2019年以降の働き方改革関連法施行を皮切りに、2023年度に入ってからは「三位一体の労働市場改革の方針」「こども未来戦略方針」が示される等、私たちの働き方は今まさに転換期を迎えています。これからの時代に求められる新しい働き方を実現するために不可欠なのは、これを支える「労働基準法制の整備」です。このたび厚生労働省が示した「新しい時代の働き方に関する研究会」の第12回資料より、「これからの労働基準法制に求められる視点」を確認しましょう。
目次
新しい時代に求められる「多様な働き方」を考える
刻々と変化する経済社会において、企業を取り巻く環境もまた、少しずつではありますが着実に変わってきています。労働市場に目を向ければ、人口減少に伴う労働市場の構造変化に起因する深刻な人手不足、産業間の人材分布の変化等は、企業の人材戦略上大きな影響を及ぼす要素となりつつあります。
「変化」は企業側のみならず、労働者側の意識にも生じています。人口減少や高齢化に伴い職業人生が長期化する中で、人々はあらゆるライフイベントにも柔軟に対応できる持続可能な働き方を求めるようになっています。仕事に安定性を求める労働者が未だ多く存在する一方で、より自由度の高い就労や、自己のキャリア形成の実現を望むケースが増加傾向にあります。
このような労使双方におけるあらゆる変化に対応する取り組みは、まさに今般示された「三位一体の労働市場改革の方針」「こども未来戦略方針」に沿うものであることから、新しい時代の企業・労働者を支える労働環境や仕組みの整備が不可欠と言えます。
新しい働き方を実現する、労働基準法制の重要視点
新しい働き方の構築には、労働基準法制の見直しが不可欠です。資料によると、これからの労働法制のあり方を考える上では、以下2つの理念が重要になるとされています。
- 画一的な制度を一律に当てはめるのではなく、働く人の求める働き方の多様な希望に応えることのできる制度を整備すること
- 働く価値観、ライフスタイル、働く上での制約が個別・多様化しているからこそ、全ての働く人が心身の健康を維持しながら幸せに働き続けることのできる社会を目指すということ
新しい時代に即した労働基準法制の方向性として、重要な視点を考えてみましょう。
「守る」と「支える」の視点
多様化する働き方を考える上で従来型の労働基準法制は時に障壁となり得ますが、一方で、これに示される労働憲章的な規定や基本原則、封建的な労働慣行を排除するための規定等の考え方は、新しい時代を生きる労働者にとっても変わらず基盤となり得ます。変化する環境下でも変わらない考え方を守りつつ、現在の労働基準法制について必要な見直しを講じていくことが求められます。
見直しを進める上では、労働者の多様な選択や、自発的な能力開発と成⾧を「支える」役割としての労働基準法制に実現に目を向けることが肝心です。労働者各人が、理想とするワーク・ライフスタイルや成⾧・キャリア形成を前向きに実現していけるよう、労働関連法令をより柔軟な形へと作り変えていくことが必要となります。
働く人の求める多様性尊重の視点
個別・多様化する個人の価値観への対応、そして労働者の希望が反映される仕組み作りに目を向けていく上では、以下3つの観点からの検討が有効となります。ここではそれぞれの観点と具体的な解説を、資料から抜粋してご紹介します。
働く人の健康確保
働く人の選択・希望の反映が可能な制度構築
新しい時代における働く人の守り方
以上、参考及び図の出典:厚生労働省「新しい時代の働き方に関する研究会 第12回資料」
2019年度より順次始まった働き方関連法施行から5年目を迎え、労働基準法制のあり方が改めて見直されるべき時を迎えています。戦後に確立された、いわゆる日本的雇用慣行がどう転換していくのか、今後の動向に注目が高まります。