ここ2~3年、ダブルワークをしている方や、正社員として働きながら個人事業主として開業している方も増えてきました。ここで問題となるのが、パートやアルバイトの方の雇用保険の加入です。ダブルワークをしている場合、どちらの会社で雇用保険に加入するのかが問題となります。また、2022年1月1日から雇用保険法が改正施行されて、マルチジョブホルダー制度が始まりました。そこで、ダブルワークの雇用保険加入とマルチジョブホルダー制度について解説いたします。
目次
雇用保険加入の要件
雇用保険の加入要件は、下記のとおりです。
- 週20時間以上勤務
- 31日以上の雇用契約の見込み
この2つの要件を満たした場合に、雇用保険に加入できるようになります。また、雇用保険は、一人に一ずつ番号が振り分けられていますので、必ず1つの会社しか加入できません。会社が労働者のダブルワークを知らなくて、資格取得の届出をしても既に加入していれば受理されませんので安心です。
正社員がダブルワークした場合の雇用保険の加入
正社員の場合、一般的に週40時間働きますので、雇用保険のみならず健康保険、厚生年金保険、労災保険の全ての社会保険に加入します。そこで、副業としてコンビニで週1日8時間アルバイトをした場合は、労災保険には加入しますが、他の社会保険には加入する必要は在りません。ただし、週40時間正社員として別の会社で働いていますので、実際の問題としてコンビニは、8時間すべてについて時間外労働手当を支払う必要が出てきます。
パートやアルバイトがダブルワークをした場合の雇用保険の加入
ダブルワークで多いのが、2つの会社ともにパート等で働くケースです。正社員にはなかなかなれずに、それでは生活に困るということでパートを掛け持ちする場合です。いずれの会社も所定労働時間が20時間以上である場合は、原則として労働時間が長い会社ではなく、「労働者が生計を維持するために必要な主たる賃金を受けている会社」が雇用保険に加入することになります。ただし、労災保険は、両方の会社ともに加入します。
それでは、ダブルワークをした場合の雇用保険加入のケースについて見てみましょう。
- A社での所定労働時間・・・週24時間 給与約9万円
B社での所定労働時間・・・週20時間 給与約10万円
B社にて雇用保険に加入します。
共に雇用保険加入の義務はあります。が、労働時間は短いのですが、B社のほうが給与が高いのでB 社が雇用保険に加入します。 - A社での所定労働時間・・・週10時間
B社での所定労働時間・・・週20時間
B社にて雇用保険に加入します。
A社は、週10時間ですので、雇用保険加入義務はありません。したがって週20時間以上のB社にて雇用保険に加入します。 - A社での所定労働時間・・・週16時間
B社での所定労働時間・・・週16時間
雇用保険加入義務なし。
両社とも雇用保険加入要件の週20時間以上を満たしていませんので、雇用保険に加入できません。
最近は、1のケースが多くなっています。つまり時給の高いパートと普通の時給のパートの掛け持ちです。特に深夜は割増が払われて時給が高くなりますので、注意が必要です。
マルチジョブホルダー制度
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して以下の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
適用要件
- 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
- 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
出典:厚生労働省「マルチジョブホルダー制度について」
65歳以上の場合、労働時間の短いパートの仕事が多く、また失業する機会も多いのでせめて雇用保険だけには加入させようという社会保障の一環です。非常に良い制度ですが、現在は65歳以上に限られています。ただし、この制度の届け出は、会社ではなく、本人が行うことになりますので、会社としては指導が必要となるでしょう。
ダブルワークと就業規則
ダブルワークをしている場合、会社の就業規則に縛られます。正社員の場合は、副業を許可する会社が多くなったといっても、まだまだ大企業の一部です。パートの場合も会社によっては、情報漏洩等のこともあり、他の会社で働くことは禁止していませんが、事前の届け出を義務付けている会社は多いものです。パート就業規則できちんと明確にしておきましょう。
まとめ_ダブルワークは、今や多くの方の働き方
ダブルワークは、今や多くの方の働き方となっています。それに対して社会保障が追い付いていないというのが現状です。やっとマルチジョブホルダー制度ができましたが、65歳以上が対象とまだまだです。2022年10月から100人超の企業において、パートの社会保険加入要件が緩和されますので、雇用保険だけでなく、健康保険と厚生年金保険の加入も考えて雇用することが肝要です。