就業規則の作成・変更に際し、厚生労働省が公開するモデル就業規則を土台にして検討を進める企業もあると思いますが、その後の改定にあわせて内容の見直しを行えているケースは意外にもそう多くないようです。このたび、厚生労働省のモデル就業規則が2022年11月版に改定されていますので、今一度内容をご確認いただき、必要に応じて御社の就業規則に反映させる必要があります。
2022年11月版モデル就業規則における追加ポイント
2022年11月版のモデル就業規則には、「勤務間インターバル制度」「出生時育児休業」「不妊治療休暇」に関わる追加がありました。それぞれの内容を見ていきましょう。
第22条 勤務間インターバル制度
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間等設定改善法)の改正により、2019年4月1日より、勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務となりました。勤務間インターバル制度とは、働く人が生活時間や睡眠時間を十分に確保できる様、1日の勤務終了後から翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みのこと。本制度を導入する場合の就業規則規定例として、「休息時間(インターバル)」「休息時間(インターバル)の満了時刻が、次の勤務の所定労働時間以降に及ぶ場合の取扱い」についての記載が盛り込まれています。
(勤務間インターバル)
第22条 いかなる場合も、従業員ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、○時間の継続した休息時間を与える。ただし、災害その他避けることができない場合は、この限りではない。
2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間は労働したものとみなす。
(勤務間インターバル)
第22条 いかなる場合も、従業員ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、○時間の継続した休息時間を与える。ただし、災害その他避けることができない場合は、この限りではない。
2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、翌日の始業時刻は、前項の休息時間の満了時刻まで繰り下げる。
就業規則の規定としては上記の他、必要に応じて、「制度適用の際の申請手続」や、「ある時刻以降の残業を禁止し、次の始業時刻以前の勤務を認めないこととする」等の規定が考えられます。
第28条 出生時育児休業
2022年10月に出生時育児休業が新設されたことを受け、労働者が適用を受けることのできる休業に「出生時育児休業」が追加されました。
(育児・介護休業、子の看護休暇等)
第28条 労働者のうち必要のある者は、育児・介護休業法に基づく育児休業、出生時育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児・介護のための所定外労働、時間外労働及び深夜業の制限並びに所定労働時間の短縮措置等(以下「育児・介護休業等」という。)の適用を受けることができる。
2 育児・介護休業等の取扱いについては、「育児・介護休業等に関する規則」で定める。
厚生労働省が公開する「育児・介護休業等に関する規則の規定例」には、すでに出生時育児休業に関わる規定が盛り込まれていますので、こちらも併せて改定できているかをご確認ください。
参考:厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」
第29条 不妊治療休暇
不妊治療休暇については、会社が必ずしも導入しなければならない制度ではありません。しかしながら、政府は不妊治療と仕事との両立がしやすい環境整備、従業員に対する両立支援を推進しており、2022年4月からは不妊治療と仕事の両立支援に取り組む企業に対する「くるみんプラス」等の認定が新設されています。企業においては、現場のニーズを踏まえて前向きに検討すべきテーマと言えます。
関連:厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために」
(不妊治療休暇)
第29条 労働者が不妊治療のための休暇を請求したときは、年○日を限度に休暇を与える。
2 労働者が不妊治療のための休業を請求したときは、休業開始日の属する事業年度(毎年4月1日から翌年3月31日まで)を含む引き続く5事業年度の期間において、最長1年間を限度に休業することができる。
不妊治療は、男女の別を問わず必要となる可能性があることから、休暇制度を設ける際に性別による取得制限を設けることは不適切です。また、不妊治療は雇用形態を問わずすべての労働者にとって関係のある事柄であるため、同一労働同一賃金の観点から、休暇取得を「正社員のみ」とする等、不合理な待遇差と認識されるような取り扱いは避けましょう。
以上、参考:厚生労働省「モデル就業規則(令和4年11月)」
就業規則は、一度作成したらそのままで良いというものではありません。法改正や会社の状況に対応できるよう、都度改定し、適切な内容にしておくことが肝心です。御社の就業規則、最終改定は何年前でしょうか?近年、労働・社会保険関係では多数法改正が行われていますので、折を見て内容を確認されることをお勧めします。