ゼロから始める労務管理!会社が知っておきたい「退職」にまつわる諸手続き

「退職」に関わる定めは就業規則の絶対的記載事項のひとつですが、記載されていたとしても法律と照らし合わせて不適切と考えられる内容を見かけることがあります。

御社の退職時の手続きは、どのようになっているでしょうか?労働者を不当に拘束するような退職ルールは無効となりますので、注意が必要です。

民法上、労働者は「14日前の申し出」で退職が可能

例えば就業規則に「退職の申し出は3ヵ月前に行わなければならない」とあっても、このような定めは憲法上の「職業選択の自由」に反するとして無効になる可能性が高いといえます。もちろん、会社としては業務上のあらゆる事情を考慮した上で「3ヵ月」の設定としているわけですが、一方で、すでに退職を決意した労働者に対して現職場での長期間の就業を強制できる根拠にはなりません。

退職の申し出は「1ヵ月前まで」が慣例。ただし、法で保障されているものではない

退職の申し出の期限については、実務上、「1ヵ月前までに退職の申し出をすること」とする就業規則を多く見かけます。引継ぎや人材確保といった会社側の諸々の事情、さらに労働者側の「職業選択の自由」に鑑みると、「退職の申し出は1ヵ月前までに」というのが社会通念上妥当と判断できる期間と考えられているようです。

ただし、この「1ヵ月前」に法的な根拠はありません。よって、仮に会社が「1ヵ月前までの退職の申し出」を求めたとしても、労働者は民法上の定めに則り、雇用契約解約の申し入れ後2週間で退職することが可能となる点に注意が必要です

退職の申し出の方法は、必ず就業規則に定めるべき

退職の申し出は、必ずしも書面に依る必要はなく、口頭であっても、労働者から申し出があり、これが真意に基づくものであれば正式な申し出として認められます。ただし、退職の申し出を巡る労使トラブル回避の観点からいえば、会社のスタンスとしては書面等でのやり取りを基本とするのが安心と言えるでしょう。

退職の申し出にあたり「書面」提出を求めるのか、それとも「口頭」によるものでも認めるのか、このあたりは就業規則に必ず明記しておくべきポイントです。判例では、退職願を書面で提出しなければならない旨を就業規則に定めている場合、書面が提出されない限りは退職の意思表示は無効とされたケースがあります。一方で、就業規則に定めがない以上は、会社が書面提出を求めたとしても、労働者から口頭による退職申し出があった以上はこれを退けることはできません。

退職に際し「会社の承認」を要件とすることはできない

会社は、原則として労働者の退職の申し出を拒むことはできません。退職の申し出を適法に行っていない等の事由がない限りは、事業主が労働者からの退職の申し入れを拒み、会社の承認が得られない場合であっても、民法の定めに則り「2週間」経過すれば労働者は退職することができます

労働者から口頭で退職の申し出がなされた後に会社が書面の提出を求め、労働者がこれに応じない場合でも、会社は「口頭による退職の申し出がなされた日」を基準に退職手続きを進めるのが原則となります。会社がいつまでも「書面提出」のルールにこだわっていると、必要な引継ぎが行われることなく労働者に退職されてしまうことになりかねない他、職業選択の自由を不当に侵害したとして法律上の問題に発展する可能性もあります。

このような場合、会社は一定期間経過後に必ず、退職に関わる承諾通知を交付しましょう。口頭による退職の申し出の場合、後になって労働者から「退職の申し出を撤回される」「そもそも退職を申し出ていないと主張される」等のトラブルが生じることもありますから、リスク管理の観点で重要な対応となります。

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