過労死認定基準が見直しへ。労働時間以外に「業務負荷」の状況も加味される方向

脳出血や心筋梗塞等の脳・心臓疾患による過労死の労災認定に際しては、現状、時間外労働について「発症前1ヵ月間に100時間」「2~6ヵ月平均で月80時間」の過労死ラインが主要な判断基準となっています。ところが、今後は「労働時間以外の業務負荷」がより一層重視される方向で、過労死の労災認定基準が見直されることになります。

これを機に、改めて従業員の「適正な働き方」を考えてみませんか?

過労死の労災認定基準に新たに加わる「業務の負荷要因」とは?

2021年6月22日に開催された第12回「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」で示された過労死労災認定基準の見直し案から読み取ることのできるポイントは以下の通りです。

✓ 時間外労働について「発症前1ヵ月間に100時間」「2~6ヵ月平均で月80時間」のいわゆる現行の過労死ラインは維持される方向

✓ ただし、過労死ラインに達しなくてもこれに近い時間外労働があり、なおかつ労働時間以外の「業務の負荷要因」が認められた場合は、過労死ラインに達した場合と同等に労災認定される

✓ 「業務の負荷要因」としては、現状、以下が挙げられているが、今後は勤務形態等の項目に「休日のない連続勤務」「勤務間インターバルが短い勤務」が追加される

・ 勤務形態等(不規則勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、交代制勤務・深夜勤務)
・ 作業環境(温度環境、騒音、時差)
・ 精神的緊張(日常的に精神的緊張を伴う業務、発症に近接した時期における精神的緊張を伴う業務に関連する出来事)」

労働時間を「休息」の観点から捉える

「残業時間」のみならず、「休息」の観点から過重労働の実態が把握されることになります。特に睡眠については、このたび公開された過労死労災認定基準の見直し案で、「疲労の蓄積をもたらす要因として睡眠不足が深く関わっている」、さらに「1日5~6時間程度の睡眠が確保できない状態が継続していた場合には、そのような短時間睡眠となる長時間労働(業務)と発症との関連性が強いと評価できるものと判断する」旨が盛り込まれている点も特筆すべきと言えます。

脳・心臓疾患の業務起因性の判断要素「異常な出来事」「短期の過重業務」が明確化

もちろん、現行の過労死労災認定においても、過労死ライン(長期間の過重業務)の他、「異常な出来事」「短期の過重業務」の各要因を総合的に判断することとされています。ところが、実態としてはどうしても、過労死ラインとなる残業働時間数が特に重視される傾向にあります。

この点を解消すべく、今後は「異常な出来事」「短期の過重業務」についても、業務と発症との関連性が強いと評価できる場合の例示を認定基準上明らかにすることにより、明確化、具体化が図られることになる見込みです。

参考:厚生労働省「第12回「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会 資料1脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(案)

従業員の働き方、把握できていますか?

過労死の労災認定基準の見直しについては、現段階では検討中であり、正式な認定基準の改定はまだ先となりそうです。しかしながら、今後の労災認定では、時間外労働時間のみならず、従業員の勤務形態や就労環境がさらに重視される方針です。会社として、従業員各人の働き方を総合的に把握する必要があります。

また、いわゆる過労死ラインは、今回は現状維持となる可能性が高いものの、社会的にはさらなる引き下げが求められています。2021年5月にはWHOとILOが「週55時間以上の長時間労働で、心疾患や脳卒中のリスクが高まる」との研究結果を公表していること、過労死弁護団全国連絡会議が「過労死ラインを月65時間超に引き下げるべき」との意見書を検討会に提出していること等はすでに報道等で見聞きされているかと思います。

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