エンプロイアビリティとは|資格とは異なる個人の価値を厚生労働省のチェックシートで確認

長く続いてきた年功序列制、終身雇用制という労働スタイルが崩れて久しい昨今、日本でも「エンプロイアビリティ」という単語が注目を集めています。エンプロイアビリティは労働者だけが考えるべきものではなく、雇用する側も重視すべき事柄です。エンプロイアビリティの意味や具体的な内容、厚生労働省が発表したチェックシート等について、詳しくチェックしていきましょう。

エンプロイアビリティとは

エンプロイアビリティとは、「雇用され得る能力」を意味します。雇用を意味する「employ」と、能力「ability」をかけ合せた単語です。一度入った会社に定年まで勤めるという労働スタイルは既に過去のものとなり、就業形態は多様化しています。このような経済状況の変化の中で、その変化にいち早く対応し迅速に異動や転職を可能にする能力。いわば労働市場における「個人の価値」、それがエンプロイアビリティなのです。単に雇用のタイミングにのみ登場する単語ではなく、「継続して雇用される能力」という意味合いも含む点に注意が必要です。

エンプロイアビリティの具体的内容 〜転職を可能にする能力≠資格〜

「資格を持っていると就職や転職に有利」とはよく聞くセリフです。確かに必要とされる技術や専門知識、資格はエンプロイアビリティの重要な要素ですが、それだけで成り立っている訳ではありません。業務への適性や仕事を探す能力、知識を身に付ける能力といった要素や、協調性やモチベーションなどの行動的要素もエンプロイアビリティの代表例なのです。

厚生労働省が発表した「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書」では、エンプロイアビリティの具体的な内容、労働者個人の基本的能力としては以下3点が挙げられています。

A 職務遂行に必要となる特定の知識・技能などの顕在的なもの
B 協調性、積極的等、職務遂行に当たり、各個人が保持している思考特性や行動特性に係るもの
C 動機、人柄、性格、信念、価値観等の潜在的な個人的属性に関するもの

出典:厚生労働省「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書概要

このうち、Cについては、個人的かつ潜在的なものでありこれを具体的・客観的に評価することは困難と考えられるため、エンプロイアビリティの評価基準として除外され、AとBを対象にエンプロイアビリティが評価されます。

したがって、エンプロイアビリティが高いかどうかは、Aに当たる単純に資格やスキルだけではなく、協調性、積極的等の個人が持つ思考特性や行動特性も踏まえて判断されるのです。

厚生労働省のチェックシートでエンプロイアビリティを確認

厚生労働省が発表した「平成29年度 労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業」において、エンプロイアビリティのチェックシートが公開されています。

■エンプロイアビリティチェックシート(簡易版)
■エンプロイアビリティチェックシート(総合版)

エンプロイアビリティを企業に及ぼす影響

エンプロイアビリティのメリット

エンプロイアビリティは個人が自分の力だけで高めていくものではありません。企業が獲得を支援することで、利益の増加や労働力の向上といったメリットを享受することができると言われています。その理由の一つが、エンプロイアビリティと相対する「エンプロイメンタビリティ」の向上です。労働者が自分の市場価値を高める手助けをしてくれる企業は、労働者から見て非常に魅力的です。つまり優秀な人材に「選ばれる」企業へと成長していくことができるのです。

把握しておくべきエンプロイアビリティのデメリット

一方で、エンプロイアビリティの向上はキャリア志向の強い労働者の社外流出に繋がると言われています。このデメリットを払拭するためには、労働者を「雇用してやる」という考えから脱却し、労働者から「選んでもらう」という意識へシフトし、労働者から見て魅力的な支援を打ち出していくことが有効だとされています。

エンプロイアビリティは企業にとっても重要な要素

エンプロイアビリティは個人が考えるべき事柄だと思われがちですが、企業も重要視すべきものです。今働いている労働者がエンプロイアビリティを高めていけば、それは企業へと還元されていきます。その結果労働制が向上したり、利益が増加したりといったメリットを得ることができるのです。ただし人材流出を防ぐため、より労働者にとって魅力的な企業へと意識改革を行う必要があります。

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