労働保険年度更新に社会保険算定基礎届と、人事労務ご担当者にとっては何かと忙しい6月。労働者派遣事業を営む派遣元事業主様にとっては、もう一つ、悩みのタネとなるのが「労働者派遣事業報告書」への対応です。提出の準備は進んでいるでしょうか?
目次
「労働者派遣事業報告書」とは?
「労働者派遣事業報告書」は、派遣業を営むすべての事業者に、毎年提出が義務付けられている書類のひとつです。派遣事業者は、本報告書を通して、派遣業事業の業績の他、派遣労働者の処遇や労働環境について適正に法令遵守している旨を管轄労働局に報告します。
労働者派遣法上、毎年6月中の報告書提出が求められており、2024年度の提出期限は6月3日~6月30日となっています。郵送による提出が推奨されている他、e-Govによる電子申請も可能となっています。
派遣実績のない年度も要提出
ちなみに、労働者の派遣実績が無い年度においても、労働者派遣事業報告書を提出しなければなりません。報告書が未提出の場合、または虚偽の報告をした場合には、30万円以下の罰金に処せられる可能性がある他、派遣業許可の取り消し対象となることもありますので、確実に対応しましょう。
労使協定方式を選択している場合、協定の添付が必要です
2020年4月の改正労働者派遣法施行により、派遣労働者への同一労働同一賃金が適用となりました。これにより、派遣労働者の待遇について、派遣元事業主には、派遣先均等・均衡方式(派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇)または労使協定方式(一定の要件を満たす労使協定による待遇)のいずれかを確保することが義務化されています。現在、派遣元事業者の大半が、労使協定方式を選択しています。
労使協定方式を選択している場合、労働者派遣事業報告書に「派遣労働者の同一労働同一賃金に関する労使協定」を添付する必要があります。誤って、時間外・休日労働に関する協定届(いわゆる36協定届)の写しを添付するケースがあるようですので、くれぐれもご注意ください。
参考:東京労働局『「労働者派遣事業報告書」~「労使協定」添付の4つのポイント~』
2024年6月報告分より、「労働者派遣事業報告書」の様式が変更されています
労働者派遣事業報告書の様式は、都道府県労働局のホームページよりダウンロードできます。なお、2024年6月報告分から様式が変更となっており、旧様式では受理されません。「昨年度の報告書データを元に作成してしまおう」と考えていると、様式変更に対応できませんのでくれぐれもご注意ください。
様式の新旧でどのような点が変更されているのでしょうか?さっそく、中身をチェックしていきましょう。
■ 主な改正点
出典:東京労働局『「労働者派遣事業報告書」の様式が令和6年6月報告分から変わりました』
さほど大きな変更点ではございませんが、年度に合った様式で提出できるようにしましょう。
「労働者派遣事業収支決算書」「関係派遣先派遣割合報告書」の提出も忘れずに
派遣元事業主には「労働者派遣事業報告書」の他、「労働者派遣事業収支決算書」「関係派遣先派遣割合報告書」の提出も義務付けられています。「労働者派遣事業収支決算書」「関係派遣先派遣割合報告書」とも、提出期限は「毎事業年度経過後3ヶ月以内」となっています。3月決算の企業も多いと思いますが、この場合、労働者派遣事業報告書との同時提出が可能です。
労働者派遣法への対応は万全に!
労働者派遣事業報告書等への対応準備は、順調に進んでいるでしょうか?
労働者派遣法に関しては、近年、たびたび改正が繰り返されている関係から、届出・報告書関連の他、派遣労働者の待遇や労働環境等へのご対応に頭を悩ませる場面もあるでしょう。「ついうっかり・・・」で対応を怠れば、指導や罰則の対象となることもありますので、一つひとつ確認し、間違いのないよう処理を進めていきましょう。自社対応が難しい場合には、社会保険労務士のご活用をご検討ください。