給休暇の確実な取得」への対応として「使用者による時季指定」を実施したのは回答企業全体の49.2%とのこと。このうち、時季指定の具体的な方法として最も多かったのは「会社・事業場規模での計画的付与制度を利用(44.6%)」でした。
出典:産労総合研究所「2021年度 労働時間、休日・休暇管理に関する調査

進まぬ有休取得を促進する「計画的付与制度」とは?

年次有給休暇の計画的付与制度とは、年次有給休暇のうち、5日を超える分については、労使協定を結ぶことで、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のこと。職場によっては、周囲に遠慮して労働者の有休取得が憚られるケースは珍しくありませんが、あらかじめ計画的に休暇取得日が割り振られることで、ためらいなく休むことができるようになります。

計画的付与の対象は「付与日数のうち5日を除いた残りの日数」

前述の通り、計画的付与の対象とできるのは、「有休付与日数うち、5日を超える分」に限られます。具体的には、年度当初に10日付与された労働者であれば5日、20日付与された労働者であれば15日を、計画的付与として割り振ることができます。ただし、最低でも5日は、労働者が個人的な理由で取得できる様に残しておかなければなりません。

計画的付与の実施方法は大きく分けて3つ

計画的付与は、主に以下のいずれかの方法により実施されます。

① 企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方法
② 班・グループ別の交替制付与方法
③ 年次有給休暇付与計画表による個人別付与方法

①及び②は、企業や事業場、もしくは部課、班等のまとまった単位で休暇を取得させることができる場合の計画的付与方法です。これらのケースでは、「夏季、年末年始に年次有給休暇を計画的に付与して大型連休を取得できるようにする」、「休日が飛び石となっている合間に年次有給休暇を取得させる(ブリッジホリデー)」等の施策を講じる事例が見受けられます。

一方で、③に関しては、前述の夏季及び年末年始の大型連休やブリッジホリデー等を個人的に導入することの他、計画的付与を誕生日休暇や記念日休暇の取得に充てるケースもあります

計画的付与の実施に際し、必要となる「就業規則への明記」と「労使協定締結」

有休の計画的付与を実施する場合、就業規則にその旨を明記することと、そして労使協定を締結することが必要です。労使協定は届出不要のものですが、以下の内容について検討・決定しておきます。

・ 対象者
計画的付与の時季に育児休業や産前産後の休業に入ることが分かっている者や、定年などあらかじめ退職することが分かっている者については、労使協定で計画的付与の対象から外しておきます

・ 対象となる年次有給休暇の日数
年次有給休暇のうち、少なくとも5日は労働者の自由な取得を保障しなければなりません

・ 計画的付与の具体的な方法
⇒事業場全体の休業による一斉付与の場合には、具体的な年次有給休暇の付与日を定めます
⇒班・グループ別の交替制付与の場合には、グループ別の具体的な年次有給休暇の付与日を定めます
⇒個人別付与の場合には、計画表を作成する時期とその手続き等について定めます

・ 年次有給休暇の付与日数が少ない者の扱い
事業場全体の休業による一斉付与の場合には、新規採用者などで5日を超える年次有給休暇がない者に対しては、次のいずれかの措置をとります。
* 一斉の休業日について、有給の特別休暇とする
* 一斉の休業日について、休業手当として平均賃金の60%以上を支払う

・ 計画的付与日の変更
あらかじめ計画的付与日を変更することが予想される場合には、労使協定で計画的付与日を変更する場合の手続きについて定めておきます

出典:厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト

就業規則への記載については、以下の記事で解説しています。
関連記事:『年5日の有給休暇取得義務対応!就業規則にはどう規定する?【労働基準法改正2019】


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