社会人の学び・学び直し、「リカレント教育」の重要性

昨今の働き方の多様化、職業人生の長期化に伴い、「リカレント教育」が重視されています。「社会人の学び」というと、ともすれば「個々人に委ねられた取り組み」のようにも思われますが、企業における人材戦略・人材開発の観点から言えば、企業が労働者と手を携えて取り組んでいく意義は大いにありそうです。
このたび厚生労働省が公開した「社会人の職業に関する学び・学び直し促進ガイドライン」の骨子案を元に、企業におけるリカレント教育の考え方について理解を深めましょう。

これからの社会人に必要とされる「リカレント教育」とは?

“繰り返す”“循環する”を意味する「リカレント(recurrent)」を「学び」に適用し、学校卒業後も必要なタイミングで学び、仕事への好循環を生み出していく「リカレント教育」が今、注目されています。こうした背景には、私たち日本人の平均寿命の伸び、社会や働き方の変化といった要素が影響しており、学校卒業後に家庭生活との両立を前提に長く続く職業人生を踏まえたキャリア形成の一手段として、社会人の学びの必要性が高まりをみせているのです。

厚生労働省ガイドラインに示される、人材開発としての学び・学び直し

ともすれば個人任せにされがちな社会人の学びですが、企業による積極的な支援がその効果を高めると言われています。また、企業側にとっても労働者が能力開発、キャリアアップを図ることで得られるメリットは決して少なくありません
厚生労働省が公開した「社会人の職業に関する学び・学び直し促進ガイドライン」の骨子案には、企業におけるリカレント教育支援の重要性と共に、以下の「労使が取り組むべき事項」について解説されています。以下は主な項目ですが、企業においては労働者の伴走者として、自律的・主体的な取り組みの継続を支援していく役割を担っていくことになります。

経営者による経営戦略・ビジョンと人材開発の方向性の提示、共有

① 経営者から従業員への経営戦略・ビジョンと人材開発の方向性の提示、共有

能力・スキル等の明確化、学び・学び直しの方向性・目標の共有

② 役割明確化と合わせた、職務に必要な能力・スキル等の明確化
③ 学び・学び直しの方向性・目標の擦り合わせ、共有
④ 節目ごとのキャリアの棚卸し

労働者が自律的・主体的な学び・学び直しに取り組むことができる環境整備と支援

⑤ 学び・学び直しの機会の提供
⑥ 労働者が相互に学習し、刺激し合える場の提供
⑦ 学び・学び直しのための時間の確保
⑧ 学び・学び直しのための費用の支援
⑨ キャリアコンサルタントによる伴走支援

学びの実践、評価

⑩ 身につけた能力・スキルを発揮することができる場の提供や適切な評価

管理職等の現場のリーダーの役割・支援

⑪ 管理職等の現場のリーダーの自律的・主体的な学び・学び直しの理解促進
⑫ 管理職等の現場のリーダーのマネジメント能力の強化と支援
⑬ 個々の労働者との双方向のコミュニケーション

出典:厚生労働省「社会人の職業に関する学び・学び直し促進ガイドライン(仮称)(骨子案)

事業主による人材育成への取り組みに活用可能な支援

社会的にリカレント教育の必要性が唱えられる中、人材育成に取り組む人や企業に対する国の支援体制が着実に整備されています。具体的な支援策については、厚生労働省が以下のページでまとめていますのでご確認ください。助成金を活用した教育訓練の実施や教育訓練休暇制度の導入、企業内のキャリアコンサルティングの導入等について紹介されています。

参考:厚生労働省「リカレント教育

リカレント教育支援を通じて、労使双方にとっての持続的成長を実現

「人材育成」は、現状、中小企業においてまだまだ進まぬ分野と言わざるを得ません。しかしながら、政府は「人への投資を抜本的に強化するため、3年間で、4000億円の施策パッケージを提供する」との方針を打ち出しており、これを踏まえると、人的・資金的に制限のある現場においても今後、前向きな検討が進むテーマと言えそうです。従業員のリカレント教育支援は、企業・労働者双方の持続的成長につながる取り組みです。折を見て、御社としての方針の確立、制度設計に目を向けられてみてはいかがでしょうか?
人材育成に関わるご相談は、社会保険労務士までお気軽にお寄せください。

LINEで送る

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事