とっさの労基呼び出し要請にもあわてない!実際に臨検で行われた報告事例を紹介

どんなに日々きちんと労務管理をしていても、突然、労基署から通知がくれば、多くの担当者の方があわてるのではないかと思います。もしもの時のために実際はどんなことを指摘されたり、どんな対応をしなければいけないかというのは、知りたい方も多いのではないでしょうか?

今回は、実際に臨検を経験した人事担当者の方にご寄稿いただきました。指摘されたことから報告したことまで、臨検の際にどのような対応をしたのか、現場の生の声をお届けします。

臨検の実体験をお伝えします

労基署からの突然の通知…まさか自分たちの会社に限ってはないだろうと思われた労働基準監督署からの呼び出し要請(臨検)ですが、私の会社にあった実体験をもとにお伝えしていきます。

本稿では、私たちの会社が臨検で体験した内容や報告これからの反省点をお伝えすることで、今後の労務・勤怠管理などの改善に役立てていければと願っています。

臨検に入られた企業について

とある日のこと、郵送で一通の物々しい封書が届きました。差出人を見て見ると、管轄の労働基準局から。何だか嫌な予感がよぎったのも束の間、そこには予期しない突然の“臨検”という名の労基署からの召喚状が届いていました。

私たちの会社は地方の中小企業の商社です。大阪営業所も含め現在60人ほどの従業員が、正社員やパートアルバイトなど様々な雇用形態で働いています。従業員の中には本社事務管理のグループ・倉庫管理のグループ・商品リサーチの在宅グループなどで構成されています。立ち上げのころからのその採用の時々で会社の雇用ニーズに応じた採用を続けてきた結果、勤怠管理にばらつきがあり社内のルール化が未完成なところがあったように思われます。

普段は、各グループ部署の所属長が勤怠管理のまとめをして人事総務に提出し一括管理を行うのですが、今回の臨検の呼び出しで担当の人事総務の私がこの労基署の臨検のために来所することになりました。

臨検で指摘されたこと

臨検で指摘されたことは、以下の通りでした。

法条項等 違反事項
労基法第89条 常時10人以上の労働者を使用しているにも拘らず、適用される始業時間・終業時間の記載についての規定が労基署へ届けていないこと。
労基法第15条 イレギュラ-な雇用形態が多いパート労働者に対して、労働条件の明示をはっきりと交わしてないこと。
安全法第66条の4 定期診断の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、3ケ月以内に産業医の意見を再見し、定期健診の個人票に記載していないこと。

また是正勧告書の他に、別途「指導書」という書類も頂きました。

この指導書の中には、厚生労働省が定めている「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づいた、下記のような指摘を受けました。

労働基準法に、労働時間、休日、深夜業等についての規定が設けられていることから、使用者には、労働時間を適正に把握する責務があります。御事業場においては始業時間や就業時間などの労働時間が全く記載されてない状況となっており、労働時間を適正に把握しているとは認められない状況にあります。

つきましては、別途お渡しするリーフレットにある「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき、適正な労働時間の把握方法を検討して頂き、その検討の結果、採用することとなる労働時間の把握方法及び当該把握方法を実行後、1ケ月間の労働時間管理の状況について、令和●年●月●日までに、「労働時間記録台帳」と「賃金台帳」の左記各写しを添えて報告して下さい。

以上の今回指導を受けた是正箇所に関わるガイドラインの関連事項の内容を、参考のために列記します。

4 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置

(1)始業・終業時刻の確認及び記録 使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。

(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法 使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。

ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。

イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、 使用者は次の措置を講ずること。

ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

イ 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。

ウ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。

エ 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど 使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。

オ 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。

(4)賃金台帳の適正な調製 使用者は、労働基準法第108条及び同法施行規則第54条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。また、賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、同法第120条に基づき、30万円以下の罰金に処されること。

(5)労働時間の記録に関する書類の保存使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存しなければならないこと。

(6)事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。

参照:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

また指導事項として具体的に以下のような指摘をされました。

1.今回提出した就業規則(2年前改訂分)が今現状の就業ルールに添っておらず、倉庫に勤務するグループの勤怠に関する就業規則(始業時間や休みなど)についての記載がないこと。

2.タイムカードなどの出勤簿等の客観的な記録を使用していないため、勤怠の把握が正確にできていない。よって、始業・終業時刻及び早出出勤時間外労働、休日労働時間の把握を適切に行い記録すること。

3.2.で提出された出勤簿の記録をもとに、賃金台帳への記載を明確にすること。

4.賃金体系が、月給・時給・固定給など様々な給与体系があるので、従業員と事業主がともに雇用条件の認識の相違をなくすために、採用時に個別の雇用契約書をきちんと交わし明らかにすること。

5.会社の定期健診の後、要検査よりも悪い結果がでている従業員に対して、別途、直轄の産業医に再見を求め、該当の従業員の健康診断結果に記載をして管理徹底すること。

どんな資料の提出を求められたのか

労基署の臨検にあたって、事前に会社がどのような書類を求められたのかを具体的に述べていきます。一見、決められた臨検来署の日まで全て揃えることが大変なのではと思いましたが、普段からきちんと労務・勤怠管理ができていれば、慌てずに準備ができるものがほとんどでした。

  • 労働条件自主点検票(同封)
  • 就業規則
  • 時間外労働・休日労働に関する協定書
  • タイムカード等労働時間が確認できる書類
  • 変形労働時間制を採用している場合その関係書類(労使協定、勤務割表等)
  • 賃金台帳
  • 健康診断個人票
  • 医師による面接指導の制度及び実施状況が確認できる書類
  • 衛生委員会等の議事録等衛生委員会等での調査審議状況が確認できる書類
  • 年次有給休暇管理簿
  • 来所する人の印鑑(認印)

労働基準監督署に報告したこと

その後、労基署からいただいた是正報告書にて、指定の期日までに下記の通り、報告しました。労基署から記入方法例も頂けるので、専門的な知識が無くても問題なくかけると思います。

違反事項 是正事項
始業時間・終業時間の記載についての規定が労基署へ届けていないこと。 始業時間・就業時間が記載された新しい事項を就業規則に記載し、労基署へ提出した。
採用形態が多種多様な雇用契約をかわしているパート労働者に対して、労働条件の明示をはっきりと交わしてないこと。 採用時に明確な「労働条件通知書」を2通(採用者と事業主)交付し、お互いの雇用条件を明確化した。
定期診断の結果に基づき、要観察以下の診断結果があった従業員の措置について、3ケ月以内に産業医の意見を再見し、定期健診の個人票に記載していないこと。 定期健診後、異常な所見が見あたる場合、3ケ月以内に直轄の産業医の再度健診の申し送りをして、その後の管理も執り行うこと。

是正報告の際、私の労務関係の専門的な知識に不安もあったため、我が社の労務に詳しい顧問社会保険労務士の先生に相談をしながら、法令に添った就業規則の書き方や記載事項などを細かく協議を重ね、最終的に、先日無事に提出を終えることができました。

このような臨検の書類提出時には、労基署からの再指摘や再是正を避けるためにも、やはり顧問の社会保険労務士や専門的な関連機関のアドバイスを受けてスムーズに執り行うことが重要だと感じました。

具体的に行った社内の改善措置としては、上記のような動きを今後に向けて整えたことにより、この一連の労基署の臨検の対応処理ことは完了しました。

臨検対応を終え

私たちの会社も突然の労基署からの臨検で戸惑いがかなりあり、人事総務責任者である私や事業主は従業員と同じく会社も守っていかなければならない立場上、どうなることなのか始めとても不安でした。しかしながら、この臨検の出来事があったおかげで今まで緩かった会社の曖昧な勤怠の管理を見直すことができ、結果よい改善のきっかけになったと思われます。

労基署の臨検は、ある日突然に降りかかってくる企業にとっては青天の霹靂のような出来事です。

臨検では特に勤怠管理に関する不備や違反が多く指摘されると聞きます。日頃から人事総務担当者はしっかりと労務管理をしていく必要がありますが、煩雑になる勤怠管理ができる勤怠システムを普段から導入をしていれば、こんなに苦労を重ねることもなかったように思います。

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