共働き世帯で、夫と妻それぞれが社会保険被保険者の場合、「子どもをどちらの扶養にするか」に悩まれることも珍しくない様です。実際には、あまり深く考えずに「とりあえず夫の方に」と決めるケースもあるようですが、2021年8月1日より、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定」に関わる基準が明確化されています。
さっそく内容を確認しましょう。
目次
増加の一途をたどる、「夫婦共働き世帯」
日本においては、ひと昔前までは、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方が当たり前でした。ところが1980年以降、共働き世帯は年々増加し、1997年以降は共働き世帯の割合はいわゆる専業主婦世帯を上回り、今日では共働き世帯の方が主流といえるまでに増加しています。
出典:男女共同参画局「男女共同参画白書(概要版) 平成30年版」
子供は、夫と妻のどちらの被扶養者になるの?
健康保険では、被保険者の傷病・出産・死亡時のみならず、被扶養者の傷病・出産・死亡についても保険給付が行われます。子であれば、親が加入する健康保険の被扶養者となるケースが大半ですが、そのためには保険者から被扶養者認定を受ける必要があります。
健康保険上、子が被扶養者と認定されるための要件は、以下の通りです。
⇒同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
⇒別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
※被扶養者(被保険者)子であれば同居要件は不要(ただし、内縁関係の配偶者の子は同居の必要あり)
ここで解説するのは、夫婦共働きで、ともに協会けんぽや健康保険組合等の被用者保険に加入している世帯における子の被扶養者認定基準です。
原則は「年収見込みの多い方」の扶養に
従来、子の被扶養者認定については「前年分の年間収入が多い方の被扶養者とする」とされていました。この点、2021年8月1日より「被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする」とされました。判断基準となる年収に関しては、前年の実績ではなく、将来に向けた年間収入見込みの比較となります。
夫と妻の年収差が1割以内なら届出により決定
ただし、夫婦の年収見込みの差が1割以内の場合には「届出により、主たる生計者の被扶養者とする」とされました。これまでは「夫婦双方の年間収入が同程度である場合、主として生計を維持する者の被扶養者とする」としていたところ、「同程度」の部分が「年収差1割以内」と明記された点に注目しましょう。
被扶養者が育休等を取得しても被扶養者の異動はなし
また、扶養者として主に生計を維持する者と認められた方が育児休業等を取得した場合、育児休業により収入が減ったとしても、ただちに被扶養者の異動はしないこととされました。
ただし、新たに誕生した子については改めて認定手続きを経るとのことなので、第一子と第二子とで扶養者が異なるケースが出てくる可能性がありそうです。
どちらかが国民健康保険の場合はどう判断する?
ちなみに、厚生労働省発出の通知では、「夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合の取扱い」について、以下の通り言及しています。
被用者保険の被保険者については年間収入を、国民健康保険の被保険者については直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較し、いずれか多い方を主として生計を維持する者とする。
夫婦の一方が国保加入というケースは決して少なくありませんので、実務ご担当者様であれば覚えておかれるとよいでしょう。
参考:厚生労働省「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」
企業で社会保険手続きをご担当されている方であれば、共働き世帯の子の被扶養者認定について相談を受けることもあるのではないでしょうか?今号で解説した基準に則り、適切な対応ができるようにしておきましょう。