懲戒解雇の社員に解雇予告手当は必要か?~解雇予告手当除外認定について~

社員を解雇するときは、予告が必要です。しかし、懲戒解雇相当な社員に対しては、即解雇したいでしょうし、またその場合解雇予告手当も支払いたくないと思います。そんな時には、労働基準監督署に「解雇予告除外認定」の申請をすることで支払いをすることなく解雇することができます。いざという時の解雇予告認定除外についてのポイントを説明いたします。

解雇予告手当とは

解雇をする場合は、30日前までに解雇の予告をするか、予告を行わずに30日分の平均賃金を支払う必要があります。法律で決められた制度で、この支払うべき平均賃金を解雇予告手当といいます。この解雇予告手当は、当然懲戒解雇の社員にも適用されます。

解雇予告手当がいらない場合

「社員の責に帰すべき事由による解雇の場合」と「天災等やむを得ない事由で事業の継続が困難な場合」は、解雇予告や解雇予告手当の支払いなしに即時解雇することができます。ただし、その場合労働基準監督署に除外認定の申請をしなければなりません。

解雇予告手当除外認定基準とは

労働基準監督署では、解雇予告除外認定の申請で「社員の責に帰すべき事由」として下記があげられます。

・会社のお金等を盗んだり、横領等した場合
・賭博行為等をして、職場の風紀や規律を著しく乱すような行為を行った場合
・重大な経歴を詐称した場合
・他の事業へ転職をした場合
・2週間以上無断欠勤を続けて出勤の督促にも応じない場合
・遅刻や欠勤を繰り返し、何回注意しても改めない場合

ただし、この場合行為だけを考えるのではなく、社員の勤続年数、勤務状況、役職等を考慮して判断します。

解雇予告手当除外が認められないケース

上記の解雇予告手当認定基準にあてはまるけれど、それが軽易な場合は認められません

例えば、大した経験もないのに経験ありと詐称したケース、体調が悪くて一人暮らしのため会社に連絡できず無断欠勤を続けたケース、行為違反をして職場の風紀や規律を乱したけれどそれが軽易であるケース、遅刻や欠勤を注意するがその注意が具体的でないケース等があります。

会社や職場に迷惑をかけた状態がどの程度か、また手続きを踏んだ注意や指導を何回も繰り返しているかどうか等厳しい判断が下されて、現実はなかなか認められないケースが多いようです。

解雇予告手当除外認定の申請ポイント

社員を即時解雇する場合に、解雇予告手当を支払わないときは、労働基準監督署に解雇予告手当除外認定の申請をします。この申請をするときには、申請書だけでなくその事実を証明する書類を作って添付しなければなりません。実は、この添付書類が認定を左右する重要なポイントとなるのです

添付書類には、「社員の責に帰すべき事由」を具体的に記載したものや、社員自ら違反した行為を認めたもの、就業規則や懲戒規程等があります。書類を提出した後には、違反した社員本人や会社の担当者に事情徴収が労働基準監督署からあり、認定するかどうかを決めます。そのため、認定の結果は、2~3週間ほどかかります。

ここで注意したいのは、社員本人にも労働基準監督署から事情徴収があるということです。社員が事情徴収に応じなければ、申請をしたにもかかわらず認定されないことになってしまいます。そこで、この認定の申請を行う場合は、社員本人に違反行為を認めさせること、そしてその行為について文章化して本人に署名を求め、申請の時に添付すること、後から労働基準監督署の事情徴収があることを話しておくことが必要です。

ただし、この行為を認めさせる場合、無理やり認めさせることは避けてください。労働基準監督署の事情徴収で無理やり認めさせられたということで申請自体に疑義が入り、認定されなくなってしまいます。

また、この解雇予告手当除外の申請は、本来は解雇前にすべきものですが、それが無理であれば事後に認定を受けることも可能です。

実際の解雇予告手当除外認定は難しいのが現実

会社や職場に迷惑をかけた社員に対しては、就業規則の懲戒規程で様々な戒めを講じていることと思います。中でも一番重い懲戒解雇ですが、いくら懲戒規程に即時解雇ができることを定めても、解雇予告手当の支払いは免れません。労働基準監督署に解雇予告手当除外の申請をしても、2週間以上かかりますし、それを不服として社員が裁判を起こす可能性もあります。

解雇予告手当除外の申請を行う際には、必ず申請の前に本人に申請を行うこと、そして労働基準監督署の事情徴収がある旨の説明をきちんとすべきでしょう。その時に、社員に不服そうな態度が見られたら、認定は難しくなりますので、申請はあきらめて解雇予告手当の支給を考えるべきかと思います。実際の認定は、よほど重大な違反をして会社や職場に迷惑をかけた場合以外は、難しいのが現実です。

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