2022年度は過去最大の引き上げへ!10月以降適用となる改定地域別最低賃金への対応を

2022年8月2日に開催された政府の中央最低賃金審議会で答申された地域別最低賃金の改定額を踏まえ、8月23日に各都道府県の地方最低賃金審議会において2022年度改定地域別最低賃金の引き上げ額が決定されました。
当初示された方針通り、今年度は47都道府県すべてで最低賃金の大幅引き上げが実施されます。

引き上げ額は30~33円!22道県で目安額を上回る引き上げを実施


出典:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました

それでは実際に、各都道府県の地域別最低賃金を確認していきましょう。
上記出典URLより各都道府県の地域別最低賃金改定額をご覧いただくと、主にランクDとされる各県で、当初中央最低賃金審議会で答申された改定目安を上回る引き上げが実施されることが分かります。地域別最低賃金の全国平均を上昇させていくためには、現状最低賃金額が低額な地域を中心に引き上げてボトムアップしていく必要があることは言うまでもありませんから、政府方針に沿った既定路線と考えることができそうです。
地域別最低賃金改定の結果、全国で最も高額となるのは東京の「1,072円」、これに次いで神奈川、大坂で1,000円超となります。また、最低額は「853円」で、東北、九州を中心とする10県が横並びとなります


出典:厚生労働省「令和4年度地域別最低賃金額改定の目安について

2022年度地域別最低賃金改定のポイント

今年度地域別最低賃金改定のポイントは、以下の通りです。

  • 47都道府県で、30円~33円の引上げ
    引上げ額が30円は11県、31円は20都道府県、32円は11県、33円は5県
  • 改定額の全国加重平均額は961円(昨年度930円)
    全国加重平均額31円の引上げは、1978年度に目安制度が始まって以降で最高額
  • 最高額(1,072円)に対する最低額(853円)の比率は、79.6%
    (昨年度は78.8%。なお、この比率は8年連続の改善)

地域別最低賃金大幅引き上げの背景は?

当初の見込み通り、各都道府県で過去最大の上げ幅となっていますが、こうした背景にはロシアのウクライナ侵攻等に伴う急激な「物価上昇」による影響が挙げられます。最低賃金とは、そもそも「労働者の最低限の生活を保障する」ために定められているものですから、物価上昇による労働者の家計への影響を踏まえれば、引き上げられるのは自然な流れと言えるかもしれませんね。

もっとも、政府が掲げる「2025年度にも全国平均で時給1000円以上」の目標に鑑みれば、大前提として地域別最低賃金の引き上げは当面実施されるものとして位置づけられていることが分かります。もちろん、企業においては新型コロナや物価上昇の影響が大きく、厳しい中ではありますが、地域別最低賃金の引き上げ対応には前向きに対応していく必要があります。

地域別最低賃金大幅引き上げに伴い、企業が対応すべきこと

今秋に予定される地域別最低賃金大幅引き上げを目前に、いずれの企業においても「事業場内賃金の見直し」が不可欠となることは言うまでもありません。最低賃金のラインで時給設定されている従業員はもちろん、通常の時給は最低賃金を上回っていても研修期間中のみ特別な時給設定をしているケースにも注意が必要です。

また、月給者についても、月平均所定労働時間※から算定される一時間あたりの基礎賃金が最低賃金を上回っているかを確認する必要があります。
※月平均所定労働時間数 =(365日 - 年間休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12ヵ月
「月給÷月平均所定労働時間」が最低賃金を上回っていなければなりません

併せて、月給者で固定残業代を設定している場合には、現在の固定残業代が既定の労働時間数をカバーする設定となっているかを確認しましょう。固定残業代が何時間分の残業に相当するものなのかはすでに明示されているかと思いますが、最低賃金の引き上げによって計算が合わなくなるケースもありますのでご注意ください。

賃金が最低賃金以上か、以下かの確認については、関連記事で解説していますので、参考になさってみてください。
関連記事:『【速報】平成30年10月以降、最低賃金が大幅に引き上げられます!

最低賃金を上回る従業員の処遇改善にも目を向けるべき場合も

その他、パート・アルバイトの時給について「最低賃金の引き上げに合わせて毎年引き上げている」という現場では、同時に、すでに最低賃金を上回っている従業員への処遇改善が必要な可能性があります。ある事業場では、「パート・アルバイトの賃金は毎年引き上げられているのに、月給者の給与はもう10年以上据え置き」とのことで、月給者から不満の声が上がるといった事例がありました。地域別最低賃金の引き上げに伴い、一部の従業員の時給が年々上がっていくなら、やはりその他の従業員についても同じように賃金の見直しが行われなければ公平性に欠けますね。最低賃金対応をきっかけに、あらゆる従業員の立場に立った処遇改善に目を向けられるようにしましょう。

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