「24時間働けますか♪」と歌うCMソングの流行から30年が経過し、今や長時間労働是正や業務効率向上、労働者の健康確保等に鑑み、企業において労働者に対する「休息」の必要性が問われるようになりました。働き方改革関連法令の施行から3年、各現場であらゆる観点からの取り組みが進む中、労働者の「休み方」を主軸とした制度導入に踏み切る業界、企業が増えてきているようです。
運輸業界では、「11時間以上」の勤務間インターバル導入が努力義務へ
深夜や未明に及ぶ長時間労働が極めて多い運輸業界では、自動車運転手に対し、11時間以上の勤務間インターバルの導入を努力義務とされる見通しとなっています。すでに2022年3月16日の厚生労働省有識者検討会ではバスの運転手について、「運輸業界で8時間以上と義務づけてきたインターバルを9時間以上に改めること」、その上で「11時間以上与えるよう努めることを基本とする」旨の合意なされました。今後、2024年4月の施行に向けて、タクシーやトラックの運転手についても同様の方向で議論されるとのことです。
「仮眠」を制度化する企業も
企業においても、「休息」に着目した試みが進められる例が増えています。以下は厚生労働省「スマート・ライフ・プロジェクト」内で紹介された2事例ですが、いずれも業務効率化や生産性向上を目的に仮眠制度を導入し、良い効果が得られているケースです。
「目的」を明確にすることで制度活用を促進
2013年創業のITベンチャー・株式会社ネクストビートでは、2017年時点で仮眠をとれる休憩スペースの環境整備に、さらに2018年の東京本社移転の翌年には睡眠コンサルタントの指導のもと、「戦略的仮眠室」の設置に取り組んでいます。仮眠制度の導入時には、「業務効率化」と「生産性向上」の目的を明確にすることで、社員への制度活用を促したとのこと。同社の就業規則ではすでに仮眠が制度として導入されており、休憩時間1時間のほかに、仮眠のために30分までの休憩を取れるようになっているそうです。
20~30代の若手が中心の同社では、いわゆる「日本的な古い価値観」に縛られることはなく、仮眠制度導入に際し大きなハードルはありませんでした。もっとも、社長自身が健康経営に関心をもっており、創業当初から「21時完全退社」がルールであった等、業務効率化や生産性の向上を重視する文化が浸透していたことも制度定着の追い風となったようです。
仮眠制度定着のカギは「職場の雰囲気作り」にあり
三菱地所株式会社でも、社員のパフォーマンス向上や健康づくりのために睡眠改善への取り組みが進められています。同社では、2018年より本社ビル内に仮眠室を設置し「パワーナップ制度」を導入し、就業時間内に仮眠室で30分まで仮眠が取れるようにしています。実際に制度を活用したことのある社員であれば、眠気を我慢しながら午後に5時間働くよりも、30分仮眠を取って4時間半働いた方が業務効率が良く、生産性も上がることを実感されているようです。
もっとも、制度導入当初は社員が気軽に「今から仮眠室に行ってきます」と言えるような雰囲気でなかったとのことですが、役員が積極的に社員への啓発を続けてきたことで少しずつ個々の意識、職場の雰囲気が変化してきているようです。制度定着には、役員や管理職といった職場の上層部の意識改革と、これに伴う職場風土の醸造が不可欠であると言えます。
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「働き方改革」の観点から、目下、様々な取り組みを試行中の企業も多いのではないでしょうか?今号でご紹介した「休息」を切り口とした諸制度もまた、社員の働き方に良い変化をもたらす施策として役立ってくれそうです。必要に応じてご検討いただき、無理なく取り組めることから始めてまいりましょう!