いよいよ2023年度より解禁予定の、給与のデジタル払い。現場においては、目下、導入に関わる検討が進められているところかと思いますが、御社ではどのようなご方針でしょうか?新年度を目前に、給与のデジタル払いについての具体的なルールが明らかになってきています。今号では、企業における導入手順や必要様式等を確認しましょう。
目次
給与のデジタル払い導入に向け、企業で行うべきこと
給与のデジタル払い解禁に先立ち、企業で検討すべき事項は多岐に渡ります。具体的には、現場の需要を踏まえた制度設計や運用ルールの構築、給与システム等での対応、従業員情報の収集・管理方法等が挙げられます。すでに3月を迎え、「解禁まであと1ヶ月もない!」と焦り始める導入予定企業もあるかもしれませんが、これから準備を始めても十分に間に合います。
給与のデジタル払いの実運用は、実際のところまだ少し先に
というのも、上記スケジュールを見る限り、資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請を行うことができるのが、2023年4月1日以降となります。審査に要する期間を考慮すれば、来月4月から企業ですぐにデジタル払いが可能になるというわけではないことは明らかです。企業においては、デジタル払いに対応可能な資金移動業者が指定されてから、その中で利用する業者を検討し、準備を進めていくことになります。
給与のデジタル払い導入手順 3つのステップ
社内方針・対応体制を決定後、実際に制度導入に向けて準備を進めていきます。企業で取り組むべきは、大きく分けて以下の3点です。
① 労使協定の締結
② 就業規則の改定
③ 個別の同意確認
それぞれについて、具体的に解説していきます。
給与のデジタル払い導入ステップ① 労使協定の締結
労使協定に盛り込むべき内容は、主に「対象労働者の範囲」「対象となる賃金の範囲及びその金額」「取扱資金移動業者の範囲」「実施開始時期」等です。以下に労使協定の例文を掲載しますので、参考になさってみてください。
資金移動業者口座への賃金支払に関する労使協定
〇〇株式会社(以下「会社」という)と従業員代表〇〇は、労働基準法第24条1項に基づき、賃金支払に関し、以下の通り協定する。
(指定資金移動業者口座への賃金支払)
第1条 会社は、従業員各人の同意を得て、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者(「指定資金移動業者」という。)の口座に賃金を支払うことができる。(対象従業員の範囲)
第2条 指定資金移動業者の口座への賃金支払の対象となる従業員は、会社のすべての者とする。(対象となる賃金の範囲及びその金額)
第3条 指定資金移動業者の口座への支払対象となる賃金は毎月○○日支払いの給与とし、その全額又は一部について、従業員が申し出た金額とする。(取扱資金移動業者の範囲)
第4条 指定資金移動業者は会社が定める以下①~③の範囲とし、従業員が指定することができる。なお、指定資金移動業者を変更する場合、従業員は支払予定日の〇日前までに会社に申し出るものとする。
①
②
③(実施開始時期)
第5条 指定資金移動業者の口座への賃金支払は、〇〇年〇月〇日以降実施する。(有効期限)
第6条 本協定の有効期間は○○年〇月〇日から○○年〇月〇日までの1年とする。ただし、この協定の有効期間満了の1ヶ月前までに、会社または従業員代表のいずれからも異議の申し出がないときは、この協定はさらに1年間有効期間を延長するものとし、以降も同様とする。
給与のデジタル払い導入ステップ② 就業規則の改定
「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給」に関する事項は、就業規則の絶対的記載事項に該当します。よって、支払方法としてデジタル払いを追加する場合、就業規則の改定が必要となります。
具体的には、「従業員が希望する場合」「会社が定める範囲で従業員が選択した指定資金移動業者の口座への資金移動」により賃金を支払うことができる旨を規定することになります。
給与のデジタル払い導入ステップ③ 個別の同意確認
給与のデジタル払い導入にあたり、労働者に対しては銀行口座に振り込む場合の違いやリスク、不正引き出し等に際しての補償、アカウントの有効期限等について説明し、理解を得ておくことが不可欠です。その際に活用できる「資金移動業者口座への賃金支払に関する同意書」のひな型が厚生労働省より公開されましたので、現場においてご活用いただければと思います。
参考:厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について_同意書の様式例」
いよいよ来月に控えた給与のデジタル払い解禁に向け、導入企業においては、一つひとつ、確実に課題をつぶしてまいりましょう!
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